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宇津路くん、アソびましょ  作者: 『黒狗』の優樹
罰ゲーム四個目
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罰ゲーム四個目⑳

 「ねっ、ギンちゃん、そうしようよ!!」


 私が宇津路さんの気まずそうな視線で手をシュバッと下げたのと、私に殴られそうになっていたのに、まるで気付いていないキララさんが私の方に振り返ったのは、ほぼほぼ同タイミングでしたわ。

 キララさんを守る為ならば、誰であっても、容赦はしないのが宇津路さん。

 キララさんがムチャクチャな事を言い出したのが理由とは言え、もし、私が衝動的に、例え、非力でダメージをほぼ与えられないチョップであったとしても、キララさんの頭部に一撃を喰らわせてしまっていたとしたら、きっと、いえ、絶対に、宇津路さんは私を殴る事を躊躇しなかったでしょう。

 

 (もしかすると、私が宇津路さんに殴られそうになったら、キララさんが身を挺して庇ってくれたかもしれませんけど・・・)


 そんな事を考えはしましたが、幸い、未遂で終わったから、私は無事です。

 まさか、私が物理および生命的な意味合いで絶体絶命になりかけていたとは微塵も気付いていないキララさんは、私が胸を撫で下ろしているのに気付き、怪訝そうな表情を浮かべます。


 「どうしたの、マリア」


 「いえ、何でもありませんわ。

 それよりも、いきなり、最終ターンだけ、的中させたら10pになるだなんて、ムチャクチャすぎですわ」


 「えー、バラエティのクイズ番組だったら、ど終盤で逆転タイムが来るのはお約束だって。

 ねぇ、ギンちゃん」


 「私、そういう類の番組は視聴しませんから詳しくないのですけど、キララさんの仰っている事は事実ですか、宇津路さん?」


 「まぁ、全部が全部じゃないけど、出演者のリアクションで視聴者を楽しませるって目的を最優先にしている感じのバラエティだったら、そういう展開が用意されているのは不思議じゃないと言うか、お約束、いや、鉄板だけどね」


 苦笑いを浮かべながらも、宇津路さんがキララさんの意見を否定しなかったので、私は考え込みます。


 (2pのままでは、同点にしかなりません。

 けど、もしも、獲得ポイントを10pにして、合計数を的中させる事が出来れば、宇津路さんに勝つ事も出来ますわ・・・)


 ギュッと目を閉じて熟考かんがえ込んでいる私を、宇津路さんとキララさんはジッと見つめます。


 (私は・・・・・・宇津路さんに勝ちたいですわ!!

 詳しくは聞いてはいませんが、キララさんも、まだ、宇津路さんから勝利を掴む事は出来ていないハズ。

 だから、私は、キララさんより先に、宇津路さんに勝ちたいですわッッ)


 自分でも驚くほど、私の中には、勝利への渇望があったようです。

 歌のコンクールでは、自分の努力を全て出し切る、それだけを考えて臨むようにしていますので、てっきり、私は「勝つ事」に対する執着が薄い方が思っていたんですが、どうやら、そうでもなかったようですわ。

 思っていたよりも、ワガママな自分がいる、と思いがけないタイミングで知る事になった私は、つい可笑しくなり、「フフッ」と笑い声が漏れてしまいます。

 そんな私の笑い声で、お二人が戸惑ったのを感じ、目を開けた私は「思い出し笑いですわ」と自分が迂闊に溢した笑みを誤魔化す。


 「この状況で思い出し笑いって余裕があるじゃん、マリア。

 それで、ギンちゃん、10pにしてもいいよね?」


 (あっ、キララさん、近すぎますわ!!)


 「そうだね・・・」


 キララちゃんにギュワッと距離を詰められ、キスでもする気なんじゃ、と私が焦ってしまうほど、顔を寄せられたにも関わらず、平然としている宇津路さんは、シャープな顎に手を当て、数秒ほど険しい表情を浮かべます。

 その御顔が、実に端麗で、私とキララさんは、頬を赤く染め、見惚れてしまいました。

 私達に凝視されていたのに気付いていたのかいないのか、読み取れぬ宇津路さんが、おもむろに、右手の人差し指を真っ直ぐに立てます。

 

 「俺が出す条件を、金多さんが一つ飲んでくれるなら、この最終ターン、的中の場合に獲得するポイントを2pじゃなくて10pにしてもいいよ」


 「ッッッ」


 「マリア、飲むよね、条件!!」


 「だから、どうして、キララさんが勝手に決めるんですの。

 何ですの、その条件って?

 聞かない事には、飲むか飲まないか、の判断を下せませんわ、宇津路さん」


 冷静な、ではなく、必死に冷静なフリをしている私に、宇津路さんは穏やかに微笑んできます。

 その微笑が、まるで挑発のように感じてしまい、私は憤るどころか、逆に、萎縮しそうになります。


 「負けた場合に引く罰ゲームのカードを二枚にするなら」


 「!!?」


 想定外の条件を出してきた事に、私ではなく、何故か、キララさんの方が息を飲んでいます。

 

 (だから、どうして、貴女が私の代わりに驚くんですの)


 つい可笑しくなってしまいながらも、私は表情を変えないよう、今から出す声が震えないように努めながら、こう返します。


 「条件を飲みます。

 では、罰ゲームのカードを三枚にしますから、私の獲得ポイントを1p増やしてください」


 「ちょっ」


 「取引成立だ」

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