「 揺 れ る 心 」
「シータ、食事はちゃんと取れ。」
あれからカイトはあんなにも熱く恋を語った事に触れない。
そして、相変わらず私を甘やかさない。
私を役割のある人間として扱い、私はそんなカイトの対応が、やっぱり嬉しかった。
今までも、そしてきっと、これからもカイトは私にそうしてくれる。
考えてみれば、私はカイトのそんな所が好きなんだと思った。
そして、そっと助言や、助けもくれる。
けっして甘やかすのではなく、仲間として。
けれどそれを少し物足りなくも感じる自分。
カイトに恋人として扱われたらどんなにも幸せだろうか。
カイトに恋人として寄り添うことが出来たら、どんなにも幸せなんだろうか。
私は自分の心に負けそうになる。
兄様との時間が欲しい。
兄様と早く話をしたい。
そして心も体もたくさん触れ合い、兄様で心を一杯にしたい。
けれど、相変わらず兄様は皇女とその側近たちと殆どの時間を過ごしていた。
私はその中に自分の居場所が無い事を感じていて、そこには近寄らない。
勿論挨拶程度は交すけれど・・・・・・皇女の視線が私の存在を否定していた。
表面上は穏やかな挨拶。
きっと兄様は何も気が付いていない。
けれど明らかにその表情、その瞳から、皇女の嫉妬心を私に伝えていた。
今迄の私なら、兄様にそこまで近寄る女性に嫉妬していた。
けれど、心にもやもやは感じる物の、胸が締め付けられる様なそんな気持ちにはなっていなかった。
兄様への気持ちが自分の中で変わってしまっている事を思い知らされる。
皇女の相手が只単に私的な物ならば私も少しは自分の我が儘も言えるけれど、兄様が皇女やその側近たちと行動を共にしているのは、国、そしてその国民の為。
私は残り少ない皇女との旅を続けた。
そして私たちはアセマ王国に到着した。
アセマ王国はセイム王国よりも小さい国だった。
けれど人々からは活気も見られ、今まで見てきた国と比べ、とてもいい状態の方だと言えた。
勿論精霊の気配も有った。
旅に出て、一番強い感じ。
小さい国なのに、この感じ。
勿論桜の精霊に比べればとても小さいけれど、あの大国のセイム王国よりもはるかに強く感じた。
セイム王国の精霊がどれほど弱ってきていたのかを改めて感じた。
私はアセマ王国での挨拶も早々に、カイトと精霊を探しに行った。
そして精霊と話をした。
そして眠りに着いた。
目が覚めた時、私は兄様の胸に抱かれ、馬車に揺られていた。
アセマ王国での全ての話し合いは終わった時。兄様の反対を押して、カイトが出発を決定したらしい。
私は4日間眠りについていた。
その時間の長さに、兄様はとても心配していた。
目を覚ました私を嬉しそうに力強く抱きしめてくれた。
やっと兄様を取り戻すことが出来た。
私は兄様と皇女の最後の挨拶までの全てを見る事無くこの国を出発出来た事にホッとした。
4日間。
目が覚めなかった事に、心底ホッとしていていた。
「どうした、まだ体の調子が戻らないのか?」
再び馬車を捨て、直接馬に乗る旅が始まった。
けれど馬車を引いていた馬は2頭で、私は兄様と一緒に馬に乗っていた。
兄様の胸の温かさを懐かしいと感じながら、私は馬に揺られる。
今までの空白を埋めるように、私は兄様に寄り添った。
心配そうに語りかける兄様の言葉を私は心地よく感じながらもゆっくり首を振る。
そして兄様の胸に頬を寄せる。
そんな私のおでこに兄様は優しくキスをくれた。
結婚を約束した日まであと2週間足らず・・・・・・。




