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イルマギア  作者: 鳴澤 衛
第一章
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44 在する者達

『召喚封印魔法陣』

 異世界の者から封印魔法陣なる物を召喚する。

 以前からコンタクトを取っている者なら召喚は容易いが、今回はコンラートが接していない異世界の者を探し、交渉をしないとならない。


 ──間に合うか?

 詠唱と共に精神を離脱させ、遠く彼方へと飛ばす。

 勿論、闇雲ではない。

 魔法使いとか魔導師とか魔力とか──馴染み深い『魔』の世界への介入。


 ──ナゼ、『魔』ナンダイ?


 また声が聞こえる。今度は先程と少し声音が違った。


 ──何故、我々ニ『魔』ガ付イタ?

 ──遠イ昔、魔法使イトカ魔導師ナンテ名称ナド無カッタ


 後から付いたんだ。


 ──ソウ、後カラダヨ


 じゃあ……


 ──『魔』ヨリ召喚シヤスイ世界ノヲ探シナヨ


 精霊界?


 ──違ウネ


 神界?


 ゲラゲラと幾人もの笑い声が重なる。


 ──神界ト言ウ異世界ガ、在ルト思ウンダ?


 違うのか?


 ──今デ言ウ神界ハ、後デ命名サレタ世界


 ……無いのか。


 ──知ラナインダネ

 ──全クダ

 ──仕方ナイサ、時ガ経チ過ギテイル

 ──只人二、都合ノ良イヨウニ世界ガ創リ変エラレタ


 ──コノ、世界ハ──



「……!?」



 集中が途切れ、精神が戻る。

 それでも、頭の中で自分に語りかけてくる幾人かの声に、ロジオンは釘付けになってしまった。


 ──知リタクナイカ?


 ──コノ世界ノコト

 ──異世界ノコト


 ──イヤ、一番知リタイノハ






「……お前達は誰だ?」





 時間差施行で幾重にも施行していた、最後の円柱形封陣が破れた──。

 ドレイクはまだ戻ってこない。

 ルーカス達の入魂も今だ続く。

 ロジオンが、異世界への呼び掛けを途中で止めた。

 何か不都合でも起きたのか?──ロジオンはこめかみを押さえたまま、狼狽えていた。


 すぐ近くに今、最も警戒しなくてはならない化け物が──コンラートがいるのに──。


《ロジオン──》

ロジオンが我に返った視線の先には、既にコンラートが覆い被さろうと、闇より暗い闇の触手を広げていた。


「ロジオン様!」

 コンラートの肩から腰にかけ、斜めに直線の空間が出来た。

 間髪入れず、反対の肩から逆の腰にかけても。

 アデラだった。

 自らを主張するようにマインゴーシュは、金色の光を放つ。

 ドレイクがアデラのマインゴーシュに『光聖』の念を入れた為だ。

 二回の攻撃に弾みが付いた身体は、三回目の攻撃をかける。

 二つのマインゴーシュを宙で合わせて、両手で柄を掴むと頭上から真っ二つに切り付けた。


「ア……デラ? ……『戦女神パラスの鎧』?」

「ロジオン様! ご無事ですか? 何ともございませんか?」

 アデラはロジオンの肩を掴み、わさわさと前後に揺らす。

 ぼんやりとした様子で自分を見つめる主に、アデラは不安を感じたためだ。

 視線は合ってるのに、心有らずで彼方に在るように見えた。

「ロジオ……!」

「──アデラ!!」

 急に正気に戻ったようにアデラに怒鳴るロジオンに、彼女はホッとする間も無かった。

 再生を果たしたコンラートが、あっという間にアデラを池に引きずり入れたからだった。


「くそっ!」

 ロジオンも池の中へ飛び込んだ。




 夜の池の中は、闇の色を引き込み暗いはずなのに──。

 薄明かるい。


 ああ、そうか。

 月明かりと

 アデラに施行されている『戦女神パラスの鎧』だ。

 身体全体がボンヤリと光る姿をすぐに見付けることが出来て、施行してくれたドレイクに感謝した。


 ロジオンは、逃れようと暴れているアデラに追い付こうと、必死に手足を動かす。

 アデラが手に持っていたマインゴーシュで、自分を掴む影を確実に切り裂いた。

 先程の剣の扱い方と言い、見事だ。

 水の抵抗力も頭に置いて剣を扱っている。

 技術を見ると、アサシンとしての才は十二分に兼ね備えている。

 コンラートから離れ、こちらに向かって浮上してきたアデラの腕を掴み、自分に引き寄せた。

 顔が近付き、視線が重なる。


(──えっ?)

 突然、自分の身体が硬直し、ロジオンは焦った。

 身体が吊った?──いや、そんなんじゃない。

 意識が、深い海の底に引きずり込まれる感覚に背筋が凍った。


(──精神支配!)


 何故だ? アデラ?

(まさか! アデラは魔力を持っていない、出来るはずか無い!)

 でも目が合ったのは、見つめたのは彼女しか──

 アデラの瞳を見て、ロジオンはまさか、と自分を疑った。


 アデラの瞳の中に映る自分の姿──。

(違う!)

 そう感じた。自分なのに自分じゃない。

 アデラの瞳の中の自分が笑った。

「──!?」


 ──駄目ダナ、丸ッキリ冴エナイネ

 ──力ノ使イ方ヲ教エテヤロウ


 ──ナニ、少シノ間、身体ヲ借リルダケダ──




 誰かに頭を掴まれた気がした──刹那、ロジオンの意識はそこで途絶えた。



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