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アタシとアツムとお仕事と

「咲? 」


 不意に名前を呼ばれて、アタシは顔を上げる。


 そこにはアタシのカレシ――アツムの心配そうな顔があった。


「え? あ、ごめん。

なんかぼーっとしてた……」


 アタシはそう言うと、カバンからドリルを出してアツムに渡す。


「アタシ、結構頑張ったんだよ? 」


 アツムはドリルをぺらぺらとめくって「よく頑張ったな」とアタシの頭を撫でた。


 この瞬間が、アタシはかなり好きで――。

 アツムの笑顔も大好きで――。


 アタシはこの時の為に勉強を頑張っていると言っても過言じゃないのだ。



 撫でていた手がアタシのおでこに触れる。


「熱は――ないみたいだな? 」


 熱?


 もし顔が赤いなら、それはアツムにどきどきしてるからだよ?


 そう言おうと思ったけど、さすがにそれはちょっと恥ずかしいな。

 そんなことを考えていると、アツムはちょっと心配そうな顔をしてこう言った。


「咲の顔色悪いから、今日はもう帰ろう」


「え?! 」


 アタシは思わず素っ頓狂な声を上げた。


「な、なんで?

今あったばっかりなのに?! 」


 反論してみたものの、アツムには敵わなかった。



 次のデートの約束は取り付けたものの、アタシは半ば強引に家に帰るように言われた。


「心配だから家まで送るよ 」


 アツムはそう言ったけど、途中で仕事の電話が掛かってきて、会社に戻らなければいけなくなった。


「アタシ、別に具合悪くないから。

大丈夫だから、お仕事行って来て?

社会人はお仕事頑張らないと! でしょ? 」


 アタシを家まで送り届けてから行っても間に合うとアツムは言ってたけど、

アタシは丁寧にお断りをした。


 アタシのせいでアツムに迷惑掛けたくないし。


「家に着いたら、メールしろよ?

それと、暖かくして早く寝るように! 」


 アツムはアタシの頭をぽんと撫でて「ありがとな」って呟いた。



 小さくなっていくアツムの後姿を見送って、アタシは家に帰ることにした。



 ホームに着くと、なんだか足が重い。

 今日は特に運動したわけでもないのに、足がだるくて仕方がない。


 アタシはホームにあるベンチに腰を下ろした。


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