アヤミとアタシ
昨日のクッキーは家族に(特に甘い物好きなおかーさんに)好評だった。
恥ずかしいエプロンのことは、ともかく置いといて、
アタシはちょっと部活が楽しくなりつつある。
――だって、料理はほんとに駄目だったアタシなのに、
ちゃんとしたおいしい食べ物が作れるんだもん。
やっぱり最初が肝心なのかもしれないって、アタシは思った。
「おはようチアキ!
昨日のクッキーおいしかったねえ。
今日は何作るのか聞いてる?
うまく出来るといいな~」
アタシは教室に入るなり、チアキの姿を見つけて声を掛けた。
でも。
チアキはちょっと困ったような顔をアタシに向けているだけ……。
な、何?
どうしたの?
そう聞こうと思った瞬間になぞは解けた。
チアキの向かいには、あの、倉沢綾実が居たからだ。
綾実はアタシを見るなり、怖い顔で近寄ってきた。
能面みたいな、なんともいえない彼女の表情!
ま、マジで怖いんですけど!
「あなた、先生に興味ないって言ってた割りに、
なんで料理部に入ってんのよ!! 」
あまりの剣幕にアタシはへなへなと座り込んでしまった。
たぶんこれが俗に言う『腰が抜けた』ということなのかもしれない。
……って、そんなことはどうでもいいや。
とにかく綾実の気迫にアタシはたじたじだ。
アタシは「ちがうって! 」って何度か言いかけたけど、
綾実は聞く耳を持ってくれなくて、アタシの悲痛な叫びは彼女には届かなかった。
結局そのときは、学校のチャイムでなんとかその場を離れることが出来た。
休み時間にチアキがアタシの弁明? みたいなのをしてくれたお陰で、
綾実の怒りをなんとか静めることに成功。
でも、アタシはうっかり綾実に
「そんなに先生のこと好きなら、料理部に入ればいいじゃん? 」
って言ってしまった。




