言葉とアタシ
「出来れば、よかったんだけどね……」
綾実は少し伏せ目がちになる。
チアキは小声で綾実がスポーツ推薦で入学したんだと教えてくれた。
あ……。
アタシ――なんてコト言っちゃったんだろう……。
いつも思ったことをすぐに言ってしまう。
考えて喋ればいいのにって、そう思うんだけど、
アタシはいつも、そう。
「ご、ごめん……」
言ってしまった言葉は、もう消すことは出来ない。
ありきたりなコトバだけど、アタシは素直に綾実に謝った。
そんなコトバしか出てこないアタシは、やっぱり馬鹿だ。
なんだか恥ずかしくなって、足元に視線を落とす。
「別にいいよ」
綾実の優しい声に、アタシは思わず顔を上げる。
するとそこには、綾実の柔らかな微笑があった。
考えなしに言ってしまった言葉は、綾実の心に突き刺さったと思う。
でも、
綾実はアタシに微笑んでくれた。
綾実は、強いな……。
「ほんと、ごめん――」
そういうと同時に、アタシは綾実に抱きついた。
ほんというと、綾実はアタシの苦手なタイプだ。
運動会系特有の、ハキハキして、実直で、融通が利かないタイプ――
でも、今はそんなところがかわいいなって思う。
「ちょちょちょっ!! な、なになに???! 」
きゅっと抱きしめてから数秒後。
綾実は急にじたばたし始めた。
「何って? 」
アタシは綾実から少し離れて、彼女の顔を見る。
アタシより頭ひとつ分背丈の大きい綾実を見つめると、彼女はなぜか顔を真っ赤にした。
「な、なんで抱きつく必要性があるのかなあ??? 」
綾実はアタシの肩を手で掴み、ぐっと後ろに押した。
「それは咲の習性だから。
まあ、一種の愛情表現ってやつ? 」
ニヤニヤしながらチアキがなぜかアタシの解説を始める。
ってか、習性って何よ~。
「せ、先生にはその『習性』しないでよね!
わ、分かってる?
そ、それと、その……上目遣いも禁止だからね! 」
「センセーにはしないよぉ~
でも、上目遣いになるのは……アタシの背丈が高くならないと無理」
アタシは綾実にきっぱりとそう言った。
そして、アタシたちはお互いの顔を見つめる――
「ぷっ」
「あははっ」
「はははっ」
アタシたち三人は、授業開始のチャイムが鳴るまで笑い続けた。
意外と、アタシたち、いい友達になれるかも知れない。




