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3. 木音の森

冒険なら、共に

 次の日の早朝、ドンドンドン、とドアを強く叩く音で目が覚めた。

 ティシャだ。

 動きやすい、船上と同じシャツにズボン姿のシルフィを見て、頷きながらもひとつだけ指摘した。


「帽子もちゃんとかぶったほうがいいよ」


「帽子?」


 そんなものは、持ってなかった。


「じゃあ、途中の雑貨屋で買えばいい」


 通りに出てすぐに、近くの雑貨屋に寄り、ティシャの勧めるまま、虫よけヴェールつきの帽子を買う。

 植物でできた筒のなかに入った水と、芋の粉を練ったものを味つけし、葉でしっかり包んでから焼いてある携帯食も買いこんでおく。

 それらをすべてカバンのなかに収めると、改めて出発だ。

 街を出て、海とは反対側へ。

 そこには、背の低い草が一面に生えている小高い丘があった。

 斜面をしばらく登ってから振り返ると、さっきまでいたごちゃごちゃした街並みがよく見える。

 街の中心の市場の白い屋根はあいかわらず光り輝き、その向こうに見える海に負けず劣らずの存在感を放っている。

 港に停泊した船は、よく躾けられた馬のように行儀よく並び、そのなかにはデヒティネの細い姿も見えた。

 上の位置から街を眺めたことなどなかったシルフィには、こんな景色は新鮮だ。

 飽きずにずっと眺めてしまう。

 しかし、視線をあちこちにずらし、街からすこし離れたところにある森に目を向けると、なぜか目につく場所があった。

 なんだか、他と比べて違和感があるのだ。

 森自体は手入れのされていない、原生林のようだった。

 しかしとつぜんある部分だけ、木々がすっかり伐採されていて、そこに唐突にトライゴッズ様式の、人工的な庭が作られている。

 壮大な邸宅も同じ様式なのだが、どちらもただただ大仰で、自由奔放さが美を生み出しているようなこの地に似合わない。

 まるで、突然間違った接ぎ木をしているような、座りの悪さがある。


「あれ、すごいね」


 指さすと、ティシャがしかめっ面をした。

 やはり、あれを気に入ってないようだ。


「ああ、ゴールドの屋敷だね。二十年くらい前にやってきて、あっと言う間にのし上がったらしいよ。港の働き手や、市場外の露店の元締めやってる。この街じゃ、名士扱いさ。頭が上がらないヤツは、大勢いる」


