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「 蜜 -秘密と自制-」

「少しシータと話がある。」

 俺はファストにそう言い残して、宿について直ぐに宿を抜け出して手に入れた茶葉を宿の女将に渡し、煮出してカップに用意してもらった。

 そのカップを手にシータの部屋の前に立つ。

 既に寝てればいい。

 寝ていなければ、この手に持ったこの睡眠薬を使わなくてはいけない。

 出来れば強引な手は使いたくない。


 2回叩いたドアの音に、シータの返事が聞こえた。


 軽く気落ちしながらも、俺は話が有ると嘘を付く。

 とにかくこれを飲ませて早く眠らせないといけない。

 夜になればこうやって、ファストを残しシータの部屋に一人で入る事などファストは許さないだろうから。

 シータの返事に俺が部屋に入る事へのためらいを感じたけれど、そんな事に構っては居られない俺はシータの部屋へ入った。

 部屋に入ってすぐの所に荷物は捨て置かれ、部屋の北隅に置かれたベッドの上に靴を履いたまま体を投げ出した状態でシータは横になっていた。

「起き上がれないのか?」


 俺はそんな状態のシータを見て、驚きと、納得と、同情を同時に感じた。

 

 可愛そうなシータ。


 とてもこんな旅が耐えられる様な体力は持っていない。

 俺はベッドまで歩み寄ると、ベッドサイドのテーブルに手に持っていたカップを置くと、ベッドへ腰を下ろし、シータを抱き起こした。

 早く飲ませて、早く眠ってもらう為。

 もう少しで楽になるからな。

 そう心で呟いてシータに視線を向けた。

 そのシータは俺の胸に抱かれ真っ赤な顔をしていた。


 どうしたんだ?


 そして、シータの早くなった鼓動が俺の胸に響いた。

 そして、俺の胸の中で、恥じらいを見せる。


 今まで何度もこの胸に抱いたシータ。

 その時シータは薄れ行く意識の中、俺の胸に安心して体を預けていた。

 そんなシータを可愛く、愛しく感じていた。


 けれど、今、俺の胸の中で、鼓動も早く頬を染めるこの少女を、更に可愛く愛しく感じた。

 俺の顔を見れずに、俯くシータ。

 けれど、嫌がっている風では決して無い。

 このまま強く胸に抱きたい。

 ・・・・・・けれど、そんな事は出来ない。


 シータにはファストが居るのだから。


 欲望と失望の中、俺はそれを振り切ってシータに語りかける。

「これ、リラックスできるんだって。」

 嘘と言えば嘘。

 けれど、本当と言えば、本当。

「飲んでごらん。」

 俺はそれをシータの口に当てる。

 ぷっくりと優しい膨らみを持つシータの唇に俺は軽く眩暈を感じながら、その液体をゆっくりゆっくり流しいれる。

 直ぐにシータの瞳はまどろみを見せる。

 即効性が有る・・・・・・と、薬屋が言っていたが、本当の様だ。


「さ、横に。」

 俺はそう言って彼女の靴を脱がせ、ベッドへ寝かせた。

 顔色が悪い。息も少し苦しげだ。

「ありが・・・・・・」

 そんな彼女がまどろみを見せ、直ぐに眠りに付いた。

 その過程がもの凄く色っぽく見えた。

 久しぶりに触れ合ったせいか・・・・・・

 とにかくやる事をやらないと。


 俺は自分の感情をギュッと抑えると、眠りに落ちた彼女の胸に右手をすべり込ませる。

 柔らかく温かい彼女の胸の“精霊の印”に手を当てると、その手に全神経を集中させる。

 そして呪文を唱える。

 ・・・・・・集中しきらない俺の手から、弱い光が生まれる。

 その光に誘われるように、俺の神経が更にその手に集中し、光は人間の頭位の大きさの光の玉となった。


 ・・・・・・癒しの魔法。


 ファストが現れる迄、毎夜こっそりとシータにばれない程度に、と施していた。

 そして、精霊に会った後は、意識の回復を願って全身全霊を込めて俺はシータに魔法を

掛けていた。

 正直シータの体力はとても少ない。

 頑張っているのは解かるけれど・・・・・・。





 魔法の存在。これは俺の国の王と王妃。そして、王位継承権第1位の人間とその伴侶のみの秘密。

 魔法は諸刃の剣だから。

 確かにとても役に立つが、その力の存在は、確実に人の心を荒らし、争いの元になる。

 これは誰にも知られてはならない秘密だった。


 基本、魔法は自国以外での使用は禁じられている。

 ましてや、毎日の様に軽々しく使うような代物ではない。

 けれど、疲れきり、食事も苦しそうに無理やり食べている・・・・・・そんな状況のシータを見て見ぬ振りは出来なかった。

 俺の力で、どうにか出来る範囲で、助けてやりたかった。

 シータは宿にさえ泊まれば、体力が回復する。そう信じてくれていた。

 そんな素直で単純で純粋なシータが愛しい。

 頑張れ、シータ。






 徐々にシータの顔色が少し良くなって来る。


 寝息も苦しげじゃなくなってきている。



 俺はその状況に満足し、胸の“精霊の印”から手を離し、彼女の胸元から手をゆっくりと引き抜く。

 ずっと触れていたい。

 その気持ちに早く区切りを付ける為。

 そして俺は部屋を出る。


 ここに居ると、甘い甘い蜜に手を出さずに居られなくなりそうだった。

皇女のシータが旅を続けていられた秘密でした。

ファストが来たせいで、回復魔法をかけ辛くなっていたんです。

場所が場所だけに、見つかるわけにはいきません!

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