「 不安定な心と、心と、心 」
夕食はカイトと二人だった。
魔法の話を聞いた後で、聞きたい事が次から次へと浮かんできたけれど、それを聞く事もダブーなはずで、返って何も話が出来なかった。
そんな俺の前でカイトも無言で食事をしていた。
魔法の事を俺に話してしまった事を気にしているのか。
けれど、俺が誰かにそれを話してしまうかもと心配されているなんて事はまず無いと確信している。
カイトからの信頼は得られている。それには自信が有った。
俺がカイトを信頼しているように。
旅の中、俺達は、同じ目的を持ち、お互いに信頼し協力し、進んでいる。
それが俺たちの絆を強くしていると確信している。
そんな俺は目の前のカイトの様子がおかしいと感じた。
もしかしてシータの事か・・・・・・?
けれど俺はカイトにシータの事を切り出せない。
自制しているカイトに、俺はそれ以上何も望む事は出来ない。
シータをそんな目で見ないでくれと思った事は何度もある。
シータに触れるな。
シータからそんなに信頼された視線で見つめられないでくれ。
・・・・・・けれど、そんな事は望めない。
好きな気持ちが人に言われた位で消える物では無い事を俺も知っているから。
そして、カイトが俺に気を使い必要以上にシータへ心も体も触れていない事も知っているから。
食事を終え、俺たちは順番に風呂へ入った。
カイトはベッドへ入り、俺は寝る前にシータの様子を見てこようとドアに手を掛けた。
その時、ずっと無言だったカイトが口を開いた。
「俺、シータへ気持ちを伝えた。
・・・・・・すまない。」
驚いてドアから手を離し振り返る俺をカイトは真っ直ぐ見つめ返す。
今迄様子がおかしかった理由がやっと解かった。
俺は言葉を失う。
カイトを責める事なんて出来ない。
カイトの想いに気が付いていて、それを無い物の様に過ごしてきた俺。
どうしようもない現状。
俺が答えに詰まっていると、カイトが再び口を開いた。
「・・・・・・お前から無理やり奪うつもりは無い。
けど、自分の気持ちを抑える事が出来ない・・・・・・。
俺なりにシータに接して行きたい。」
そう言って俺の返事を待つ様子を見せるカイト。
「解かった。
・・・・・・けど、シータは渡さないからな」
俺は何とかそう一言返すと部屋を出た。
カイトと女を取り合う関係になりたくなかった。
シータとの関係も大事だけれど、カイトとの関係もとても大事な物だから。
ローカの冷たい空気が少し心地よく感じた。
俺は一瞬自分が何故ローカに出てきたかを考える。
そしてシータの様子を見に外に出たことを思い出した。
シータの部屋のドアに手を掛ける。
けれど、シータの部屋のドアを開ける事に思わず戸惑う。
シータの心の揺れや動揺を感じたく無かった。
けれどそっとドアを開ける。
真っ暗い部屋の中、俺がドアを開けた気配でベッドが少し動いた事に俺は気が付かず、俺はシータがまだ眠っていると確信し、俺はホッとしてそっとドアを閉める。
そして屋上へ向かう。
俺とは違う感情をカイトへ抱いているシータ。
それが何なのか。
シータの心が俺に有ると自信が有ったのが嘘の様に、俺の心はざわついた。
きっとその答えはこの旅の中ではっきりするだろう。
俺は俺としてシータを愛し、守って行こう。
それ以外に出来る事は無いのだから。
そう心が決まるまでに俺の体は冷え切っていた。
二日目なのに、凄く元気な自分に驚いた。
昨日殆ど眠れなかったのに・・・・・・
貧血も、無い。
一晩でここまで回復するなんて凄い。
今まで旅に出てここまで元気になるなんて・・・・・・
何だか不思議な程の回復に、私は自分で驚きながら窓に向かってゆっくり歩いた。
窓のカーテンの隙間から見える光が今日の晴天を教えてくれていた。
カーテンを開けようとカーテンに手を掛け、そしてためらう。
窓の外にカイトがいたら・・・・・・
窓の外に兄様がいたら・・・・・・
一晩カイトの告白が私の頭の中でぐるぐる駆け巡っていた。
今までだって、他国の王子や貴族達に何度と無く告白された事は有った。
けれど、私は気恥ずかしい気持ちにはなったりはしたけれど、心がこんなに揺れた事は無かった。
揺れる・・・・・・。
けして兄様への想いが揺れた・・・・・・という事では無いと思う。
けど、私の心はゆらゆらと揺れていた。
一晩考えたって解からない心。
これから私はカイトにどう接していけばいいのだろう。
これから私はカイトの前で、兄様にどう接していけばいいのだろう。
カイトはどんな気持ちで告白してきたんだろう。
ねぇ、カイト。
私はどうしたらいいの?
私は何度も心の中でカイトにそう問いかけた。
心の中のカイトはずっと昨日見せた寂しげな瞳を私に向けているだけだった。




