罰ゲーム四個目(26)
キララさんは、私のHカップアタックを真正面から受けて、一瞬こそ体勢が崩れかけましたが、すぐさま持ち直して、体を戻す動きを利用する形で勢いを付け、私へGカップを真っ向から衝突させてきました。
カップ数は私の方が上ですけど、キララさんは読者モデルとして、日々、自分の肉体をしっかりと磨いているので、パワーで言ったら私に勝っています。
危うく、私は吹き飛ばされか、尻餅を突いてしまいそうになりましたが、どうにか堪えました。
ここで、私だけお尻を床に着いてしまったら、負けるに等しいのですから。
「アタシが、いつ、ギンちゃんに褒められようと、アタシの自由でしょ。
私のハッピータイムを邪魔するってんなら、マリアが相手でも容赦しないよ」
「それは、こちらの台詞ですわよ、キララさん。
まだお若いのに、もう物忘れが激しいようですわね。
今は、私と宇津路さんはゲームの真っ最中ですわ」
「マリアはギンちゃんに負けたでしょ」
「だからこそ、ですわ。
罰ゲームを潔く受けるのは、敗者の義務。
その高潔な責務を邪魔するのであれば、キララさんでも許しませんことよ」
お互いのプライド、いえ、ハッキリ言ってしまえば、宇津路さんへの「好き」を曲げられませんので、私達は自慢の肉丘を「ぐにゅぬぅ」と歪むほど全力で押し付け合います。
私としては殴り合いも辞さない覚悟だったのですが、先に動いたのはキララさんでした。
「ギンちゃん、アタシとマリア、どっちが可愛い?」
「キララちゃんと金多さん、二人とも、俺からすれば十分に可愛いよ。
もっとも、そんな二人が喧嘩するのは、とても悲しいけど」
普通であれば、怒りの炎にガソリンを投げ込むだけでなく、大爆発に巻き込まれる事が確定する情けない言動ですけれど、宇津路さんが口にすると、あら不思議、私達は彼の前で醜態を晒してしまった事が恥ずかしくなってしまいます。
「ごめん、マリア」
「私こそ申し訳ありませんでした」
仲直りの握手をした私達は、友情が崩壊せずに済んだ、とお互いに安堵の笑顔を浮かべます。
絆が修復されたので、私達はツーショット撮影をしました。
三枚ほど撮ったところで、私は、ふと疑問が浮かびます。
「ところで、キララさん、この犬耳のカチューシャ、貴女の私物ですの?」
「うん、そうだよ。
前、動物園でグラビア撮影をした時に使ったモノを欲しがったら、スタッフさんがくれたんだよね。
今度、皆でパーティーをした時、お揃いみたいな感じで着けようと思ってさ、この猫耳とあと3つ、売店で買ったんだ」
「あら、犬耳と猫耳以外のカチューシャもあるんですの?」
「あと3つは、パーティーの時のお楽しみね、マリア・・・ギンちゃん」
悪戯を企んでいる魔女っ娘のように、キララさんは自分の潤み、張りのある唇の前に人差し指を真っ直ぐに立てました。
了解ですわ、と私が指でOKサインを作る一方で、俺もそのカチューシャを着けるのは確定なんだ、と宇津路さんは苦笑いを浮かべていました。
(きっと、宇津路さんなら、どんな獣耳でもお似合いになりますわね)
妄想を膨らませながら、私は頭から”生えている”犬耳に、そっと触れます。
「ところで、宇津路さん」
「どうかした?」
「キララさんが、このカチューシャを持っていたおかげで、一つ目の罰ゲームは無事に完了しましたわ。
二つ目の罰ゲームを決める前に、このカチューシャは取った方が良いでしょうか?」
私の疑問に、宇津路さんは「そうだね」と眉間へ皴を寄せました。
眉目秀麗な宇津路さんが、そのような思考に耽る表情を魅せると、ますます、耽美しさが際立ちますわね。
その形容しがたいレベルの美麗しさを肌で感じていたのは、当然、私だけではありません。
私と撮ったツーショットの具合を確認していたキララさんは、いつの間にか、熟考している宇津路さんをスマフォで撮影しているではありませんか。
いくら、宇津路さんから、度が過ぎなければ撮って良いよ、と許可を事前に貰っているとは言え、遠慮しませんわね、キララさん。
まぁ、私もキララさんに倣って、宇津路さんの思案顔を一枚だけ撮影したのですから、同罪ですわ。
そうこうしている内に、宇津路さんは結論をお出しになったようです。
「全部、終わるまで着けっぱなしにしておこうか、金多さん」
敗者は勝者の命令に従うのが絶対ですから、私は頷き返しました。
「では、仕切り直して、二枚目を引きますわ」
「どうぞ」と、優しい笑顔で宇津路さんが真ん中の札山を右手で指し示したので、ドキッとしてしまう私。
気持ちを落ち着かせながら、私は二つ目の罰ゲームを決めるべく、真ん中の札山の一枚上のカードを引き、宇津路さんへ手渡そうとしますが、それをキララさんが横から掻っ攫い、先に内容をチェックなさいました。
「うわっ、マジ?」
「え、一体、どんな罰ゲームが書かれてましたの!?」
焦る私にキララさんが見せたカードに書かれていた罰ゲーム、それは「指ブラ」でした。