表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

昔から隣にいる人

作者: 小雨川蛙
掲載日:2026/08/06

 私が独りの時、苦しくて仕方なかった時。

 いつの間にか隣にいる人がいた。


 いつから隣りに居たのか分からない。

 だけど、隣で座ってくれて。

 いつでもお話を聞いてくれて。


 時には笑ってくれて。

 時には泣いてくれて。

 どんな時でも一緒にいてくれて。


 だから、私はいつの間にか苦しさを忘れていた。

 他の人がいらなくなった。


 ただ、その人さえいれば良いと思うようになった。

 そして、事実。

 私はその人だけと共に居るようになった。


 それで満足だった。

 幸せだった。


 そう信じている。

 今も。



 *



 藤吉の家から煙のかおりが漂う。

 あいつが死んだのだと聞くまでもなく悟った。


「藤吉。死んだのか」


 俺が言えば仲間が返す。


「相手にすんな。素知らぬふりをしろ」


 冷たいやつだ。

 そう思ったけれど言うのをやめた。

 先の言葉を理解していたからだ。


「次はお前が喰われるぞ」


 予想に違わぬ言葉。

 そう。 藤吉は喰われて果てたのだ。

 孤独に。


「あの野郎を殺すことはできねえのか?」

「出来るもんかい。相手は人間じゃねえんだから」


 それが全て。

 諦める他はない。


「にしても残酷な妖だ。心の隙間を埋めるなんて」


 隙間を埋めるのは自分自身の仕事。

 どれだけ苦しくとも乗り越えるしかない。

 それが出来ぬものは妖に住み着かれる隙を作るのと同義。


「隣に座っているだけ。それだけで命を奪うのだから」


 妖とはなんとも残酷なものか。

 仲間の言葉を心で引き継ぎ、俺は藤吉を忘れることにした。


 少なくとも、これが俺の心の隙間の埋め方だったから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