罰ゲーム一個目⑥
「モリイ」から十分ほど歩いて、アタシたちは住んでいるアパートに到着した。
四階建てで、一層に六室ずつ、三室が向かい合う形になっている。
正面玄関はオートロック仕様で、エレベーターも付いているから、二階以上の人も安心だ。
ちなみに、アタシとギンちゃんの部屋は三階だけど、アタシたちは若いし、ギンちゃんが健康に気を遣うタイプだから、エレベーターは余程の大荷物でない限りは、階段で三階まで登っている。
正面玄関のオートロックを解除し、アタシがドアを開けると、買い物した荷物を持っていたギンちゃんがお礼を言ってくれた。
「ありがとう、キララちゃん」
ほんのちょっとした事でも、アタシに、しっかりと「ありがとう」って言ってくれるギンちゃん、ほんと、人間が出来てる。
「どういたしまして。
今日は、何か届いてるかな」
照れてしまったのを、誤魔化しながら、アタシは自分とギンちゃんの部屋のポストを確認する。
ギンちゃんの方には、メガネ屋さんからのDM、つい、この間、アタシと一緒に行った美術館から、来月に開催される特別展のお知らせハガキが入っていた。
そんで、アタシの方は、小箱サイズの荷物が入れられていた。
このアパートのポストは、入れる口が割と大きいので、文庫本サイズまでの荷物なら、すんなりと入るのだ。
何だろう、と思いながら、送り先を見れば、「アニャゾン」と書かれている。
すぐに、アタシは、二日ほど前にネットでポチったパーティーグッズが届いたんだ、と解った。
(思ってたより、早く届いたなぁ)
届くのは明日くらいかな、と予想していたので、私はちょっと嬉しくなる。
(フフフフ、ギンちゃん、今度こそ、首を洗って待ってなさい)
アタシが、とある事を決意しているとも露知らぬギンちゃんは、いつもと変わらず、穏やかに微笑んでいた。
三階までの階段を、ヒョイッヒョイと登っていくアタシとギンちゃん。
ギンちゃんは、荷物を持っているのに、先を行くアタシにまるで置いて行かれない。
しかも、三階まで軽く走るような速度で登ったのに、息がまるで乱れていなかった、ギンちゃんは。
細身な容姿だけど、ギンちゃんは、結構、スタミナがあるし、運動神経も抜群なのだ(ドヤッ)
まぁ、さすがに、十代で、三階までの階段を速いペースで登って、息を切らしてしまう方が少ないだろう。
アタシはちょっとキツいけど、それはスタミナがないからじゃなくて、胸が大きくて、速いペースで登る事で揺れてしまうのだから、仕方がないよね。
三階に到着したアタシとギンちゃんは、各々の部屋の鍵を開ける。
さすがに、アタシだって、いきなり、ギンちゃんの部屋に入ったりしない。
制服から、楽な感じの私服に着替えたいし、その前に、シャワーも浴びたかった。
まぁ、汗を流して、髪を軽く乾かしたら、すぐに、ギンちゃんの部屋に行くんだけどさ。
ギンちゃんも、アタシが来る事が解かっているから鍵はかけないし、アタシはギンちゃんの部屋の合鍵を持っていた。当然、アタシもギンちゃんに、部屋の合鍵を渡していた。
と言っても、基本的に、アタシはギンちゃんの部屋にあるベッドで寝て、朝に起きるので、遅刻を心配したギンちゃんがアタシの部屋に合鍵で入ってきて、起こしてくれる、体を揺らされた拍子に打った寝返りで布団が捲れて、アタシのナイスバディが露わになる、みたいなイベントは発生しないのだ。
そもそも、アタシは寝起きが良い方だから、一回、目覚まし時計が鳴ったら、すぐに起きられる。
寝起きが良いのはギャルっぽくないんじゃ、と思ったけど、ギンちゃんが「ちゃんと起きられて、エラいね」と褒めてくれるから、気にしない事にした。
せっかく、ギンちゃんの部屋で寝起きできて、アタシ自身の寝起きがいいんだから、いっそ、ギンちゃんをギャルっぽく起こしてみようとした事もある。
まぁ、正直に白状すると、ギンちゃんのテントを見たかったの。
でも、ギンちゃんは、アタシより、早く起きるのだ。
やっぱり、アタシの下心に勘付いてるのかな・・・ギンちゃんに、エッチな女って思われてたら、どうしよう。
アタシ、ギンちゃんに嫌われたら、生きていく自信がないよぉ。