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宇津路くん、アソびましょ  作者: 『黒狗』の優樹
罰ゲーム四個目
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罰ゲーム四個目⑮

 だけど、ここで、白銀はマリアへ揺さぶりをかけていく。


 「金多さん・・・」


 「な、何ですの、宇津路さん」


 思い切り、警戒心を露わにしながら、マリアは聞き返した。


 「このゲームも中盤で、良い具合に盛り上がって来たし、この辺りで、もう一つ、ルールを追加しない?」


 (どうすべきでしょうか・・・)


 受けるべきか、断るべきか、迷ってしまうマリア。

 そんな彼女の脳裏に響いたのは、常時、野生の勘で生きている友人、翡翠の言葉だった。


 『キラっち、行くか退くか、で迷ったら、全力で前進だよッッ

 いつだって、勝利は自分の前にしかないんだからねッッ』


 ここで、脳筋な翡翠の助言に従うのが正しいのか、マリアには判断が付かなかった。

 けれど、マリアは、宇津路白銀に勝つ為には、いや、勝ちたいのなら、怯んではいけない、と思った。

 白銀なら、自分だけが有利になるようなルールを、このタイミングで追加する、そんな小狡い真似をしてくるはずがない。

 なら、そのルールを上手く、自分が使う事が出来たのなら、この点差を保ったまま、いや、もっと広げて勝つ事も可能かも知れない。

 一度、スッと両瞼を下ろし、自分自身に、行くか退くか、を問うマリア。

 そして、マリアは目を開き、うっすらと笑っている白銀を鋭く見据えた。


 「ルールの追加、受けますわ」


 「本当に良いの?」


 白銀の確認に、マリアは唇を真一文字にギュッと引き結んで、逡巡を振り払うように、力強く頷いた。

 

 「じゃあ、ルールを追加するね」


 一瞬だけ、白銀は口角を高々と吊り上げた。

 容姿端麗な白銀の微笑みは、見た者を特殊、いや、異様な恐怖感で抱き締めるような美しさが宿っている。

 俗っぽい言い方をすれば、魔性の笑みなのだ。

 その刹那、マリアは自分の決断を後悔し、「やっぱり、無しですわ」と自分の勇気と勝利への執念をたっぷりと込めた言葉を取り消しそうになる。

 けれど、このターンまでに、多少なりとも、精神的に成長していたのか、マリアは、そんな弱い言葉をゴクンッと飲み下す。


 (ここで逃げたら、このゲームに負けてしまうだけじゃなく、これから、私は宇津路さんにも、キララさんにも、一歩引いた状態になってしまいますわッッ)


 政財界で権力チカラを持つ老害から、「バケモノババァ」と、自分がビビっている事を誤魔化すような侮蔑の言葉をぶつけられている尾々藤から、「怪物じみている」と評価されている、優れた観察眼で、白銀はマリアの覚悟のほどを見抜いているようだ。

 楽しい、と感じているのが丸判りの声色で、白銀はマリアに追加するルールの説明を始める。 


 「まぁ、そんな小難しいルールは追加しないよ」


 「本当にですの?」


 「もちろん。

 今、俺達はサイコロを紙で隠しているから、お互いのサイコロの目は見えないよね」


 「当然ですわね。

 私たちは、透視能力者じゃありませんもの」


 (・・・・・・まぁ、この方なら、そんな類の能力を持っていても、何ら驚きませんわ)


 マリアは、宇津路さんになら透視で、私の肢体を凝視されてもいいですわ、と思いながら、白銀の言葉に首を縦に振る。


 「だから、1pを消費すれば、相手から、サイコロの目を一つ教えて貰えるってルールさ」


 「ッッッ」


 「どうかな?」


 まさかの提案に、マリアは表情がギャンッと引き攣ってしまう。


 (ここで、こんなルールを追加してくるとは・・・さすが、宇津路さん!!)


 ポイントで負けている、もしくは、同点の状態なら、魅力的には感じないルールだ、これは。

 しかし、今、マリアは1pではあるが、白銀に勝っている。

 だからこそ、白銀のサイコロの目が一つでも判明するのなら、1pを消費する事も厭わない、そんな気持ちになってしまっていた、今のマリアは。


 「さぁ、金多さん、1pを使って、俺からサイコロの目を聞く?」


 「ちなみに、宇津路さんは使いますの?」


 「俺は今、負けているから、ポイントを温存しておくよ」


 「もう一つ、確認したいんですが、2p使ったら、サイコロの目を2個、教えていただけますの?」


 「おっと、攻めるね。

 当然、教えるよ」


 楽し気な雰囲気を纏う白銀に気圧されそうになりながら、マリアは思考を巡らせる。

 だが、白銀はマリアを焦らせるように、自分の手首にしている腕時計を見せた。


 (まさか、これもシンキングタイムに含まれていますの!?)


 しかし、マリアは文句を言えなかった。

 これは、確認しなかった自分が悪い、と解っていたからだ。

 だから、マリアは決断を下すしかなかった。


 「1p使いますわッッ」


 「俺のサイコロ3個の内、一つは『2』だよ」


 嘘を言っているかも、と疑うべきではあるが、マリアは、白銀の性格を、キララには敵わないにしても、把握できている自負があったから、宇津路さんは本当の事を言ってますわ、と疑念が鎌首をもたげそうになっていた自分に言い聞かせる。


 (私のサイコロは「1」と「6」、宇津路さんのサイコロは一つが「2」なら、答えは「9」以上)


 「俺の答えは15」


 「17にしますわっ」

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