罰ゲーム一個目⑦
アタシも、割と早く起きる方なんだけど、ギンちゃんは、いつも、アタシより早く起きて、自分とアタシの分の朝ご飯を作ってくれている。
ギンちゃんの作る朝ご飯を食べると、お昼休みまで元気になれるから、アタシはウキウキしながら、ギンちゃんがベランダで育てている花に水をあげ、フローリングをモップで拭いてから、テーブルに朝ご飯が並ぶのを、お行儀よく待つのだ。
まだ、ギンちゃんが作ってくれた晩御飯を食べてもいないのに、もう、明日の朝ご飯が楽しみになっている自分に、アタシは呆れてしまう。
でも、そのおかげで、自分の汚い一面を見て、ウジウジせずに済んだ。
「キララちゃん」
アタシがそんな事を考えている事に気付いていたのか、それとも、気付いていなかったのか、ちっとも分からない表情のギンちゃんに、アタシは名前を呼ばれ、身体がピョコンッ、と反応してしまう。
「なぁに、ギンちゃん?」
「ちゃんと、今日、出された課題、持ってきてね」
「っっぅ」
まさかの言葉に、アタシはギチッと固まってしまった。
そんなアタシの硬直に、ギンちゃんは「はぁ」と重い溜息を吐く。
「でも、土日って二日、お休みなんだし、今日からやらなくても良くない?」
アタシがつい、そう言ってしまうと、ギンちゃんは眉を顰めた。
声を荒げて怒鳴るようなタイプでないからこそ、ギンちゃんの、この表情は、ほんと、心臓に氷の杭が刺さったみたいな気分になる。
「中学生の時、そうやって、余裕をブッこいて、何度も、俺に日曜日の夜、泣きついてきたよね」
「うっ!?」
「今日、出された課題は量は多いけど、そこまで難しいものじゃないんだから、キララちゃんが本気になれば、明日には、ちゃんと片付くよ。
俺も手伝うから、課題は持ってきて」
「・・・・・・はーい」
半ば降参するように、アタシが右手を高々と上げ、間延びした声で返事をすると、ようやく、ギンちゃんは眉間に寄せていた皴を消してくれた。
そうして、おもむろに、アタシの頭へ右手を伸ばし、「素直でよろしい」と優しく撫でてくれた。
(くぅぅぅ、ギンちゃんに頭を撫でられると、気持ちよすぎるッッッ)
だけど、ナデナデしてくれているギンちゃんの大きく、男らしい手を、アタシの脆弱な精神力では打ち払えない。
仕方ないから、アタシは、ギンちゃんが満足するまで、撫でさせてあげる事にした。
もう、しょうがないなぁ、と思った矢先に、ギンちゃんが手を頭から離してしまったものだから、アタシは呆然とするしかない。
「じゃあ、待ってるね」
そう言って微笑むと、ギンちゃんは、自分の部屋に入ってしまい、その場に置いて行かれたアタシは膝から崩れ落ちそうになるけど、何とか堪え、自分の部屋に入る。
でも、やっぱり、耐え切れなくて、アタシは玄関でへたりこんでしまうのだった。
「ギンちゃん、ヒドい・・・・・・でも、そういうイジワルなトコも、好き」
えへへ、とアタシはギンちゃんの手の感触がまだ、残っている頭に自分の手を乗せながら、鞄を部屋へ放り投げ、制服を脱ぎ散らかして、シャワーを浴びに向かう。
「ふっふーん♪」
少し熱めのお湯で頭の泡を洗い流しながら、アタシは展開はどうあれ、ギンちゃんに頭を撫でて貰えた嬉しさを心の中で反芻しつつ、ギンちゃんが作ってくれるオムライスを想像して、胸を弾ませていた。
グルルルルルル
頭の上に、オムライスをイメージしていたからだろう、アタシのお腹に住みついている虫が、可愛らしい鳴き声で、空腹を訴えてきた。
「あー、お腹ペコペコ」
ボヤきながら、アタシは腹の虫を宥め、泣き止むように、お腹を擦る。
(最近、筋トレ、ちょっとサボってたから、ムニュムニュしてきたかも・・・)
少し険しい表情で腹の肉をプニッと摘まんだアタシは、シャワーを止め、湯気で曇っていた鏡を拭き、自分の体を映して見た。
パッと見ただけだと、アタシのナイスバディは綻んでいない感じ。
でも、お腹を触られたら、ちょっとヤバイかも・・・
「まぁ、ギンちゃんに、お腹を触られる事なんて、まず、無いんだけど」
ボヤきながら、アタシは、ギンちゃんに、お腹よりも触って欲しいおっぱいへ手を伸ばした。
水を珠と弾くほど張りに満ちた、アタシのおっぱい。
マリアには大きさでは負けているけど、弾力と揉み心地、あと、感度では肩を並べられている、と自信を持ってるアタシ。
でも、それは、好きな人に触って貰えなきゃ、揉んで貰えなきゃ、弄って貰えなきゃ、何の意味もない強味。
「ギンちゃん、おっぱい星人じゃないのかな~」