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「棺の精霊-出会い-」

 町は比較的華やいでいた。

 比較的・・・・・・とつけるのは、あくまで、他の町に比べて、という事。

 決してクルの城下町とは違う。

 人々は少し疲れの影が見える。

 けれどそれでも笑顔を見せ、店で品物を買ったり売ったり、道端で話をしていたり。


「何だか皆無理してるみたい。

 疲れが見える。」

 見ていると思わず“疲れたなら少し休んだら?”といいたくなる様な感じだ。

「それでも、笑顔を見せてる。

 きっと頑張りやが多い町なんだよ。」


 カイトはそう言うと、キョロキョロ周りを見渡し、ファスト兄様を見つけた。

「ここに。」

 視線を宿屋に向けて、そう言ったファスト兄様に、カイトは頷いて見せた。

「休む前に精霊を確認しに行こう。」

 かなり近い感じがするその“気”は町の中心にある墓地のその更に中心でただ一つ別格で存在している小さい神殿の様な建物の中の棺の中から感じられた。


 棺の周りには貢物が捧げられていた。


「みんな精霊の存在を知っているのかな。」

 こんな精霊初めてだった。

 私の大好きな桜の木の精霊だって、私がその“気”を感じられていたせいで精霊がいるって皆が解かったけれど、それでも特別こんな風に崇め立てては居なかった。

 皆が自然に桜の木を好きで、自然に足が向いていた。それだけ。

 湖の精霊だって、町の人達はその存在に気が付いていなかった。

「解からないな。とにかく調べよう。

 シータ、“気”に深入りしないようにな。

 直ぐに精霊の所へ精神が飛んでしまうかも知れない。

 体力を回復しないと危険かも知れないから。」

 言われて、私はフーッと何時の間にか意識が消えそうになっていた事に気が付いた。

「うん。」

 この精霊なら今直ぐでなくても大丈夫だろう。

「一度宿へ戻ろう。」

 私の様子に気が付いたのか、カイトはスクッと立ち上がると私に視線を投げた。

「シータ。」

 兄様の差し出された手に私は引かれて宿へと戻った。








 部屋に入ると、私は荷物を入り口にドサッと置くと、そのままベッドへ倒れこんだ。

 兄様に荷物を解いたらお昼を食べようと誘われたけれど、私はそれを断った。

 夕食はちゃんと食べるからって付け加えて。

 とにかく休みたかった。

 カイトに怒られるかなって思ってカイトの方を見たけど、カイトは仕方ないな、と言うように頷いてくれた。

 靴を脱いで、しっかりベッドに横になりたかったけれど、私はもうこれ以上1ミリも動けなかった。

 早く眠りたくって瞳を閉じる。


 疲れて、疲れて、疲れていた。


 けれど何故か気持ちがざわついて眠れなかった。


 あの棺の精霊はどんな精霊なんだろう。




 トントン


 扉がノックされ、私が返事をする。

「はい。」

 返事と同時に体を起こそうとしたけれど、体が動かない。

「俺・・・・・・カイト。

 少し話があるんだけど。」

「・・・・・・うん。」

 私は起き上がらない自分の体を持て余しながら返事をした。

 入ってきていいのか、いけないのか。

 自分でも答えが出なかった私は、自分でも分かる位中途半端な返事を返した。

「はいるぞ。」

 そんな私にそう声を掛けて、カイトは部屋に入ってきた。


「・・・・・・起き上がれないのか?」


 ベッドで倒れこんだままの私にカイトはそう言うと、真っ直ぐベッドまで歩み寄り、ベッドサイドのテーブルにカップを置くと、ベッドの端に腰を下ろし、私をゆっくり抱き起こした。

 体は疲れていたけれど、頭はしっかり働いていた私は、そんなカイトの胸にとてもドキドキしてしまった。

 何度かこんな状況は有ったじゃない。

 カイトに聞こえそうな心臓の鼓動を落ち着かせる為に、私は自分の胸にそう語り掛けた。

 けど、それは意識が朦朧としている時だった。

 心がそれに返事をする。


 顔が熱くなる。


 きっと私今、顔が赤い・・・・・・


 すぐ目の前の日に焼けたカイトの精悍な顔。

 切れ長で、意思の強さを感じさせる強い眼差し。

 そして、温かく、逞しい鍛えられた胸。

 どうしても意識せずに居られない。

 安心して寄り添える兄様のそれとは、同じようで違うその胸の中で、私はドキドキしている、そんな自分が恥ずかしくって、思わず俯いた。

「これ、リラックスできるんだって。」

 そんな私に柔らかく湯気の立つカップを差し出す。

「飲んでごらん。」

 そう言うと、カイトはそれを私の口元へそっと付け、ゆっくりと飲ませてくれた。

 少しヌルめのその飲み物は、私の心へスーッと浸透していく様に感じた。

「さ、横に。」

 ゆっくりと飲み干したカップを机に戻すと、私の足から靴を脱がせ、ベッドの中心に横にしてくれた。

「ありがとう。」

 いつの間にかうっすらと意識が薄れるのを感じる中、私はお礼を言った。

 そんな私に、カイトは優しく微笑みをくれた。

「起きたら一緒に夕食を取ろう。」

 その言葉に、私は“うん”と返事をした。

 ・・・・・・声に出せたか出せていなかったのか解からなかったけれど・・・・・・

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