立てば芍薬、座れば牡丹。歩く姿は……?
「ただいまぁ~」
川原さんと別れた後、アタシは営業スマイルを忘れずにチラシを配り終えた。
う~、流石に作り笑顔ってのはほっぺたの筋肉が痛い。
右手で頬をさすりながらアタシはくたくたのへとへとのよれよれになって喫茶店に戻ってきたのだけど・・・。
「お疲れ! あと人手が足りないからコレ飲んだらすぐウエイトレスよろしく! 」
一仕事終えたアタシに冷え冷えの麦茶を手渡すとチアキはオーダー票をエプロンに入れて、返事も聞かずにさっさと注文を聞きに行ってしまった。
え?
チラシ配り終わったら休憩って聞いてたのにぃ~。
アタシは麦茶を飲み干すとカーテン越しに喫茶店の中をそっと覗いてみる。
う……。
こんなに混んでるの??!
裏方からは想像もつかないくらいの満員御礼。
嬉しい……筈……なんだけど、さ。
うちの部は人数いないから仕方ないんだけどさ、でも、でも。
せめてあと十分くらいは休憩したかったんですけどーっ!
「こら咲。早くやんなさい」
ぺしっと頭を叩かれてびっくりしながら振り向くとそこにはチアキの姿があった。
ってかチアキ。
さっきまで店内に行ってたんじゃなかったの?
瞬間移動? それとも高速移動?!
「ぼんやりしないの。そこに居ると邪魔だっつーの」
チアキはそう言うとケーキセットAをお盆に乗せて店内に戻っていった。
「ごめんね咲ちゃん。休憩して良いって言ってたのに……」
チアキと入れ違いに入ってきた部長が少し困った顔でアタシを上目遣いに見る。
上目遣いはアタシの特権なんですけど! とか言いたいけど。
でも、無理。
だって部長ってば本当に乙女なんだもん。
アタシみたいなエセ乙女じゃなくて可憐でかわいくて守ってあげたくなるような……。
お姫様とかお嬢様みたいな。そんな感じ。
「大丈夫です! みんな頑張ってるのにアタシだけ休憩なんて出来ませんってっ! 」
……ウソです。本当はしっかり休みたいです。
そう思いつつもアタシの口からは思っても無いような言葉が飛び出る。
そんなアタシのウソを知ってか知らずか。
部長はピンク色のかわいいお花のような笑顔をアタシに向けて「ありがとう!」と手を握りながら言った。
――もし、もしアタシが男の子だったら、きっと部長にホネヌキにされてしまうに違いない。




