第7話
あの交通事故の話をしてから私達四人はどこか気まずさを感じていた。会話もすべて当たり障りのない会話で、特に私と悠衣が話すことは最低限になった。挨拶や事務連絡、親からの伝言など。私は悠衣と話したかったが、悠衣の方は私を避けているらしく、なかなか話すことができなかった。
「このまま、話さなくなっちゃうのかな」
深い溜め息をしていると莉人が通りかかり、
「お前ら何があったんだ?全然話してないじゃねえか」
お昼でも私に声を掛けない悠衣を見てそう感じたらしい。私は事の経緯を莉人に話した。
「ほー、そうだったのか。話したのかあいつ。」
事情を知っていたらしく、話を飲み込むのが早かった。軽い。こんなに悩んでるのに。
「まあ、そう落ち込むな。朱里の取り柄は明るいとこだろ?くじけず、話しかけてみろって」
励ましとして私の背中を思いっきり叩いて、部活へ向かった。
はあ、話すのか。どうやって声かけたらいいんだろ。普通に声かけても秒で会話終わらせてきそうだし……。
色々考えているとクラスの実行委員が話しかけてきた。
「今、体育祭の種目決め調査しているんだけど、朱里ちゃんは何に出たい?」
そうか。もう体育祭の時期か。
「ん〜、今何が余ってる?」
「リレーと綱引きと借り人競争かな。朱里ちゃん、足速いからリレーでない?」
確かに、人より足は速いけど、そこまで早くないんだよなー。小さい頃に4人で鬼ごっこしすぎたな。
「人がいなかったらリレーに出ようかな。私、借り人競走に出たいな!楽しそう!」
体育祭で出る種目を決め終わり、教室で一人になる。一人になるとあの夢を思い出してしまう。今でも目を瞑るとトラックが突っ込んでいくシーンが映り、恐怖で押しつぶされそうになる。これを悠衣達は目の前で見たんだよね……しかも4歳のときに。よくパニックにならなかったよね。私は恐怖や頭をぶつけた影響で記憶をなくしてしまったらしいけど。
体育祭で悠衣と話せる時間あるかな。悠衣が何に出るのかわからないけど……。
「朱里!今帰りか?一緒に帰ろーぜ」
職員室で用事があった海斗が教室に戻ってきた。私は荷物を持って海斗の下へ走っていった。
「最近、元気ないみたいだけど、やっぱあの話聞くの辛かったか?」
海斗は莉人から悠衣の話を聞いていないらしく、自分が話てしまって私が落ち込んでいると思ったらしい。優しいやつだ。
「んーん、あの話は聞けてよかった。みんな黙っててくれて、私に言うべきときに話してくれてありがとうね。」
あの時言えなかったお礼を言うことができて私は満足した。少し肩の荷が下りて笑うことができた。
「いいってことよ。それより悠衣が朱里と話せなくて寂しがってたぞ?話してないのか?」
え、話したいって思ってくれてるの?そうなの?海斗の話に驚き、足が止まってそのままフリーズしてしまった。