罰ゲーム五個目⑪
「あっと、ごめん。
風邪ひいちゃうね」
「急ぎましょう」
「サッパリしましたわ」
「二重の意味で?」
「それは言わぬが花ですわよ、キララさん」
「えへへ。
さてと、どうしようか、マリア」
「宇津路さん、まだ、集中していますかしら?」
「どうだろ。
終わったら、レインにメッセージを送る、って言ってたけど・・・」
「入ってますか?」
「まだメッセが入ってないね」
「では、まだ描いていますのね」
「だろうね。
あ、翡翠からのメッセージ」
「ホントですわね。
まぁ、翡翠さん、また、大会で優勝なさったのね。
トロフィーを掲げてますわ」
「凄いね、翡翠。
これで何個目だろ、ゲットしたトロフィー」
「今月で三個目ですわね。
さすが陸上部のエースですわ」
「翡翠、また、うちの部室に飾るのかな?」
「翡翠さん、その手のモノに対する執着が低い御方ですから、下手をすると、物置などに、ポイッしちゃう、と石井部長が嘆いてましたわ」
「石井先パイも大変だねぇ。
物を大事にしない後輩がいると」
「物は大切に扱うのですけど、トロフィーや賞状となると、途端に興味が失せる、と当人が仰ってましたわ」
「アタシも聞いた事あるかも、それ。
まぁ、こんだけゲットしてたら、特別感も薄まっちゃうのかな。
マリアとかは、ちゃんと、家に飾ってたよね」
「えぇ、専用の部屋がありますわ」
「さすが金多家。
コンクールのトロフィーを飾る部屋があるんだ、お屋敷に」
「そろそろ、二つ目の部屋を用意しないといけませんの」
「マリアが言うと、不思議と傲慢に聞こえないから不思議だね」
「宇津路さんは、どうなんですの?」
「ギンちゃんの場合、描いた絵をコンテストに出したりしないから、持ってるトロフィーは2個くらいだったかな?
多分、ギンちゃんの部屋の棚に置いてあった気がする」
「宇津路さんがコンテストに出品したら、確実に最優秀賞を獲れてしまいますのに」
「だからじゃない?
元々、目立つのが好きじゃないって言うか、周りから妬みの視線を向けられるのに辟易してるし、ギンちゃん」
「確かに、他の美術部の部員さん達は、宇津路さんに実力で勝てないのを実際は認めているクセに、つまらないプライドに固執して、才能に嫉妬している感じですわね」
「言うじゃん、マリア」
「本音を言えば、私も、宇津路さんの陰口をコソコソ言っている、あの方達は好きじゃありませんもの」
「アンタには負けないって、真っ向から喧嘩を売ってくる真弓みたいなタイプもいるけどね。
まぁ、ぶっちゃけ、ギンちゃんの眼中には入ってない感じだけど」
「宇津路さんの場合、人当たりは良いですし、交友能力も人並みですけど、いざ、絵画が絡むと、相手を、その人が描く絵で覚える、覚えない、が決まりますものね」
「ぶっちゃけ、うちの美術部で、ギンちゃんに顔と名前を憶えられている部員、一人もいないんじゃない?」
「さすがに、一人くらいは・・・」
「ま、ギンちゃんが興味ないなら、アタシたちも関心は無いけどね」
「そう言われてしまうと、確かに、と言うしかありませんわね」
「それはさておき、ギンちゃんが集中している時に邪魔はしたくないなぁ」
「私も、あの空気の中に飛び込むのは御免被りますわ」
「アタシも、ギンちゃんの為なら、例え、火の中水の中でも飛び込めるけど、あのピリついた部屋には入る勇気がないなぁ」
「あれほどの集中力を発揮して絵を描ける宇津路さんは、やはり、素晴らしい才能の持ち主だと思いますわ」
「激しく同意だね、それは。
ギンちゃんが、絵を出品しないのも、自分が描きたいモノだけ描きたいってスタンスで、大会のテーマっていうか、審査員の好みに合わせるのが好きじゃないからだしね」
「媚びぬ高潔さが宿っている絵だからこそ、私のお父様のような、審美眼のある人に支持されるのでしょうね」
「しれっと身内を褒めたね、マリア」
「あら、バレてしまいましたわ。
では、キララさん、宇津路さんからメッセージが来るまで、どうしましょう」
「今、シャワーで汗と愛液を流したばっかりだから、ダンスの練習を再開ってのもアレだから、先にお昼ごはんを食べちゃう?」
「よろしいのですか?」
「元々、ギンちゃんには、俺の事は気にせず、先に食べてていいよって言われてるから、問題ナッシング。
まぁ、今、ギンちゃんが超集中タイムにブッ込んでるから、お昼ごはんは自分達で作らないと、だけど」
「ダンスの練習中、クラッカーしか食べていなかったので、私、お腹がペコペコですわ」
「アタシも、もう、お腹と背中がくっつきそう」
「では、お昼ごはんにいたしましょう、キララさん」
「マリアの家の冷蔵庫、何が入ってる?」
「ちょっと見て来ますわ」
「アタシの方もチェックしてみよ」
「おかえり、キララ。どうだった?」
「ベーコンと卵と玉葱が入ってましたわ、キララさん」
「アタシの方はね、お惣菜のコロッケと野菜がいくつか入ってた」
「うーん、この食材だと何が作れるかな・・・あ、思いついた」