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記憶と真実  作者: 白瀬 佑月
第1章 真実って?
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第10話

 体育祭当日。相変わらず悠衣とは会話がぎこちなかった。でも、今日こそ話そうと意気込んで家を出発した。


 家を出ると冷たい風が私の前を通り過ぎた。しかし、いつものは肌を指すような風ではなく、春を呼ぶようなピンク色の風だった。


 学校につくと、もう校庭は体育祭模様になっており、陽気な音楽が流れていた。


 「おはよう、莉人、悠衣、海斗!今日は優勝できるようにがんなろうね!」


 いつもの3人を見つけて挨拶をする。なぜ、こんなにも気合が入っているかというと、優勝クラスには食券2週間分を贈呈されるからである。前まではどこかのペアチケットだったが、それだとクラス全員に景品が渡らないという意見が出てきて、食券2週間分になったらしい。私的には食券2週間分のほうが気合が入る。


 「頑張るぞ!俺の筋肉で優勝を取ってやる」


 マッスルポーズを取っている海斗をみて、どっとクラス中が笑いで溢れた。なにそれ〜、筋肉で優勝とか意味わからないけどいいや。


 「悠衣もがんなろうね!」


 悠衣に明るく声を掛け、ハイタッチを求める。一瞬、時が止まったが「うん!」っといって思いっきりハイタッチをしてくれた。


 体育祭が始まり、順調に私達のクラスが1位をキープしていた。


 ――次の種目はリレーです。ここで点を取っておくと午後の種目に大きな差が生まれるでしょう!――


 招集の放送が入り、私はリレーの招集場所へ向かった。なんとそこには悠衣がいた。


 「悠衣もリレー出るの?!やった!頑張ろーね」


 ぶんぶんと手を振って頑張ろうと意気込んだ。悠衣は私がリレーに出ることを知り、参加しようと思ったらしい。


 「そろそろ始まるね、緊張してきた。」


 悠衣の方を見て話しかけると、悠衣の手が震えていた。悠衣は緊張しやすく、こういう個人に責任が出るものをやろうとしない。落ち着かせるためにいつものように手をつなぐ。


 「大丈夫!私がいるから」


 安心させるようにニコッと笑いかける。


 パンッ!……ピストルの音がする。リレーが始まったらしい。私達のクラスはスタートで少し出遅れたが、バトンが渡るたびに順位を追い上げていった。次は悠衣の番だ。頑張って!私はアンカーなのでまだ出番は来ない。


 悠衣にバトンが渡った。5メートル走ったところで躓いて転んでしまう。


 「あ……。悠衣……!」


 大丈夫かなと心配していると悠衣が立とうしない。どうしたんだろ……。頭の中で答えが出る前に身体が動いて悠衣に向かって走っていた。


 「悠衣!どうした?」


 悠衣に手を差し伸べて様子を伺うと悠衣は泣き出してしまった。


 「ごめん、足が痛くて走れない……。優勝逃しちゃうよぉ……」


 ちらっと昔の記憶が蘇る。誰かが泣いている私に手を差し伸べてくれた記憶……。


 「大丈夫!私がいるから!」


 と言って悠衣の手を取り、トラック内に移動させる。悠衣は手を差し伸べてきた私を見て懐かしむような顔を一瞬した。このまま次の人にバトンを渡さなければ失格になってしまうので、トラック内にいる保健委員に悠衣を任せ、トラックに落ちていたバトンを拾い、次走者へと向かって走った。走り終えて順位を確認すると5人中5位という結果だったが、次の走者やその次の走者たちが追い上げ、4位まで行けた。次でラスト。私のアンカーで順位が確定する。私の手にバトンが渡された――。

 

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