スーツの王子様
「名前覚えてくれてたんだ! うれしいなぁ」
にこにこと笑う川原さん。
少女漫画なんかだと、きっとピンクの背景に真っ赤なバラなんかが飛んでるんだろうな、とうっかり思ってしまうくらいの王子様ぶりはスーツを着ていても相変わらずだ。
「川原さんこそ。
あ、この二人はアタシの友達のチアキと綾実です」
王子様オーラにやられている二人を紹介すると、川原さんはにこりと笑って「よろしく!」と挨拶をした。
きらきらの笑顔にチアキと綾実は顔を真っ赤にしてぎこちない笑顔を見せた。
うっかりすると頭から湯気が出そうな感じに思わずアタシは噴出しそうになるのをこらえる。
「今日は仕事なんですか? 」
「ん? そうだよ。
社長が茶菓子買って来いって言うから。
今その帰りなんだー」
そう言うと彼は手に持っている紙袋をちらりと見る。
紙袋には洋菓子店の名前がかわいく印刷されていた。
「あ、そこの店有名なんですよね?
この前テレビの特集で見ましたよ!
チーズタルトがすごく人気で、すぐ売り切れちゃうとか」
「そうらしいねぇ。
――あ、じゃあコレあげるよ」
川原さんはそう言うとあたし達に可愛らしくラッピングされたチーズタルトを手渡した。
「え? いいんですか?! 」
「いいのいいの。
その他も色々買ってあるから。
じゃあ俺そろそろ戻らないといけないから。
またねー」
川原さんはそう言うと爽やかに去って行った。