 そういえば、市場の外でもめていたときも、ゴールド氏という名前が出たのを、急に思い出した。

 ただ、アーンバラでもそういった元締めは何人もいたし、なかなかいい暮らしをしていたのも確かだ。

 しかし、あそこまでの豪邸を建てられる者はいなかったように思う。

 そう考えると、この地の稼ぎは、そうとうにいいらしい。


「ただねえ、謎も多いんだ。腹心の部下数人以外には、絶対に姿を見せないらしい」


「なんで?」


「なんでだろうね。前にすごい事故に遭って、人前に出られる姿じゃないから、なんて噂もあるけどね」


 不思議な人間もいるものだ。

 シルフィはそんなことを思いながら、軽い足取りでどんどん斜面を登っていくティシャの背を、急いで追う。

 しばらく無言で丘を上がると、帯状に横に広がる森へと入る。

 レンガと石でできた街で育ったシルフィには、こんな環境は今まで経験がない。 

 見慣れない樹木が葉を多く茂らせているせいで、視界はしょっちゅうふさがれる。

 むんむんとたちこめる温かな湿気は、まるで肌に貼りついてくるようだ。

 足どりの軽いティシャの背を追い、ぬかるんだ地面を、一歩一歩踏みしめながら進んでいると、袖になにか衝撃があった。

 目をやると、見たこともない虫がとまっていた。

 親指ほどもある大きさで、濃い緑色の羽と、長い触覚を持っている。


「ぎゃああああああ」


 思わず叫びながら手を振り回すと、あわてて飛び立っていった。


「なに、どうしたの」


 ティシャが心配そうに引き返してくる。


「む、虫が、虫……、み、緑色の、羽があって……」


 形状を説明すると、あははは、と軽い笑い声をたてた。


「大丈夫。毒もなにもない、パンゼっていう無害な虫だよ。色の名前にまでなってるくらい、あたしらには馴染みがあるんだけどな」


 そうやって説明を聞いても、まだ眉間の皺が取れないシルフィに、ティシャはなにか思い当たったようだった。


「あんた、もしかして街育ちかい」


「うん。田舎は行ったこと……ない」


「ああ、じゃあ、虫なんて身近じゃないんだな」


「うん」


「じゃあ、しかたないか」


 なんだか同情されたようで、我ながらちょっとなさけなかった。

 でもまあ、こればっかりは本能的な嫌悪感だ。

 相手が言う通り、しかたない。


「帽子のヴェールをおろしておきな。すくなくとも顔には貼りつかれずにすむ」


 親切半分、笑い半分、といった感じでアドバイスをくれたので、その通りにする。

 視界がすこしぼやけるが、このさい、背に腹は代えられない。


「こうなりゃ、早く森を抜けるしかないね。急ごっか」


 そう言って、枯葉の山や落ちた枝などをひょいひょいと身軽に避けながら進むティシャは、まるでこの森の申し子のようだ。

 必死について行くうちに、シルフィもなんとかコツをつかんできた。

 現金なもので、そうなると楽しくはなってきた。

 が、やがて森の切れ目に近くなり、鬱蒼とした草木のあいだから光が見えてくると、さすがにほっとした。

 急ぎ足で森を出て、しかし、そこに広がっていたのは意外な光景だった。

 下草さえも生えていない、一面の土と岩の地が広がり、そこかしこに、黒ずんだ木が立っている。

 いや、正確に言えば木の残骸だろう。

 葉もなく、とても生きているようには見えない。

 近づいて触れてみると、硬い炭のようになっていた。


「昔々、この山の神が怒ったときに、できたんだって。地下をものすごい熱が走っていって、そのせいで木が一瞬でこんな風になったんだってさ」


「へえ……。すごいね」


「だから、このあたりには人は住まないんだ。その木も、炭として使おうと持ち帰ると、呪われるって言われてる。そのおかげで、今でもこんな風に昔のものが残ったままなんだってさ。もっとも、雨風が激しいから、どんどん削られてはいるらしいけど」


