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カンチガイの夜


「咲、大丈夫? 」


 おかーさんの声がした。


 うっすらと目を開けると、おかーさんの心配そうな顔。

 わざわざ来てくれたんだ……。


「大丈夫。……ちょっとだるかっただけだし。

点滴したらかなり良くなったし」

「そう――? あまり無理はしないでね」


 おかーさんになんだか心配かけちゃったな――。


 そう思っているとおかーさんはセンセーにお礼を言っている。


 あ、そうだ。

 アタシもお礼言わないとだった。


 センセーに色々迷惑かけてたのに、御礼の言葉一つも言ってなかったアタシ。

 具合悪かったとはいえ、それはないよね。


「あのっ。センセー。

色々迷惑かけてしまって、ほんとすみませんでした」


 アタシがそう言うと、センセーは「井上は俺の生徒なんだから、そんなこと気にしなくて良いんだぞ? 」と言ってくれた。

 爽やかな笑顔のオマケつきで。


 アタシはなんだかどきどきしちゃって、思わず目を逸らした。


 逸らした目線の先には――ちょうどおかーさんがいる……ってか、

ち、違うからね? おかーさん!

 センセーが好きとか、そんなんじゃなくて――。


 アタシの顔がよっぽど言い訳じみていたのかなんなのか。

おかーさんはものすっごく含みのある笑顔を見せると、センセーに分からないように口パクで

『大丈夫。秘密にするから』だって……。


 な、何を秘密にするのよっ?!

 ちょっと! ほんとに違うんだってバ!!



 点滴も終わって、家に帰るときわざわざセンセーはアタシのうちまで送ってくれた。

 アタシが途中で倒れたりしたらまずいだろうと付いてきてくれた訳なんだけど……

おかーさん……めちゃ勘違いしちゃって、やたらとにやにやしちゃってるし。


 ほんと違うから。

 アタシが好きなのはアツムなんだから~っ!

 なんかもう、勘弁してください……!



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