煩悩アデラ
誓いのコブラの後の、アデラの様子。
(やることが卑怯なのよ)
宮廷の廊下を闊歩するアデラ。
そりゃあ、お側に付きたいとしつこかったかも知れない。
(だけど弱味につけこむなんて──)
どさくさに紛れて唇奪って良い思い?
(花火の予行演習の時も、暗闇に紛れて──)
意気地無しのやり方じゃないの。
(口付けしたいと言えば断りはしないのに……)
ロジオン様に言われたなら絶対に断らない。
からかわれて騙されて唇を奪われて。
だから罰のつもり。
(でも……)
母親ゆずりの白い肌が、ほんのり色付き、揺らぐブルーグレーの瞳。
(可愛かった)
──もう少し、いじくって楽しんでも良かったかも──
はっと、我に返りかあああと身体が火照る。
「な、何を思ってるのーーーー私!!」
罰よ、罰なはず!
いや、でも、今まで散々からかわれたし
私だってやれば出来る
出来るって何を?
ロジオン様をあーしたり、こーしたり。
「──やらしいことしか思いつかない……」
はあああああと溜息きを付いて、また、はっと気付く。
「躾って……普通の躾のみよね? ……夜の方までは……無しよね?」
躾を任された人が、そう言うことまで任された話ってよく物語りにあるわね……。
「でも、まさか、第二王妃様が……そのようなことまでお考えになって任したとは……」
確認した方が良いのか?
いや、でも、考え過ぎ。
「もし、そうなら……」
──いじくり放題……?
宮廷の廊下に不気味な唸り声が響いた。
それを聞いた者達は、気味が悪そうに背筋を縮める──歴史ある城にはよくある現象だ。まだ人気がある時に起きるのは稀だけど。
「煩悩よ去れ! 」
壁に頭を擦り付けてぶつぶつ言い訳しているアデラがいることに、ロジオンだけじゃなく、城の者達も全く気付かないで夜は更けていった。
いかがでしたか?
感想・ご要望がありましたら是非お願いします。