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宇津路くん、アソびましょ  作者: 『黒狗』の優樹
罰ゲーム四個目
67/110

罰ゲーム四個目⑰

 「くっ」


 1pを消費して、白銀のサイコロの目を一つ知る、その有利性を活かせず、読みを外してしまった悔しさに、マリアは苦み走った表情に変わる。

 そんな表情を浮かべたマリアを嘲笑もせず、さりとて、ポイント数で並べた事に安堵する事もなく、白銀は穏やかに笑ったままだ。

 それが、却って、マリアの不安を煽って来た。

 しかし、ここで、不安になってしまっているのを気取られてしまったら、このまま押し切られてしまう可能性が大きくなる、と今の彼女でも解っていたから、パンッパンッと両頬を幾度か叩いて、気持ちを切り替える。

 

 「・・・・・・ほっぺ、真っ赤になっちゃってるよ、金多さん」


 「ちょっと強く叩き過ぎましたわね。

 でも、しっかり目が覚めましたわ。

 さぁ、宇津路さん、サイコロを一つ追加なさって」


 「OK」


 マリアが気合、勝利への執念を巨乳《Hカップ》の中に漲らせているのがヒシヒシと伝わってきた白銀は気圧される事もなく、また、彼女を侮るような態度も見せず、新たなサイコロを手にする。

 二人はタイミングを合わせ、各々のサイコロをお椀の中に放り込む。

 7つのサイコロがお椀の中で転がる音が、ゲームの緊張感が漂って静かながらも冷え切ってはいない室内によく響いた。

 

 (私のサイコロの目は、2と3と5、今回も合計数は10ですわね。

 これで、宇津路さんのサイコロの目が全て「1」だったなら合計数が「14」、全てが「6」であったなら「34」ですわ)


 けれど、さすがに、白銀のサイコロが全て「1」もしくは「6」になっている、その可能性に縋るのは、視野と思考を狭めると理解しているマリアは気を引き締める。


 「どうする、金多さん、ポイントを使う?」


 「ちょっと考えさせてください」


 「いいよ。でも、シンキングタイムは90秒だからね。

 使うなら急いだ方が良いよ」


 白銀の声は、いつも通り、淡々としていた。

 けれど、その「いつも通り」が、逆に神経を逆撫でするのは、珍しくも何ともない話だ。

 一瞬、「そんな事、解ってますわ!!」と甲高い声で叫び返したい衝動に駆られたマリアだったが、ここで冷静さを喪失うしなったら、白銀の思うつぼ、と自分へ言い聞かせる。

 胸に右手を強めに押し当て、Hカップの弾力を感じ取りながら、マリアは深く呼吸を繰り返して、ポイントを使うか、使わないか、を思案する。


 (目が一つ明らかになれば、有利になるのは間違いありませんわ。

 1pを消費しても、ニアピンであれば、それは帳消しになって、3p同士のまま、次のターンに進めますもの。

 きっと、宇津路さんは、このターンも、ポイントを温存してくるでしょう。

 であれば、このターンは勝つ事よりも、ダメージを喰らわない、そこを優先すべきですわ)


 ここまで考えるのに、マリアが使った時間は約5秒。

 1pを使う、と宣言しようとしたマリアだったが、刹那、彼女は踏み止まった。


 (けれど、前ターンのように読み違えってしまったなら、1pを無駄にしてしまうだけ・・・

 攻めに出た結果、読みを外してしまったら痛すぎますわ。

 残りのターンを考えると、ここは少しでも、ポイントを温存すべきなんじゃ・・・)


 守りの姿勢に入ろうとしたマリアを一喝したのは、やはり、彼女の親友の一人である翡翠だった。


 『マリっち、それは守りじゃなくて、カッコ悪い逃げだよ!!』


 心の中で翡翠に叱咤され、思わず、マリアは体を強張らせてしまう。

 マリアの体がビクッとなったのに、白銀は気付いたようだったが、何も言わず、彼女の決断を、穏やかだからこそ、何を考えているのか、読み取れない表情で待っていた。


 『でも、ヒスイさん、また、読みが外れてしまうかもしれませんわ』


 『次は読みが当たるかも知れないじゃん!!』


 イマジナリー翡翠が、本物の翡翠であったなら、間違いなく言ってくるような事を自信満々に言い放ってきたので、マリアは鬱々と悩んで、守勢に回ろうとしている自分の方が全面的に間違っているのか、と思えて来てしまう。

 どうすべきか、と悩んで、自然にマリアが視線を向けてしまったのは、白銀の顔。

 恋愛感情を抱いている、それを自覚した上で見つめる白銀の顔は、これまで以上に魅力的に、マリアの目には映った。

 普段であれば、そのまま見惚れ続けていられただろうが、今は逆に勝負の真っ最中である事を思い出させ、同時に、思考時間が少なくなっている事を気付かせてくれた。


 「決めた?」


 「・・・・・・えぇ」


 「使うの、1p?」


 「はい、1pを消費つかいますわ」


 宣言した瞬間に、マリアはイマジナリー翡翠が「おっし」と、この決断が間違っていない、と認めてくれるようにガッツポーズしたのを感じた。


 「俺のサイコロの一つは、5を出してるよ」


 (5が出ているのであれば、合計数が15になるのは確定。残り3つは・・・)


 「はい、シンキングタイムは終了。

 金多さん、コールして」


 「合計数は24ですわ」


 マリアは白銀のサイコロが「2、3、4、5」を出している、と予想した。

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