昔から隣にいる人
私が独りの時、苦しくて仕方なかった時。
いつの間にか隣にいる人がいた。
いつから隣りに居たのか分からない。
だけど、隣で座ってくれて。
いつでもお話を聞いてくれて。
時には笑ってくれて。
時には泣いてくれて。
どんな時でも一緒にいてくれて。
だから、私はいつの間にか苦しさを忘れていた。
他の人がいらなくなった。
ただ、その人さえいれば良いと思うようになった。
そして、事実。
私はその人だけと共に居るようになった。
それで満足だった。
幸せだった。
そう信じている。
今も。
*
藤吉の家から煙のかおりが漂う。
あいつが死んだのだと聞くまでもなく悟った。
「藤吉。死んだのか」
俺が言えば仲間が返す。
「相手にすんな。素知らぬふりをしろ」
冷たいやつだ。
そう思ったけれど言うのをやめた。
先の言葉を理解していたからだ。
「次はお前が喰われるぞ」
予想に違わぬ言葉。
そう。 藤吉は喰われて果てたのだ。
孤独に。
「あの野郎を殺すことはできねえのか?」
「出来るもんかい。相手は人間じゃねえんだから」
それが全て。
諦める他はない。
「にしても残酷な妖だ。心の隙間を埋めるなんて」
隙間を埋めるのは自分自身の仕事。
どれだけ苦しくとも乗り越えるしかない。
それが出来ぬものは妖に住み着かれる隙を作るのと同義。
「隣に座っているだけ。それだけで命を奪うのだから」
妖とはなんとも残酷なものか。
仲間の言葉を心で引き継ぎ、俺は藤吉を忘れることにした。
少なくとも、これが俺の心の隙間の埋め方だったから。




