プールとトイプードル
俺は賢いからわかる。俺の家は裕福だ。
この夏パパが家を買ったから今日ここに引っ越した
綺麗で広い家。でかい庭にはプールもある。
早速この街を探検するべく俺は家を出ようとすると
ママが今日は荷解きがあるから部屋に戻れってさ
まぁ今日は忙しいもんな
パパは少しくらいいいじゃないかと俺の味方をしてくれる。パパの優しさ大好きだぜ
でもな嫌われ役をママに押し付けちゃだめだ
ママが意地悪で言っているんじゃないのはわかる。
普段から俺の身の回りのことをしてくれるのはママだ。褒めるのも叱るのもママだ。
パパは沢山褒めてくれるが叱らない。甘やかすだけが愛じゃないぜパパ
俺は二人が揉めないように部屋に戻ろうとした
その背中が悲しく見えたのかママが
「お隣さんに挨拶に行ってきてくれる?」
と提案する。まったく二人とも俺に甘いんだから。わがままに育っても知らないぜ
俺のクールな心とは裏腹に嬉しい表情が顔に出ていたのかパパもママも俺を見て微笑む
さっそくお隣さん家へ向かう俺とパパ
俺の庭も広いがお隣さんの庭も広い。家も立派だ。
チャイムを押すとワンワンという鳴き声と共にお隣さんが出てくる
プードルだ。もこもこなクリーム色のトイプードル!なんて可愛いんだ
俺たちが引っ越しの挨拶をするとお隣さんは愛想よく微笑んだ
優しそうな人で嬉しいぜ!
パパとお隣さんが挨拶しているとかわい子ちゃんが急にダッシュした。
慌てて俺たちみんなで追いかけた。
どうやらお隣にもプールがあるらしく彼女は泳いでいた。夏は暑いもんな。
もこもこのお嬢さんがすいすいと泳いでいる。可憐なその姿は犬界のマーメイドだ。
お隣さんが彼女を引き上げるとなぜかパパが小刻みに震えてる。
一件落着したので俺たちは帰路につく。またな愛しのもこもこガール
「さっきのワンちゃんプールから出たらめっちゃ細かったな!」
珍しい子だなとパパが楽しそうに笑う
なるほど笑いを我慢して震えていたのか
パパよ
俺は賢いからわかる。俺はポメラニアンだ。
水に濡れたらフワフワの俺も細くなる
普段俺の世話をするのはママだからパパは知らないのだ。異常に細くなる俺を。
まったく世話のやける親だぜ。
真の姿を見せるべく俺は自分家のプールに飛び込んだ。
笑うパパと音に気づき怒るママ。
俺の家は愉快だぜ