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「 3 人 の 旅 」

 3人になったからと言って、道のりが短くなる訳ではない。

 十分に休んで体調も万全だった私の体力も、1日馬に揺られれば、声も出せない程の疲れを見せた。

 そんな私を見て、ファスト兄様はとても見ていられないといった様子で、何度も私を見つめ、“大丈夫か”とか、“俺の 馬に一緒に乗るか”とか、“馬車を調達しよう”とか言ってカイトを苛付かせた。


「身分は隠せ、襲われる。それは疲れるより危険なんだぞ。

 そして甘やかすな。旅はまだ始まったばかりだ。これ位で根を上げる様なら、一緒に旅は出来ない。

 それに、今までだってシータは弱音を吐いたりしていない。

 不用意な甘い言葉でシータの心を折る様な真似はするな。」


 いくら声を掛けても甘えない私と、苛付くカイトにファスト兄様が折れて、私に掛ける言葉が少なくなったのは、湖の町を出て3日も過ぎた頃だった。







 今迄どんなに疲れていても一晩寝ればかなり体力が回復していた。

 けれど、兄様と3人の旅になってから私の疲れは溜まる一方だった。

 きっと野宿が続いているせいなんだろう。


 町が、無いのだ。


 精霊の気も感じられない。

 食べ物も手持ちも有るけど、なるべく現地調達で、けれど、なかなか動物も見つけられずに、木の実や食用の葉のみの日も少なくない。

「精霊が消えたせいだな。」

 と、カイトは話していた。

 幸い私達はまだ魔物に遭遇していない。


 けれど兄さまやカイトはつねに魔物への注意を怠っていない様だった。

 夜も交代で休みを取り、2人は私の半分以下の睡眠しか取っていない。

 なのに、私の体は、二人よりもぼろぼろで、毎日限界を超えていた。

 せめてもの救いは兄様が私に甘い言葉を掛けて来なくなった事だ。

 今ならどんな言葉にも甘えてしまいそうだった。







 湖の町を出て、1週間以上過ぎた日、私とカイトは精霊の気を感じた。

 久しぶりの“気”。

 私はカイトと視線を合わせ、お互いの考えを確認する。


『よどみが無い“気”だね』


 その気をたどって進むに連れて道も綺麗に舗装されて来ていて、今まで何度か見かけた町よりも大きい町に向かっていることを感じさせた。

「町が見えてきた。」

 私たちの中で一番目の良いカイトが遠くを見ながらそう言った。

 時間はまだお昼前。

 けれど既に限界を迎えている私は、本当に本当にホッとした。


 早く休みたかった。


「先に行って宿を探してくる。」

 私の様子を見たファスト兄様がそう言うと、馬のお腹に拍車を当て、一足先に町へと続く道を走った。

「久しぶりに大きい町だな。休む前に一緒に精霊の場所を確認したい。

 ・・・・・・大丈夫か?」

 そう言われて、私は頷いた。

 勿論。その為の旅だもの。

「場所だけ確認したら今日はもう休んでいい。

 その間俺は情報を集めるから。」


「ありがとう。」

 素直にお礼を言う。


 カイトは、いつも私が休んだ後も情報集めをしてくれている。

 兄様と合流してからは、たまに兄様も行っている様だけれど、基本それはカイトの仕事。

 だんだん治安が悪くなって来ているから、私を一人にしない為に、兄様は私のそばにいてくれている。

 宿に泊まったときでも、すぐ隣の部屋で、カイトが持ってきた資料を調べながら・・・・・・それは変わらない。

 そして二人で話し合い、そして方針を決める。

 けっしてカイト一人で、とか、兄様の一存で、とか、そんな事は無い。

 どうして二人で決めるの?と以前聞いたら、二人とも同じ事を言っていた。


『あいつの知識や考えが必要だからだ』


 お互いの事を信頼しているのが解かる答えで、ただ前に進むだけで精一杯の私は、そんな二人の関係をとても羨ましく思っている。

 一度目的地や方針を決めたら、ただ黙々と進み、無駄話なんか全くしていないけれど、なんだかそれすらも、お互いの信頼度を現している様に見える。

「後少し。

 ここの精霊はどんな精霊だろうね。

 こんなに力強い“気”だから、きっと逞しい精霊かもしれないな。

 宿の食事もおいしいといいな。」

 久しぶりに聞くカイトの雑談。

 きっとカイトも嬉しいんだ。

 精霊の“気”。だんだんハッキリと感じる。

 なんだか無理をしている様にも感じる力強い“気”。

 私は何時の間にか、疲れの中にもわくわくする気持ちを感じていた。

出来る男はかっこいい。

本当にそう思います。

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