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ヴァルノワ

1週間という長い旅路を経て、私たちはヴァルノワに到着した。

ナギが見えないようにカーテンを閉め切っているので、私は街並みを見ることができなかった。

「というか、姿をくらませる魔法を自分にかければいいんじゃないの?」

私はふと思いつく。

「残念ながら、魔力の全くない人間の目から隠れることはできないんだ。」

ナギは首をすくめた。

彼は日常的な動きなら問題なくできるようになったようだ。

「それは残念。」

「でも、門番の目は騙せるよ。」

ナギが少し意地悪そうな顔で笑い、カーテンに手をかける。

「わざわざ怪しいことをしないでください。」

耳の良いトールは当然私たちの声が聞こえていて、カーテン越しに苦言を呈した。


宿に到着すると、私はようやく馬車から降りて外の景色を眺めることができた。

白い大理石の建物が整然と並んでいる。

敷き詰められた石畳の道を、行き交う馬車は貴族用のものばかりだ。

なんというか圧倒される感じだ。

「わぁ、シャンレンとは全然違うね。」

ナギはうろこのない右半身だけをカーテンの隙間からのぞかせている。

「シャンレンはかなり特殊な街並みですからね。」

トールはほほ笑みながら、しっかりとカーテンの隙間を閉じた。


宿も石造りで、いつもより少し高額だった。

物価が高めのようだ。

昼前についたので部屋に荷物を置くと、トールはそのまま仕事に行ってしまった。

本当に仕事熱心なことだ。

一人で食べるのも何なので、彼に用意されたお弁当を持って荷馬車に戻った。

カーテンを開けると、ナギが簡易ベッドの淵に腰かけてぼーっとしている。

「暇?」

「あぁ、主様。暇じゃないよ。トールにどんなことを教えてあげようか考えていた。」

トールはさっそく魔法について、ナギから色々教わっていた。

ナギも楽しそうに教えている。

「紙とペンいる?トールは文字が読めるよ。」

書き残すものがあった方が勉強も捗るだろう。

「あの子は本当に優秀だねぇ。それに主様もとってもいい子。」

彼に手をとられ、私もベッドの淵に座る。

私の頭を撫でるその様子は完全に小さい子をかわいがっているようにしか見えない。

トールも私も彼からすればほんの子供なのかもしれない。

「ほかに欲しい物ある?」

「ううん。もうこれ以上何も望むことはないよ。」

彼は穏やかに言った。


ナギとお昼を食べた後、いつも通り街の散策をしていた。

「魔族の首輪を廃止せよ。我々は平等である。魔族を解放せよ。」

広場に大きな声が響き渡る。

解放派の運動だ。

町行く人は彼らをちらりと一瞥しては、関わりたくないという風に視線をそらして去っていく。

私も同じように離れようとしたところで、声をかけられた。

「ミア?ミアじゃない。久しぶり。元気だった?」

孤児院で一緒に暮らした幼なじみが嬉しそうに飛びついてくる。

「うん。ライラも元気そうだね。すごく。」

ちょっと元気すぎるくらいにね。


ライラは各地の解放派の拠点を転々としているらしい。

解放派は貴族が中心の派閥なので、貴族の多いヴァルノワはかなり大きな拠点のようだ。

私の近況も聞かれたので、冒険者ギルドでCランクになったことを伝えると、とても悲しそうな顔をされた。

「ミア。あなたそんなに魔族を働かせているの?ひどいわ。」

いや、本当にね。

でも勝手に働きに行っちゃうんだよ。

と言ってもよく分からないと思うので、私はさりげなく話題を変えた。

「ライラに誓ったから、罰は与えてないよ。」

「ミア。あなたのそういうところはとても素晴らしいと思うわ。」

彼女はとても感心した様子で私を見た。

「犬の獣人はどうしたの?」

「彼なら解放して拠点にいるわ。」

「解放?」

「そう。首輪を外して自由にさせてあげているの。でも、かわいそうに。首輪のない状態で外を歩くことはできないから、いつも拠点の中にいるのよ。」

解放派が有言実行していることに驚く。

てっきり口だけだと思っていた。

「彼らを見ていると、もっと私たちの考え方を広めて、彼らにも住み良い世界にしよう、頑張ろうって思うわ。」

「へぇ。」

相変わらず壮大な話だ。

「そうだ。今度拠点に来て、みんなで一緒にお茶しましょう?ミアも教会で出会った獣人の彼を連れてきてちょうだい?」

「えぇぇ。嫌だ。」

全然行きたくない。

「お願い。紅茶は絶対出さないから。ね。みんなで再会の喜びを分かち合いましょう?」

「嫌だってば。」

何のメリットもないし、全く心惹かれない。

私たちが言い合っていると、老紳士が近付いてきた。

「ライラ、お友達かい?」

「ええ。孤児院の頃からのお友達でミアといいます。」

ライラは勝手に紹介を始める。

「初めまして。ミアと申します。」

どう見ても貴族階級の人だ。

少し緊張しつつ、立ち上がってあいさつした。

「これはこれは、ご丁寧に。私はアイザック。どうぞよろしく。」

そう言ってアイザックさんは帽子を取って胸に当てると丁寧なお辞儀をした。

ライラ以外の解放派の人と話すのは初めてだが、想像よりずっとまともそうだ。

むしろちゃんとした大人という感じがする。

「ミアを拠点でのお茶会に誘ったのですが、断られてしまって……。でも諦めきれないんです。」

ライラが悲しそうな顔をしている。

アイザックさんは苦笑すると、私の方に向き直った。

「我が家のバラ園は国一番の自信がある。よろしければお二人のお茶会は我が家の庭でいかがかな?」

どうしよう、急にお茶会が魅力的になった。

「……喜んで。」

国一番のバラ園は気になる。


「トールー、3日後の昼、お茶会についてきてくれない?」

夜、私はトールにお願いしていた。

「もちろん構いませんが、急にどうしたのですか?紅茶は苦手ですよね?」

トールは私の頭を撫でて不思議そうに言った。

私は昼の出来事を説明する。

「なるほど、承知いたしました。数奇な幼なじみを持つミア様は大変ですね。」

トールは同情したような様子で言った。

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