「 セイム王国の現状 」
セイム王国に到着した。
うやうやしく迎えてくれたのは、学者のジェイク。
3日前に立ち寄ったあの家の持ち主。
私と兄様は前の町で買っておいた少しだけ高価な服に着替え、身分を告げてセイム王国の城へと訪れた。
城からは精霊の気配が微かにした。
城はとても大きく、クル王国に引けを取らない程だった。
けれど、城の直ぐ近くまで魔物が近づいていて、とても暗い雰囲気で、人々の顔にも疲れしか見て取れなかった。
私達は王の間に案内される道すがらジェイクにこの国の現状を聞いた。
この国の王と王妃が王の政治に反発していた臣下により暗殺された事を。
王は現れた魔物に対し、武力で制圧しようとし、多くの国民を失ってしまった。
けれど、王が兵を費やせば費やすほど魔物は増え、それに気が付いた臣下がそれを王に進言したが、受け入れられず、国は城の周りを残し、どんどん衰退して行った。
そして反乱が起こり、王が殺害され、その反乱者は全員処刑された。
残ったのは王の思想を引き継いだ臣下たちで、国は更に荒廃を続けていた。
15歳になる皇女が一人残っているが、生前の王が自分の国と釣り合いの取れる相手が見つからないといってまだ誰とも婚約すらしていない事。
「ようこそ、おいで下さいました。」
私と歳の違わない皇女が大きな王の椅子に小さな体を埋めるように座っていた。
綺麗な青い瞳は、薄く開かれた瞼から辛うじて除かせている程度しか見えず、白く透き通るような肌も、皇女の顔色の悪さを更に引き立てて見せていた。
・・・・・・疲れが全身から感じられる。
旅に出て、こんな人々に何度も会ってきた。
みんな本当に辛いんだ。
「力になりたい。」
小さく呟いた私の声に、カイトは力強く頷いた。
「・・・・・・ここだな。」
私とカイトは皇女と一度離れ、二人で精霊の場所を探しに来ていた。
城の中庭。
湧き水の湧き出す小さな泉。
大分弱まっている様子の精霊の気。
そこにカイトと二人でたどりついた。
兄様は皇女とジェイクと3人で話を続けている。
「どうしたらこの国は立ち直れるのかな。
既に国王を失い、国民の殆どを失ってる。」
私は精霊に眠りに付く様に話をするにも、どうしたら希望を見せられるか解からなかった。
かといって、このままでは精霊が消えるのは時間の問題。
「そうだな。
直接精霊に話を聞いてみるのも一つの手かも知れないな。
只、シータの体力が心配だけど。」
カイトの言葉に私は頷いた。
「私なら大丈夫。」
私がそう言うと、カイトは優しく微笑み渡しに手を差し伸べた。
その微笑に胸がドキッとした。
差し伸べられた手に自分の手をそっと重ねる。
今までは普通にしていたそれが私を物凄く緊張していた。
この差し伸べる手は、私を好きだと言った人の物。
カイトは私をそっと抱き寄せると、ゆっくりと腰を下ろした。
私は瞳を閉じる。
集中しなくちゃ。
心で何度もそう呟いた。
赤だ・・・・・・。
透き通る淡い赤。
その光が私を包んでいた。
「はじめまして、こんにちは。」
私の声に、少し間を置き、声が返ってきた。
「お前は誰だ?」
とても深い。
それがその声の印象。
私はその声の精霊にいつもの様に、自分達の事。状況の説明をした。
精霊は私の話を黙って聞くと、深いため息を付いた。
「そうか。
自分がこの状態を保てなくなりそうな、そんな感覚が有った。
そうなった時、私が魔物を呼び、この国を滅ぼしてしまうというなら、眠りに付く方がいいのだろう。
けれど、私には希望が見えない。
心配なのは国、そして皇女。
けれど国には殆ど国民が残されていない状態。
町を作るにも、未来を見るためにも国民が居ないなんて有り得ない。
そして皇女。
ただひたすら大切に守られてきた皇女。
自分では何一つ決められない、そんな皇女がこの国ただ一人の王族として生き残って行けるのか。」
やっぱり行き着く問題は同じ所。
けど、諦めて見捨てる訳には行かない。
「諦めないで、頑張りましょう。」
それは精霊に向かって言ってはいたけど、自分にも向けられていた言葉だった。




