オムライスとケチャップ
「まあ、遠慮せずに食え」
アタシの目の前にふわふわのオムライスが置かれる。
ケチャップの掛かったそれは、ふわりと白い湯気を立てて、出来たてだよ! と自ら言っているようだ。
「うわ~! いい匂い……」
アタシは思わず目を瞑ってオムライスの優しい匂いをかいだ。
さっきおなかがなった後、先生は「そういや、もう昼だったな」と言ってちらりと時計をみた。
そしておもむろに立ち上がると「とりあえず、腹が減っては戦は出来ぬって言うし、飯にするか。井上」
と言いながら台所へと消えていった。
で、現在に至ってるわけで……。
アタシは今センセーと向かい合って、センセーの手料理を食べる事になっているのだ。
「いただきます」
アタシはちらりと綾実のことを思ったけど、この状況で食べないのは失礼に当たるわけで……、
綾実に悪いなと思いながら一口、スプーンですくってぱくりと食べた。
「おいしいっ!!」
ちょっと半熟の卵が口の中に広がる。
中のケチャップライスが卵との絶妙なコンビネーションをかもし出し、
アタシはおもわず顔をほころばせる。
「お? そんなにうまいか?
沢山有るから、いっぱい食えよ」
センセーは目を細めてにこやかにアタシのことを見ていた。
「ご馳走様でした!
もー、おなかいっぱいっ!! 」
さっきまでの悲しい気持ちはもうどこかに吹っ飛んでしまった。
……おいしい食べ物を食べて満足しちゃうなんて、
あたしってかなり単純なのかもしれない……。
食後、センセーの淹れてくれた紅茶を飲んでいると、センセーが少しまじめな顔になって言った。
「なあ、井上。
結局なんでここのマンションのエントランスに居たんだ? 」
「あ、それは――」
アタシは『カレシを待ってたんです』と言いそうになったけど、はっとして口をつぐんだ。
仮にもセンセーにカレシの部屋に行くって言っていいのかな???
「――知り合いの人に勉強を教えてもらう約束があったんです」
……ウソは言ってないと思う。
――多分。
センセーはちょっと怪訝な顔をしたけど、
「あぁ、参考書も持ってたようだしな」と言って紅茶を飲んだ。




