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「 諦 め た い 」

「ファストと合流するまでは馬を飛ばし、小休憩のみで行く。

 ファスト達はそう遠くまでは進めないはずだから。」

 馬に乗り、カイトの言葉を聞き、私は頷かない訳にはいかなかった。

 確かに魔物の気配を感じたから。





 気付かれない様に魔物をやり過ごし、戦うのは気付かれた時だけ。

 魔物との戦いになったらすばやくカイトと魔物から離れる。

 けれど決して離れすぎてはいけない。

 一人で別の魔物に遭遇してしまってはいけないから。


 何度も何度も確認させられてからの出発だった。






 ・・・・・・何時間走ったのだろう。

 川の畔で休憩を取った。

 カイトは果物を差し出してくれたけれど、私は食べる事が出来なかった。

 体は疲れ、水を飲むだけで精一杯だった。

 そして10分強の休憩は終わり再び馬を走らせる。


 そして、また数時間走り、休憩。


 そして・・・・・・の繰り返し。


 その間魔物の姿を1度見たけれど、気付かれる事無くやり過ごせた。





「血の匂いを付けると、気付かれる確立が増えるから。」

 と言って、カイトはホッと胸を撫で下ろしていた。

 そして夜。私は小休憩だけで進むと聞いていたので今日眠る事は出来ないのだと覚悟していた。

 けれど、体中が軋み、はっきりと限界を感じていた。

 カイトの視線が私の様子を伺っているのも感じる。

 大丈夫。まだ、大丈夫だよ。

 私は心の中で何度も呟く。

 けれど体が限界を感じれば感じる程、時間の流れはゆっくりで、どんなに我慢をしても、思いの他時間は過ぎてはくれなかった。

 休憩で座っているだけ。それでも辛い。

 真っ暗な木の陰での休憩中、私はやっとの事で小さい果物を一つ食べると、頑張ろうという気持ちとは裏腹に意識を失ってしまっていた。





 少し強めの揺れを感じながら私は目を覚ました。

 目の前にはカイトの胸と腕。

 少しゆっくりめの歩調の馬に、カイトに抱かれた形で私は乗っていた。


「おはよう。」

 私の動きで目が覚めた事に気が付いた様で、カイトは私を見下ろす形で挨拶をした。

 私は自分の今の状況にびっくりして、あわてて体をカイトから離した。

「危ないっ!」

 思いの他腕に力が入り、私はカイトの腕から落ちそうになってしまった。

 とっさに私を抱き直したカイトによって私は落馬を免れた。

「急に危ないだろ。

 ・・・・・・馬は一頭捨ててきたから、暫く我慢してくれ。」

 カイトの少し切なげな声に、私は思わずカイトを仰ぎ見た。

 カイトは真っ直ぐ前を見て、私を見ていなかった。


 いつも私の目を見て話をしてくれるカイトの頑なにも感じる真っ直ぐ前を見た視線。

 それを見た私は、これ以上カイトの腕から逃げる事が出来なかった。


「ごめんなさい。」

 私がそう言うと、カイトは私を抱いた腕から少し力を抜いてくれた。

「いいよ。あと半日もしないうちに追い付けるはずなんだ。

 がんばろうな。」

 合わない視線がとても切なくって、私がカイトを好きだと言う事を思い知らされる。

 けれどこれで良いんだ。

 こんな状態でカイトと視線が合ったりしたら、私は自分を止められる自身が無い。

 もう直ぐ兄様と合流する。

 カイトを吹っ切りたい。

 私は瞼をしっかり開いてカイトと同じように真っ直ぐ前を見た。

 カイトの体温を体中に感じながら。


 兄様に早く会いたい。


 兄様で自分を一杯にしたい。


 兄様だけだった自分に早く戻りたい。

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