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宇津路くん、アソびましょ  作者: 『黒狗』の優樹
罰ゲーム四個目
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罰ゲーム四個目(21)

 今、このゲームのプレイヤーは、私と宇津路さん。

 私たちがお互いに納得した以上、外野である自分は嘴を突っ込めない、と思ったのか、キララさんは呆れながらも、静観してくださります。

 まぁ、この流れを起こしたのも、キララさんなんですけど。


 「ところで、宇津路さん、申し訳ないんですが、私、喉が渇いてしまったので、お茶のお代わりをいただけますか?」


 「もちろん」と笑顔で頷いた宇津路さんは、空になったティーポットを片手に、キッチンへ向かいます。

 そこまで長い時間ではなかったにしろ、宇津路さんと正対する事は、様々な意味合いで緊張を無意識に強いられていたようで、私は自然と息を漏らしてしまいます。


 「マリア、勝ち目はあるの?」


 「やるだけやりますわ」


 キララさんにそう聞かれた私はサイコロを手に取って、ギュッと握り締めました。


 「お待たせ、金多さん」


 宇津路さんがお茶をティーポットに満たして戻ってきたので、私はサイコロを元の場所へ戻します。


 「ありがとうございます、宇津路さん」


 カップにお茶を注いでくれた宇津路さんに小さく頭を下げた私は、美味しいお茶で唇と喉をしっかりと潤わせ、勝負への英気を養います。


 「じゃあ、最終ターン、開戦はじめようか」


 宇津路さんの言葉に頷き、私たちは手元にある5個のサイコロをお椀の中に投げ入れます。

 これまで以上に大きい、カランコロン、と10個のサイコロがお椀の中で転がる、静かな部屋に響きます。

 サイコロが止まるまで、私は宇津路さんの顔をジッと見つめます。

 お椀に目を落としていた宇津路さんは、私が見つめてきているのに気付き、視線を上げると、穏やかな笑みを浮かべます。


 (は、破壊力ありますわ、宇津路さんのスマイル?!)


 好き、と自覚した御方の微笑が、これほどまでに高い”殺傷力”を持っているなんて、ちっとも知らなかった私はHカップに守られている乙女心シンゾウがギュッと痛みます。

 そんな私の頬の赤らみを見たキララさんは、最初こそ、怪訝そうな表情でしたが、それに気付いたのか、ハッと目を見開きました。

 けど、ゲームの途中だからか、声を発しませんでした。

いつも溌溂としていて、自分のやりたい事を優先する生き方を全うしているキララさんですが、何だかんだで、人に気遣いも出来る性格なのです。

 自慢のお友達の優しさに感謝し、何とか、動悸を落ち着かせた私は、改めて、宇津路さんの観察に努めます。


 (くっ、まるで顔色が変わっていませんわ。

 それとも、気付いていないのかしら?

 だけど、残念でしたわね、宇津路さん、私は気付きましたわよ、貴方のイカサマに)


 宇津路さんが優勢である理由、それは、サイコロにあったのです。

 正確に言うのであれば、私が振っていたサイコロに。

 以前、お父様から聞いた事があります、サイコロを使ったギャンブルでは、特定の面に重心を傾ける事で好きな数字を出せる、イカサマのサイコロが使われる、と。

 間違いなく、私が先程まで振っていたサイコロにも、その仕掛けが施されていたのです。

 だから、あんなにも何度も同じ数字が出続けたのでしょう。

 イカサマを仕掛けていた側の宇津路さんは、当然ですが、最初から、私のサイコロの数字が解っていた、だから、的中させる事が出来たに違いありません。

 そりゃ、簡単でしょう、私のサイコロの数字が解っていれば、それに自分のサイコロの数字を足すだけなんですから。

 イカサマに気付いた時、怒りは湧きました。

 もちろん、そんなズルをしていた宇津路さんに対する怒りです。

 けど、その怒りは、すぐに収まり、異なる怒りが湧きました。

 怒りの矛先は、そう、私自身です。

 ゲームで勝つ為に、あらゆる手段を使い、策を講じるのは、至極当然の話です。

 ケースバイケースでしょうが、今回は、サイコロのイカサマに気付けなかった私が大マヌケだったんです。

 だからこそ、私はイカサマに気付いた時、あえて、これを指摘しませんでした。

 イカサマを仕掛け返す、宇津路さんに、と決意したからです。


 「さてと、何が出ているかな」


 サイコロが止まったので、宇津路さんはお椀に被せていた紙を退かそうとしますが、私はそれを手で制しました。


 「待ってください、宇津路さん」


 「・・・何かな、金多さん」


 このタイミングで、私が声をかけてきた事に不穏さを覚えたのか、ほんの些末ですが、宇津路さんは緊張を見せます。


 「私の今の所持ポイントは、4pですわね」


 「そうだね、罰ゲームを3個にするって条件で」


 「では、その4pをオールインして、宇津路さんのサイコロ、5個の内、4個の開示を求めますわ」


 「!?」


 「ちょっ」


 明らかに、宇津路さんの表情は変わり、キララさんも慌てふためきます。

 しかし、私は冷然とした態度を崩しません。

 崩さないよう努めているのではなく、今、私のHカップの中には、不安や恐怖など一欠けらもありませんので、崩れる心配など無いのです。


 「さぁ、紙を退かし、宇津路さんのサイコロの数字を教えてください」

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