現装とは
「現装とは」
それについてまず、私は幻想災害について語らねばならない。かつて、混沌の中に生まれた一筋の光、後の神は秩序を制定することでこの世を混沌から切り離し、開闢とした。
俗に言う宇宙の誕生、ビッグバンだ。
その後熱膨張と冷却を経て現在の宇宙となり、数え切れないほどの命が星の上で生きるようになった。我々が住まう母なるEarth以外の星にも生物は蔓延り、如何なる銀河を覗いて見ても、そこには生命の営みを確認できるはずだ。
大抵の生き物というのは体があり、魂を持つ生命体を指す。これらの生き物は思考し、感情を抱き、強度の大小、構造の巧拙を問わず精神を持つ。
我々人間もまたそのような生き物であり、精神鍛錬というのは魔法使いにとっては当たり前とされる。
疑問に思ったことはないか?
魔法はイメージの世界だ。しかし、現実に魔法はイメージだけでどうにかなるほど容易くはない。誰かが言った「魔法とは己の欲望を叶えるためだけの罪深き権能。神が定めた物理秩序に反する悪魔の法理。その末路は、魂の売却か破滅だけ」という言葉。
物理法則ではあり得ない幻想を現実にするのが魔法だ。しかし、魔法はどんな願いも叶えてくれるわけではない。
魔力が術式起動に充分な量でないから。願いはあっても、執着が薄いから。単に才能がないから。
では、だ。そのような魔法にすらなれなかった想いはどこへ行く?
魔法とは持たざる者が持つものに抗うための力。だが、魔法こそが最も平等に夥しい数の持たざる者を生み出す。
魔法を以てしてもどうしようもない想いが蓄積し、塊となった存在。言ってしまえば精神生命体。それこそが『幻想災害』。
持たざる者達の、声になれなかった声。
それら夢の残骸や願いの残滓を背負って戦うのが現装使いだ。
引用「GENSOW:想念代行者達に捧ぐ」
著:ギルバート・アルシェンブレヒト