おい、妊娠させてから婚約破棄イベント起こすな! ― 被害者の会
業務命令:ベビー用品の実地テスト(王子から)
※本作は、王子夫妻の善意に振り回される人々の観測記録です。
「またですか……」
「ええ……。王子の命令で」
「今日は、あの。いつも以上に……」
「ミリアム嬢!言わないでください〜〜……!」
ベビー用のスタイ(よだれかけ)を付けたまま、ケイン様が崩れ落ちた。
◇◇◇
「殿下が子供服のブランド事業に手を?」
「アデリア様が羨ましい……。そんなに子どものことまで考えてくれるなんて!」
――そうかな?まず、王子は国を一番に考えなきゃ駄目なのでは。
「まぁ、おほほ。殿下ったら、男の子の服のデザインはしてくださらないのよ。だから、そちらは私が引き受けることにしたわ」
「共同作業ですのね!」
そこら中から賛辞の声が上がった。
一人、クッキーを摘む。
美味しい。
出来れば、スイーツ事業にも手を出してもらいたい。
お子様のオヤツで、おこぼれが貰えるかもしれない。
「……あはは。ベビーブーム到来ですね」
私は、アデリア様に笑いかけた。
◇◇◇
「お前、今日はピンクのスタイか」
「君は、えらくフリフリだね」
「それで……仕事は」
「……つけ心地が良かった。って報告書だけで終わらないかな……」
「……あははは」
◇◇◇
「殿下に言って、男の子用の感想を集めてもらう予定ですの」
ある日、アデリア様が宣言した。
うん。
把握した。
「まぁ〜、アデリア様のデザインですの?楽しみですわ」
「ええ、本当に!きっと流行りますわ」
(ケイン様、骨は拾います……。いや、やっぱり嫌かな……)
私は、そんな事を考えながらカップを口に運んだ。
◇◇◇
その日。
ケインは、ピンク色のスタイを外しながら、ずっと心に積もり続けていた疑問を呟いた。
「おかしい……。今日は平和すぎた」
着替えを手伝ってくれていた侍従が、さっと目を逸らした。