 説明を聞きながら、改めてふりかえり、これまで通った景色を見渡してみた。

 一番遠くに見えるのは、きらきらと輝く海に面した、大きな港。

 そこから続く、さまざまな建物がひしめくように並ぶ市街地が、沿岸沿いをずっと埋め尽くしている。

 そして丘の下部は、草地がしばらく広がり、それを縁取るように、木々の密集した森があある。

 そしてそこまでは、南の国らしい、逞しく陽気な生命力が溢れてみえる光景だった。

 なのに今は、殺風景な、あまりにも不毛な地に立っている。

 その落差に、急に迷子になったような気持ちになった。

 あるいは、知らない誰かの敷地に突然迷いこんでしまって、いたたまれないような。


「さあ、行くよ」


 だから、そう声をかけらると、なんだか気が楽になった。


「うん」


 頷き、歩き出したティシャに並ぶ。


「木音の森も、同じ時代にできたんだ」


「へええ」


 不毛な景色が続く斜面をしばらく登ると、今度は大岩や崖だらけの場所に着いた。


「あそこを越えるよ。あたしの持ったところや、足置いたところを真似して登るんだよ。わかったね」


 そう言って、そそり立つ崖のある部分、シルフィには壁にしかみえない場所へ、ティシャは取りついた。

 岩が飛び出している部分を掴んだり、わずかな段差に足を置き、ゆっくり登り始めた。

 見よう見真似で続いたが、しゃべる余裕もなくなった。

 集中してその崖を登り切ると、最上部に、人ひとりぶんほどの幅の、平らになっている場所があった。

 そこに立ち、眼下の景色を見て息を飲む。

 そこには、すり鉢状の広いくぼ地があった。

 一番下の地面には炭化した樹々が並び、その根元には水が湛えられている。

 あの絵で見た風景そのものだった。


「降りられるよ。行ってみようか」


 今立っている場所から、岩の壁伝いに下に降りられるようだった。

 よく見ると、岩を削って簡単な階段のようなものが造られている。

 転がり落ちないように慎重に足を進め、時々は飛び降りるようにしながら、水面に向かって降りていく。

 水があるせいなのか、壁の内側は、すこしだけ涼しい。

 だが、気を張っているせいか、汗は止まらなかった。

 階段の終わったところ、水面からすこし上になる部分は、平らな大岩になっていた。

 テラスのようでもある。

 ちょうどお腹も減ってきていたので、ここで食事をすることにした。

 荷物をおろし、ようやく腰をおちつけることができた。

 しばらく黙って景色を眺めていたが、そういえばずいぶん静かだと気づいた。

 バッグから食事と飲み物を出しながら訊くと、ティシャは申し訳なさそうな顔をする。


「水が動かないと、鳴らないんだ。今日はダメみたいだな」


「水が動くって、どうやって?」


「風だな」


「風?」


「風が吹くと、水面が動くだろ。それで……」


「ああ、じゃあ」


 シルフィは手を止め、立ち上がった。


「あたしが風を呼んでみる」


「え?」


 ティシャは首を傾げたが、すぐに思い出したようだ。


「ああ、あんた、風呼びなんだっけ」


「うん。山で吹くのは、初めてだけど」


 シルフィは空を見あげた。

 このくぼ地を取り囲む崖に、丸く切り取られて見える空には、雲ひとつない。

 だが目をこらすと、海から来る風が、はるか上空を通り過ぎていっている。

 それが確認できるやいなや、シルフィはそこに向かって、指笛を吹き始めた。

 大きな風の流れから、ほんのひと筋ぶんだけ、こちらに来るように誘導するのだ。

 感覚としては、大きな束になっている糸から、一本だけひっぱって来るのに近い。

 はっきりとした形を作っているわけでもないものを、崖の内側へと誘導するのは、なかなか難しかった。

 しかし、ティシャはのんびりと待っていてくれる。

 はっきり物は言うし、動きときはてきぱきしているし、そういうタイプの人間はシルフィの母国にもいた。

