「 隠された気持ち 」
「おはよう。」
目が覚めるとすぐ目の前には兄様の顔があった。
昨日泣きながら眠ってしまったんだ。
私は思わず驚いて飛び起きた。
そんな私を見て、兄様はクスクスと優しい微笑をくれた。
「相変わらずかわいい寝顔だったよ。」
兄様の言葉に、私は耳まで真っ赤にしながらも辺りを見渡した。
既に窓から傾いた日が差し込んでいて、既に朝を迎えている事を教えてくれた。
「ごめんなさい。」
思わず誤ると、そんな私をゆっくりと体を起こした兄様がそっと抱きしめた。
「なんで誤るの?
俺は俺の意思でここに居るんだよ。」
そう言って頬にキスをくれた。
そして、まだ抱きしめたままの兄様の腕に更に力が入った。
「昨日の考えは今日にでも皇女とその側近に伝えるつもりだ。
そして直ぐに移動の準備を始めると共に、移動先も急いで決める。」
急に空気が変わった。
「精霊の事は少し考えたい事がある。
少し待っていて欲しい。」
私は頷いた。
それを見た兄様は今度は唇にキスをした。
優しい優しいキスを。
そして、キスの後兄様は私に顔を会わせずに部屋を出た。その様子が私の心を少し不安にさせていた。
それから数日で行き先は決まった。
この国から西へ4日程行った所にある国、アセマ王国。
この国も現状は大変良いとは言えないみたいだけれど、それでもセイム王国よりは良い状態らしい。
何より、この国の第一皇子はセイム王国の皇女に4年前の舞踏会で一目ぼれしてから何度も結婚の申し込みをしていたとの事で、二つ返事で応じてくれたそうだ。
残るのは精霊の事だけ。
私は精霊に何と話をしたらいいか毎日毎日考えていた。
兄様はその事について私の話を聞こうとはしなかった。
いつも直ぐに話をはぐらかしてしまう。
カイトもカイトで、もう少し考えさせてくれと言って私の話を聞いてくれなった。
国民が皆居なくなる。
国が終わる。
そんな話をどうやって精霊に伝えたらいいのだろうか。
皆がバタバタと旅支度を進めている事に精霊は気が付いているのだろうか。
私は精霊と話をする事を止められていた。
けれどどうしても精霊の様子が気になって精霊の気に気持ちを傾けていた。
けれど距離あるせいで私は精霊の放つ細かい気の流れまで感じる事が出来なかった。
少しでも近くに。
そう思ってもカイトがそれを許さなかった。
「無意識でも精霊と話をする事になって、そして精霊を落としてしまったら大変だから。」
カイトの言葉はもっともで、私は何とかその行為を我慢した。
旅の準備が進む中、私はその行為への我慢と話す内容についてずっと考え込んでいた。
だから気が付かなかった。
そんな私を見つめる二人の視線が私よりも辛そうだという事に・・・・・・
二人の様子がおかしい事に気が付いた。
それは出発する日を前日に控えた日。
どうしても精霊に話す内容が決まらなくって。
私は兄様とカイトに相談した。
直ぐに返される違う話題。
私はそれを更に跳ね返し、話を戻す。
それでも返される違う話題。
そして二人の辛そうな表情。
そして私はやっと気が付いた。
二人が私に精霊と話をさせたくないという事が。
それから私は考えた。
なぜ二人が私と精霊との話をさせたく無い理由を。
そして、それは直ぐに解かった。
精霊と話をすると私は意識を失う。
話をして、その結果、精霊が地に落ちてしまったら、意識の無い私はきっと押し寄せる魔物たちから逃げられないかもしれない。
兄たちの気持ちに直ぐに気が付いたのは、私がその事を既に想定していたから。
けれどそんな理由で精霊を見捨てるなんて出来ないと思い私はその考えを頭から消していた。
けれど二人がその考えに行き着いていたら、決して私と精霊との話を許す事は無いだろう。
けれど精霊をこのまま捨てて行く事は出来ない。
約束したんだもの。
“諦めないで、頑張りましょう”・・・・・って。




