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宇津路くん、アソびましょ  作者: 『黒狗』の優樹
罰ゲーム四個目
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罰ゲーム四個目⑲

 「キララさん!?」


 私はその声に驚いてしまいます。

 そんな私の引っ繰り返った声は、玄関先でブーツを脱いでいたキララさんにも届いたようで、「えっ!?」と聞こえて、すぐに廊下を足早に歩いて来る音も聞こえ、間髪入れずに、リビングのドアが開けられ、キララさんが、私と宇津路さんの前に姿を見せました。


 「・・・どうして、マリアがギンちゃんの部屋にいるのよ?」


 キララさんからの戸惑いが滲む声に、私はますます、狼狽えてしまう。

 客観的に見れば、私と宇津路さんは、確かに部屋で二人きりの状態ではあるにしろ、決して、いかがわしい事はしておらず、ゲームに真剣に興じていただけ。

 だから、決して、焦燥アセる必要など、私にはない・・・無いのですけど、いざ、こうなると、パニックになってしまうのが、悲しいし、滑稽ですけど、人間という生き物なのですわ。


 「ギンちゃん?」


 私がアワアワし、オロオロし、オタオタしているのを見て、宇津路さんがスッと右手を挙げたのに気付き、キララさんは彼の方に訝し気な視線を向けます。

 

 「俺が説明するよ」


 宇津路さんがキララさんに、この状況の説明をキララさんにする役目を引き受けてくれたので、私は、思わず、安堵の息を大きく漏らし、Hカップを撫で下ろしてしまいます。

 けれど、いざ、一つのピンチを乗り切ったら、今度は、今、自分が追い詰められている現状に直面する羽目になってしまうのですわ。


 (まさか、ここで、宇津路さんが、また、合計数を的中させてくるなんて)


 ついさっき、安堵が詰まった息を吐き出したのに、今、口から出た息は絶望一色に染まってしまっています。


 (最後のターンを前にして、点差が開いてしまうなんて・・・)


 宇津路さんが的中させ、2pを獲得した事で、ポイント数は5pととなり、3pである私との点数差は2pになってしまいます。

 サイコロの目を知るために1pを消費しなかったので、ダメージは最低限に抑えられているとは言ったって、逆転がキツい状態である事には変わりません。

 どうしたらいいのかしら、と私が頭を抱え、また、絶望色の嘆息を吐いたタイミングで、宇津路さんはキララさんへの説明を終えたようです。


 「なるほどね」


 宇津路さんから説明を聞き終えたキララさんの声に、私は思わず、ビクッとなってしまいます。

 そんな私の怯えたリアクションに対し、キララさんは「何、ビビってんの、マリア」と困ったように笑います。


 「えっと、その・・・申し訳ありません、キララさん」


 「どうして謝るのよ、マリアが。

 大体、悪い事もエロい事もしてないんでしょ?」


 「もちろん、そんな事はしてませんわ!!」


 力強く頷き返した私に、キララさんは満足気に頷きます。

 けれど、何故か、キララさんは私に右手を近づけてきました、悪戯っぽく笑いながら。


 「なら、アタシに『ごめんなさい』って言う必要はナッシング!!

 だから、これは、必要がないのに、アタシへ謝った事への罰」


 「ねっ」と言うや、キララさんは私の額にデコピンをしてきました。

 

 「痛ッッ」


 男性である宇津路さんやお父様、同性ではありますけど、身体能力が私とは桁が違い過ぎる翡翠さんのデコピンと比べれば威力が低かったですけど、やっぱり、不意打ち気味でやられたので、私は痛みを覚えてしまい、咄嗟に額を押さえてしまいます。

 涙目になっているであろう私を見て、可笑しそうにしながら、キララさんは私の額を擦ってくれました。


 「それで、今は、どっちが勝ってるの?」


 「ウッッ」


 私のリアクションで、キララさんは察してくれたらしく、「あぁ、やっぱり」と苦笑いを浮かべます。


 「しかも、次が最後のターンなんですの」


 「なるほど、マリアがジリ貧って訳ね」


 弱々しく頷くしかない私の肩へ、キララさんは手をドシンッと力強く置きました。


 「じゃあ、一発逆転を図るしかないね」


 「え、えぇ、その通りですわ。

 けど、そんな簡単には事が運べませんわ。

 だから、せめて、最終ターンは、私が合計数を的中させて、同点に持ち込みたいんですの」


 同点になれば、延長戦に持ち込むなり、このゲーム自体を引き分けで終わらせる事が可能ですから。

 でも、キララさんは、私の肩へ手を置いたままで、ブンッブンッと首を激しく、左右に振ります。

 その動作に、私は、何となく、不安と言うか、嫌な予感を覚えてしまいます。

 直感的に、私は止めようとしますが、キララさんは迅速はやすぎました。


 「ギンちゃん!!次がラストのターンなんだよね」


 「そうだよ」


 「じゃあ、ラストのターンは合計数を的中させたら、2pじゃなくて、10pにしようよ!!」


 「ちょ、キララさん?!」


 私は、キララさんのとんでもなさすぎる提案に、お目ん玉を引ん剝いてしまいます。

 きっと、翡翠さんや瑠美衣さんだったなら、キララさんの頭を思いっきり、引っ叩いていたでしょうけど、金多家の長女である私には、そんな野蛮な真似は出来ません。

 まぁ、思わず、手は振り上げてしまいましたけど・・・

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