 ただ、たいがいは性格もきついというイメージが強かった。

 しかし、ティシャはそうでもないらしい。

 この新しい友だちが、シルフィはいっそう好きになった。

 その気持ちが、身体にも伝わったのだろうか。

 いつの間にか固くなっていた筋肉が解れ、指笛の音も大きくなるうえ、広がりのあるものへと変わっていった。

 するとようやく、導いた風が、水面に触れた。

 そこから、同心円の水紋が広がる。

 そして……。


 ぽぉぉうぉん。


 不思議な音が聞こえてきた。

 それは予想していたより、上のほうから聞こえた。思わずティシャに問いかける視線を投げると、説明してくれた。


「木のなかが空洞になってるだろ? そこを伝って、音が上から出てくるんだよ」


 ぷぁぁぁぁん……。


 今度は違う木から、音が聞こえた。


「さっきのと、違うね」


「木によって違うんだよ。内側がまったく一緒の木なんてないからね」


 それからが圧巻だった。

 最初の木に近い順から、色々な木が音をたて始める。

 それらは重なりあい、影響しあい、不思議なハーモニーとなって、崖に囲まれた内部に響く。


 ぽぉぉうぉん……。


 ぷぁぁぁぁん……。


 からからからから、からから……。


 ふぉうふぉうふぉう……。


 シルフィは以前大道芸で見た、水を入れたコップを並べて叩いて、音楽を演奏していたのを思い出した。

 なんだか、それに似た音に感じる。

 規模は、もっと大きいが。

 ティシャは瞳を輝かせながら、飛び跳ねた。


「こんなに音が鳴ってるの、初めてだよ! あんた、すごいね!」


 充分な風が呼び込めたと判断し、シルフィは指笛をやめた。

 そして、ティシャの横に並んで、同じように木々のたてる音に聞き入った。

 それはまるで、大きな円形の楽器のなかにいるようだ。


「よぉし。あたしもじゃあ、技を披露しちゃおうかなあ」


 しばらく聞き入ったあと、唐突にティシャが言った。

 そして、見えないように、服の縫い目の間につけられたポケットから、なにかを取り出した。

 手のひらのなかに握りこめるサイズの、金属製の細長い筒。

 見せてもらうと、片側は少し尖っていて、小さく穴が開けられ、キャップがついている。

 反対側は、蓋状になっていて、なにかをそこから入れられるようになっていた。


「なに、これ……?」


「まあ、見てな」


 ティシャはキャップをはずし、その筒状のものを、たいまつのように空中に掲げた。

 すると、穴の先から、白色の粉が出てきた。

 あたりを吹く風に乗り、帯状に伸びていく。

 それが一定の長さになると、筒の口を指の腹で塞いで、色の帯が長くなるのを止めた。

 まるで、糸を切るようだ。

 そして空中に浮いた色の筋に向かって、呪文を唱える。

 すると、驚いたことに一瞬で筋は形と色を変えた。

 そして気がつくと、鮮やかな青色の蝶の形をした線になっていた。

 シルフィからすると、空中という画用紙に、いきなり絵が描かれたような感覚だった。

 ティシャはその作業を何回か繰り返し、大きさや色も変化に富むようにする。

 気がつくと窪地は、木から鳴る音と、風に浮かんで流れる、蝶を(かたど)った色の線が飛び交う、なんとも不思議な光景の場所になっていた。

 粉の色はどれも派手で、それが陽ざしを反射してきらきらと光る。

 思いもかけなかった情景に、興奮して思わず叫んでしまった。


「ティシャ、こんな魔法使えたんだ!」


「そうさ、すごいだろ! 父ちゃんに教わったんだ、まだこの模様しか作れないけど!」


「お父ちゃんもできるんだ」


「そうだよ。この世界で、父ちゃんとあたしだけができるんだよ。いっしそうでん、っていうやつらしいよ」


 誇らしい表情のティシャが胸を張る。

 一子相伝(いっしそうでん)というのが、秘伝を自分の跡継ぎたったひとりにしか伝えない、という意味なのは知らなかったが、それがなにかすごいことなのだとは、ティシャの表情からわかる。

