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Dランク

トールに仕事を丸投げしてから3か月。

彼は本当に優秀だった。


「え、もうDランクになったの?」

トールに掲げられた青色のギルドトークンに驚く。

ギルドにはランクというものがあり、最初は一番下のEランクから始まる。

ランクが上がれば、より難易度の高い依頼を受注可能になり、報酬が上がるのだ。

「はい。ランクはギルドへの貢献度で上がります。難易度の低い依頼の貢献度はどれを選んでも大差ないので、短時間で終わる依頼や、同時並行でできる依頼をたくさん受けることで、簡単にランクが上げられました。」

対面で食事をする彼の所作はもうすっかり洗練されている。

「へー、やっぱ超優秀。」

さすが要領がいい。

装備もコツコツと揃えているようで、トールは今、破れにくそうなしっかりした生地の服に、金属製の防具を付けていた。

「すべてはミア様のおかげです。」

トールはそう言って、とろけるような笑みを浮かべた。

これが最近の彼の口癖である。

最初はいつものおべっかだと思って気にしていなかったが、事あるごとに言ってくるのでちょっと気になる。

マイブームなのだろうか。


「そろそろ町を移動する?Dランクに上がったならどの町がいいかな。」

町によって、集まりやすいランクの依頼は異なる。

フォークロードはEランクの依頼が多いので、別の町に移動した方がよさそうだ。

「そうですね。シャンレンはいかがでしょうか?異国文化の混じる街並みなので、ミア様もきっと気に入ると思います。」

シャンレンは東の国の文化に大きく影響を受けた街だ。

領主が東の国の職人や商人を多く招いたため、東の国からの移民も多い。

同じ国にいながら異国のような街並みとはとても興味がある。

「いいね。じゃあ、明日はシャンレンに行く準備をしよう。」

「かしこまりました。」


翌日、まず私たちは馬車を買うことにした。

ギルドに行って中古の馬車を譲りたい人がいないか確認する。

するとちょっとした騒ぎになった。


「その防具付けた犬の獣人。あなた、3か月でDランクに上がった、期待の新人よね?」

「全然ギルドに姿を現さないからどんなやつかと思ってたけど、お前が、あの噂の……。」

新米冒険者たちにわらわらと詰め寄られる。

どうやらトールはちょっとした有名人になっていたようだ。

ギルドトークンは大っぴらに見せるものでもないのだが、見ている人はいるようだ。

「いや、あの、馬車は……。」

「残念ながらここは新人ばかりだから馬車を譲るような人はいないと思うわ。それよりいったいどうやったの?コツを教えて。」

同い年くらいの女の子にぐいぐいと迫られる。

「このなりだから、良いところの子供なんじゃねぇか?どうせ金に物言わせてるんだろ。」

これまた同い年くらいの男の子が嫌味っぽく言ってきた。

「あぁ。実はそうなんだよね。お金があればすぐDランクになれるよ。」

私はてきとうなことを言ってその場を離れた。


私はすぐにギルドを出て、道行く人に馬車を取り扱っている店を紹介してもらった。

町のはずれにあるこじんまりした店の外には、ズラリと馬車が並んでいる。

馬小屋もあるので、ここですべての用事が済みそうだ。

「大きさで値段が変わるの?」

私は店員に質問した。

「はい。基本的に荷台が小さい物は安く、大きい物は高いです。傷が目立つものは少し割安ですが、しっかり整備しているので、問題なくお使いいただけます。」

実用的な平民向けの馬車はどれも似たり寄ったりな作りだった。

これなら一番小さいもので良さそうだ、と思ったところで隣の荷馬車が目に入る。

荷馬車は荷台の前に御者が座る椅子が付いているだけの簡素な作りだ。

通常の馬車は御者台、客車、荷台が完全に独立しており、客車は完全に壁でおおわれている。

「荷馬車はもっと安かったりする?」

店員から教えてもらった荷馬車の値段は、一番小さい馬車の半額以下だった。

「ミア様はどちらに乗るおつもりですか?」

トールは私が荷馬車を買おうとしていることを察して止めてくる。

「私、日ごろ常々、御者台が一番見晴らしがいいんじゃないかと思ってたんだよね。」

荷馬車の御者が座る椅子は長く、頑張れば4人くらい座れそうだ。

「それはそうですが、ゆっくりしたいときはどうするんですか?」

客車のように壁に守られていないので、何も気にせずだらだらすることはできない。

「そのときは後ろで寝ればいいよ。広いし。」

何も乗っていない荷台は広々としていて快適そうだ。

「ミア様が、荷台で……?」

トールが珍しく絶句している。

「これください。」

私は店員に笑顔で宣言した。


馬車を買った後は市場に来た。

「食料調達は任せた。」

「かしこまりました。シャンレンはここから3日ほどかかりますから、それに合わせて食料を買って参ります。食べたいものはございますか?」

「何だろう。シチューとか?」

「いいですね。他には?」

「うーん、思いつかない。トールはないの?食べたいもの。」

「ミア様が食べたいものが私の食べたいものです。ですが、思いつかないのであれば栄養のあるお食事をご用意しましょうね。嫌いなものはございますか?」

「紅茶。」

他愛もない話をしながらトールはせっせと食材を集めていった。


馬車に市場でそろえた食材を詰め込んだらお昼になっていた。

「昼ごはん食べてから出発する?」

「いいえ。もう行きましょう。ギルドにいた人たちと鉢合わせたとき、この馬車を見られたらなんと言われるか。」

「確かに。じゃあ私、全力でスケッチするふりするね。ふりというか実際にするんだけど。」

金持ちの子供のふりをしたので、荷馬車にのっている事情を一から説明するのは面倒だった。

「かしこまりました。」

御者台は高さがあるので、先に乗ったトールに引き上げてもらって乗った。

思っていた通り、見晴らしが良い。

当然のように馬を操るトールは、馬車をゆっくりと出発させた。

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