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宇津路くん、アソびましょ  作者: 『黒狗』の優樹
罰ゲーム四個目
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罰ゲーム四個目(28)

 「まぁ、確かに、私やマリアのサイズだと、手ブラでも、ほとんど出ちゃうよね」


 「恥ずかしすぎますわ、さすがに・・・」


 顔を真っ赤にした私が唇から弱々しい言葉を溢してしまうと、宇津路さんはスッと目を細め、隙間から冷たい光を発します。

 思わず、ゾクッとしてしまったのは、私だけではないようです。

 キララさんもビクッとしたのが視界の端に映ったので、私は全身に走った寒気に、「ひゃあっ」と情けない声を出さずに済みました。

 けれど、醜態を晒さずに済んだ、その感謝をキララさんに告げる余裕など、私にはありませんでした。

 正確に言えば、目線でキララさんに「ありがとうございますわ」を示そうとしたのと同時に、宇津路さんが漏らした「ふぅ」によって消し飛んでしまったのです、余裕が。


 「金多さん、恥ずかしくて出来ないなら、ギブアップする?」


 「!?」


 まぁ、なんて意地の悪い聞き方をしてくるのでしょうか、宇津路さんは。

 そんな言われ方をしてしまったら、金多家の人間として逃げられる訳がありません。


 「やってやりますわよ、指ブラァァァッッ」


 「マリア、あんた、バカすぎ・・・」


 キララさんが呆れ顔を浮かべた事で、うっかり激情してしまった私はハッと我に返りますが、人間、一度吐いた唾は飲めません。

 いえ、まぁ、宇津路さんの唾液だったら、何ℓでもゴクゴクと飲めますわ、きっと。

 宇津路さんの唾液が何味なのか、その興味は尽きませんが、今、私が直面すべきは現状。

 もっとも、あぁ言ってしまった以上、今さら、出来ない、とは言えません。

 自分の浅はかさを反省するのは後回しです。


 「さすが、金多さん」


 パチパチとリズム良く手を打つ、愉悦たのしそうにSっ気丸出しの笑顔を浮かべる宇津路さんに、私とキララさんはうっかり、見惚れてしまいます。

 再び、我に返った私は、おずおずと左手を上げます。


 「ん、どうしたの、金多さん?」


 「服は脱いだ方がよろしいですか?」


 私の悪足掻きじみた質問に、宇津路さんは、今度は目を驚きで見開き、キララさんは私の頭にチョップをしてきました。


 「ぶべっ」


 「真っ裸にならなかったら罰ゲームにならないでしょ!!

 アンタが服の上から、胸を指で押さえているだけの格好のドコを見て楽しめばいいのよ、ギンちゃんは」


 「だって、恥ずかしいんですもの」


 「やるって自分で言ったんだから、つべこべ言わずに、さっさと脱ぎなさいよッッ」


 「ちょ、待って、キララさん。

 せめて、自分で、あと、ここ以外で服は脱がせてくださいな!」


 私を産まれた時の姿にしようとしてくるキララさんに、私が必死になって抵抗していると、そんな私達をしばらく、微笑みながら眺めていた宇津路さんが、「コホンッ」と小さな咳払いをしました。

 その瞬間に、すぐさま、私の服を引ん剝こうとしていたキララさんは掴んでいた手を離し、頭上に挙げたではありませんか。

 キララさん、本当に宇津路さんを怒らせるのが恐いんですのね。

 幼馴染として付き合いが長い分、間違いなく、怒った宇津路さんを目撃した事があるのでしょう。

 どれほど怖いのか、不安を覚えると同時に、私は私の知らない宇津路さんを知っているキララさんが羨ましくなります。

 そんな私のHカップのモヤモヤを消し飛ばすためだったか、それは定かではありませんが、宇津路さんは再び、小さな咳払いをします。

 今の咳払いには、警告の意味合いが無かったからでしょう、キララさんはビクッとしません。


 「ギンちゃん、何本の指でやらせる?」


 「!?」


 キララさんの言葉に、私はこれでもかと瞠目してしまいます。

 

 (何、とんでもない確認をしてくれてるんですの!?)


 恐る恐る、宇津路さんに目を向ければ、形の良い顎に手を当て、考え始めてしまっています。

 頭の片隅で、指を四本使えば、胸の先はしっかりと隠せて、辱しめがちょっとでも軽減できるのでは、と考え始めていただけに、キララさんに対するムカムカは私のHカップを膨らませます。

 「なら、こうしようか」と呟いた宇津路さんは、おもむろにテーブルへと手を伸ばしました。

 そうして、宇津路さんはそれを私に向かって、指でピンッと軽やかに弾き飛ばします。

 威力を抑え、軌道もしっかりと計算してくれたおかげで、反射神経が鈍臭い私でも、それを危なげなくキャッチする事が叶いました。

 開いた両手の中にあったのは、一個のサイコロ。


 「サイコロを使った勝負の罰ゲームだからね、サイコロで決めるのが筋じゃないかな」


 「確かに」


 キララさんは宇津路さんの言葉に納得しますが、当事者である私は気が遠くなりそうです、もう。


 「でも、ギンちゃん、5と6が出たら?」


 「振り直しでいいよ」


 宇津路さんの優しい言葉に、私はホッとします。

 まぁ、本来であれば、安堵するような状況ではないのですけど。

 ここでゴネても時間の無駄ですわね、すっかりと感覚がバグっていた私は、「4が出てくださいな」と全力で祈りながら、手の中のサイコロをテーブルの上に転がします。

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