エプロンとアタシの気持ち
その日の帰りに、アタシはチアキとショッピングセンターに行った。
もちろんマイエプロンを買いに。
で、アタシは以外にふつーのエプロンって売ってないってことに、今更だけど気が付いた。
「ねえ。なんでこんな柄ばっかりなのかな? 」
アタシはエプロンを物色しながらチアキに聞く。
「エプロンなんておばさんが使うものだからじゃない?
ほら、これなんてステキ!
なんか強そうだし、咲これにしなよ~」
適当に見ていたチアキは、にやりと笑うと度派手なピンクの豹が描かれているエプロンをアタシの目の前に出した。
「……こ、これはちょっと……」
大阪のおばさんもビックリの、なんともいえない奇抜なデザイン!
大体、豹がでっかく描かれているだけでびっくりなのに、
それがショッキングピンクの色なのだ。
誰が着こなせるんだろう? こんな凄いの。
「ねえ、チアキー。
エプロンってあと何処で売ってるんだっけ? 」
今までエプロンなんてものに興味も無ければ関心も無かったので、
アタシはショッピングセンターの衣料コーナー以外に売り場を知らなかった。
「え?
雑貨屋とかにあるんじゃない? 」
「雑貨屋? 」
「うん。
以外に種類豊富だし、ここにあるのより普通のデザインだよ」
チアキはそう言いながら、今度は蛍光緑のパンダのデザインのエプロンを手に取った。
「そ、そんなところがあるんだったら、先に教えてよ~!
危なく妥協してアニマル的なおばさんエプロンを買うところだったよ~」
雑貨屋に行くと、確かにふつーのエプロンが置いてあった。
種類も結構あったので、アタシはとりあえず2枚買うことにした。
ひとつはネイビーブルーのエプロンで、もうひとつはベージュのエプロン。
もちろん、ピンクでもないし、フリフリも付いてないシンプルなヤツ。
……センセーはあの少女趣味なエプロンを見ても何も言わなかったけど、
何も言われないとそれはそれで恥ずかしい。
だって多分、アタシがフリフリエプロンが大好きだと思われてるんだろうし。
家に帰るなり、アタシはケータイのメールをチェックする。
メールボックスにアクセスしている間のちょっとした時間でさえ、アタシにはじれったくて仕方ない。
――新着メールは有りません――
無機質なケータイの画面を見て、アタシは短くため息をついた。
そしてそのまま、ベッドに仰向けに倒れこむ。
「やっぱり無し――か――」
アタシはケータイをきゅっと胸に抱いた。
――明日になれば、アツムの声が聞けると分かっているんだけど……
そうなんだけど、やっぱり寂しい。
「声が聞きたいよう……」
まるで壊れ物に触るかのように、アタシの胸から離した携帯のディスプレイ部分をそっと押した。
この前アツムから来たメールを表示して、読み返す。
『今週は現場の下見です。
不便なところなので、電波は届かないと思われます。
木曜日には帰れると思います』
いつもながらの、短くて端的な文。
「――もっと普通のコトバが欲しいのにな」
アタシはここには居ない、アツムに向かって小さく呟いた。
付き合う前よりも、付き合ってからのほうが寂しいのは、アタシがアツムのことを
前より好きになってるからなのかな……。
でも、それでも……やっぱりさみしい……。
毎日って訳じゃないけど。
ちょっとだけでもいいから、アツムの声を聞きたい……。
触れることが無理なら、声だけでも聞きたいと思うのは欲張りなのかな?
会えないと分かってるけど、
お仕事は大事だって分かってるけど、
アツムの近くに居たい――。