 すごい友だちができたものだ、と、シルフィは自分まで誇らしくなり、また目の前で起きていることに見入った。

 半分閉じているような空間で、自分が操る風が遊ぶように吹き、不思議な音が鳴り響き、きらきらと輝く蝶の絵が飛び回っている。

 まるで、暖かい日の昼寝で見る夢のよう。


「こんなの、いつも持ち歩いてるんだ」


「そうだよ。あたしらは、色を操る部族だからね。こういったものは、身体の一部みたいなものなのさ」


 シルフィとティシャは、何度も顔を見合わせては笑った。

 すばらしい景色を見ているだけでなく、それを共有する相手がいることが、とても嬉しかったのだ。

 やがて、日が傾き始める。

 帰り支度をして、また危険な崖を超え、帰路につこうとしたときだ。

 ふいに、誰かの声が聞こえた気がした。


「今の……」


 ティシャも首を傾げながら訊いてきた。

 頷き返し、足を止めてあたりを見回す。

 しかし、見えるのは岩ばかりだった。


「気のせいだったのかな」


「うーん。こんなとこに人なんてめったにこないはずだしね」


 そう結論づけ、歩き出そうとしたところで、今度こそはっきり、人の声が聞こえた。

 今度は、調子までわかる。

 誰かが、怒鳴っている声だ。

 ただ、現地語なので、シルフィには言葉の意味まではわからない。

 それでティシャを見ると、眉間に皺が寄っていた。


「隠れよう」


 そう言って、近くの大きな岩の陰に促した。


「どうしたの」


「嫌な話をしてる。女のほうが値段が高い、とかそんな話」


「値段?」


「しっ……」


 ティシャがそっと顔を出して窺う先を、シルフィも見た。

 思わず、息を飲む。

 怯えた顔をした若い女性が二人、太い棍棒を握った体格の良い男二人に、追い立てられるように歩いていた。

 怖れに足がすくむのか、何度も転びそうになり、そのたびに男たちに怒鳴られている。

 ひどいときは、棍棒で殴られてさえいた。

 すぐにシルフィは飛び出しそうになったが、ティシャに止められた。


「だめだよ」


「だって」


「ちゃんと様子をみなきゃだめだ」


 その言葉に、シルフィは動きを止めた。

 どうやら、放っておけない気持ちは、ティシャだって同じらしい。

 だがしばらくすると、、連中の声が、急に小さくなった。

 気配を窺ったあと、顔を突き出してみる。

 すると、大きな岩の陰に、洞窟の入口が隠れていたのがわかった。

 声は、今ではそのなかから聞こえてくる。

 ティシャと一緒に、岩伝いに身を隠しながらそっと忍び寄ってみた。

 外に見張りはいない。

 入口から内側を覗いてみると、奥のほうで、かすかな灯りが見えた。

 二人は顔を見合わせ、頷き合う。

 できるだけ気配を消しながら、中に入った。

 暗い壁沿いを慎重に、灯りの見える方向へと進む。

 通路は、下へと軽く傾斜していた。

 しばらく行くと右にカーブしていたので、誰かとかち合ったりしないように、止まってまずは耳を澄ませる。

 声が反響していた。

 さっきの二人組だろう。

 内容まではわからなかったが、下卑た調子は、あまり聞いていて気持ちのいいものではない。

 おそるおそる顔だけ出して、奥を見てみる。

 そこには、灯火がひとつだけ置かれただけの、暗い空洞があった。

 そこに、大きな檻が四つ置いてある。

 暗いので判別があまりよくできないが、なにかが入っているようだった。

 例の二人組のうちのひとりが、嘲り笑いをしながら、格子に何度も蹴りを入れている。

 なか中にいるものを、脅しているように見えた。


「おい、帰るぞ」


 用事を済ませたらしい奥の男が、手前で蹴りを入れていた男へと声をかけた。

 ティシャとシルフィは、あわてて通路を忍び足で戻る。

 外に出ると、いそいで近くの岩陰に、身を隠した。

 二人組が足早に出てきた。

 その姿が、すっかり見えなくなるまで待つ。


「どうする」


 シルフィが話しかけると、ティシャは真剣な表情で答えた。


「最近、人が急にいなくなることが多いんだ。こいつらのせいなのかもしれない。あたしは確かめに行くから、あんたはひとりで帰んな」


「でも、あんたを放っておいて帰るなんて、できないよ」


 シルフィの言葉に、意外そうな顔をした。


「あんたはよそ者だろ。これは地元の問題だ」


 ティシャの言葉に、つい、市場に行く途中でのことを思い出してしまう。


「あんたも、よそ者は口を出すな、って言いたいの」


 傷ついたように言うシルフィに、ティシャは驚いたようだ。


「違うよ。なにもわざわざ、こんなリスクの高いことにつきあうことないって意味だよ」


「でも、友だちだろ」


「あんたはそれでいいのかい」


「うん。確かめに行くだけだろ。事情がわかったら、大人を呼びにいけばいい」


「ああ。ありがとう。助かるよ」


 そう話が決まると、二人はすぐに洞窟へと、用心しながら引きかえした。

お読みいただきありがとうございます。

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