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宇津路くん、アソびましょ  作者: 『黒狗』の優樹
罰ゲーム四個目
68/110

罰ゲーム四個目⑱

 「宇津路さんは、いくつとコールしますの?」


 「俺は25にしておこうかな」


 マリアは、白銀が自分の予想に「+1」してきたので、思わず、表情を固くしてしまう。

 これは、決して、卑劣な行為ではない。

 例え、マリアが「24」と答える前までは違う数字を予想していたとしても、白銀に促される形で、自分から先に言ってしまったのだから、そこでコールする数字を白銀が変えてきたとしても、証拠がない以上、マリアにはそれを責められなかった。

 今更ではあるが、合計数は声に出して言い合うのではなく、紙に書きましょう、と最初に提案、いや、ルールとして明確化させるべきだった、と後悔するマリア。

 しかし、世の中には、こういう状態に陥っている事を解かりやすく説明してくれる慣用句がある。

 そう、後の祭り、だ。

 

 (ここで非難するのは、逆に人としての格を下げてしまいますわ。

 一度、答えをコールした以上、堂々とするしかありませんもの)


 そう考えるマリアだが、彼女のHカップの中は不安が渦巻いていた。


 「じゃあ、開けますわ」


 (どうか、宇津路さんのサイコロが2、3、4、5の目を出していますように・・・)


 必死に祈りながら、マリアは自分の椀に被せていた紙を退かし、すぐさま、白銀のお椀の中を確認した。


 「ッッッッ」


 「金多さんのサイコロが2、3、5で、俺のサイコロが2、3、5、5」


 「合計は・・・」


 「25だから、俺のドンピシャ、2pをゲットだ」


 「・・・・・・おめでとうございます」


 声を絞り出して、そう、白銀の的中を祝うマリア。

 無理矢理にでも、「おめでとう」と口に出していなければ、マリアは悔しさで泣き叫んでしまいそうだったのだ。


 「ありがとう、金多さん。

 さぁ、これで、俺がまた、獲得ポイントで逆転したね」


 「いえ、まだ、勝負は終わっていませんわ」


 「確かに、そうだね。

 あと3ターンあるから、金多さんが勝てる可能性は残っているか。

 うん、油断は禁物だ」


 (どうせなら、そのまま油断していてくださいませ)


 さすがに、その弱音は口に出せないので、マリアは白銀への懇願をゴックンと飲み込んで、自分のサイコロを一つ追加した。

 互いに四つずつのサイコロをお椀の中へと放り、カランコロン、と転がる音が止んでから、二人は考え始める。


 (出た目は、1、2、3、5ですわね。

 私の合計数は11ですから、宇津路さんが1のぞろ目であれば15、6のぞろ目であるなら35になりますが・・・)


 2pになってしまった以上、もう、1pを消費して、白銀のサイコロの目を一つ知る事は出来ない。


 (・・・・・・また外してしまったら、と思ったら、怖くて使えませんわ)


 先程まで、サイコロの目を一つ知る事で有利になれる、それが白銀のプレッシャーに幾分か耐えられる支えになっていただけに、マリアは余計、不安に駆られてしまう。

 白銀のサイコロは、何の目を出しているのか、必死に、顔から大粒の汗が噴き出るほど推測するマリア。

 人は集中していると、時間の経過を正確に把握する感覚を失いがちになる。


 「金多さん、90秒経過したよ」


 「え!?」


 白銀に指摘された瞬間に、マリアの声は引っ繰り返ってしまう。

 けれど、驚いた所で時間は戻らないし、白銀は情けもかけてくれない。

 こうなった以上、マリアは序盤のように、自分の中にあるであろう、野生の勘に任せるより他なかった。


 「23、いえ、24にしますわ!!」


 「なら、俺は30にしておこうかな」


 白銀が、今度は自分の予想から大きく離してきたので、マリアは不安で巨乳ムネが膨らんでしまいそうになった。


 (あぁ、ドキがムネムネしてますわ。

 宇津路さんのサイコロは・・・)


 白銀のサイコロは2、3、4、5の目を出しており、合計は14で、マリアのサイコロの目と足せば、総合計数は25になった。


 「おめでとう、ニアピンで1p獲得だね」


 (これで私は3p、宇津路さんが4p)


 希望が増した事を確かに感じ、マリアは気を引き締める。

 微かですが、流れが私の方に来ているかもしれませんわ、と己を鼓舞し、それを活かすべく、マリアは勝利の余韻には浸らず、早々にサイコロを手に取り、椀へ入れる準備をする。

 マリアが勝利へのか細い流れを懸命に掴もうとしているのを察し、白銀は愉し気に口角を吊り上げ、五個のサイコロを掌の中で弄ってから、お椀の中にヒョイッと放る。間髪入れずに、マリアもサイコロを投入する。

 このターンも、マリアの目は1、2、3、5。

 同じ目が出た事に「おや?」と彼女が思ったタイミングで、白銀は「ポイントは使う?」と確認してきた。

 違和感を打ち消されたマリアは、すぐに首を横に振る。

 1p差だからこそ、ここも温存すべき、と判断したようだ。

 90秒後、マリアは「31」とコールし、白銀は「34」とコールした。

 同時に紙を退かし、白銀のサイコロが「4、4、5、5、6」であるのを見て、マリアが愕然とする寸前だった、玄関のドアが開く音がしたのは。


 「ギンちゃん、ただいま~」

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