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宇津路くん、アソびましょ  作者: 『黒狗』の優樹
罰ゲーム四個目
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罰ゲーム四個目⑧

 「宇津路さん、私とゲームをしてくださいませんか?」


 「俺が負けたら、つまみ食いと言うか、金多さんがシュークリームを一個多く食べた、その罪を被って、キララちゃんに代わりに怒られるって事でいいのかな?」


 「その通りです」


 マリアは白銀の推測に、大きく頷き返した。

 力強い首肯で、マリアのHカップは、ドタプンッ、と激しく揺れたのだが、紳士である白銀は、その動きに気付いても、視線を彼女の爆乳に向けるなんて、下卑た真似はしなかった。

 

 「私が勝ったら、私がシュークリームを食べ、宇津路さんはキララさんからお仕置きを受けてください。

 まぁ、キララさんは、そんな酷いお仕置きを、宇津路さんにしないと思いますけど」


 「せいぜい、ほっぺギュムゥ、の刑くらいかもね」


 白銀の可愛らしい表現を聞いたマリアは、楽しみにしていたシュークリームを食べられた怒りで、頭から白煙を噴き出しながら、白銀の両頬を力いっぱいに引っ張っている様を頭の中に想像してしまい、その微笑ましさに、思わず、「うふふ」と笑い声を溢してしまったくらいだ。


 「金多さんが負けたら?」


 「もちろん、シュークリームを食べるのは潔く諦めますわ」


 マリアはHカップに右手を当て、再び頷くも、白銀の眉根がわずかに寄せられる。

 彼が眉間に皴を寄せたのに気付き、マリアは戸惑いを隠せない。


 「さすがに、それじゃ弱過ぎるかな」


 「よ、弱過ぎる、と言いますと?」


 「俺が負けた時に比べて、金多さんがシュークリームを諦めるってのは、ちょっと、不公平アンフェアだと思うんだよね」


 「・・・・・・確かに、そうですわね」


 自分だけ楽をしようとしていた、と気付き、赤面したマリアは、そんな自分を罰するように両頬をバチンッと叩く。


 「宇津路さんに、勝負を挑むと言うのに、私は覚悟が足りていませんでしたわ。

 これは、金多家に生まれた者として、実に恥ずべき行いでした。

 申し訳ありませんでした、宇津路さん」


 素直に、己の過ちを認めたマリアは頭を下げる。


 「構わないよ」


 あえて、白銀が厳しい指摘をしたのは、マリアが自分へ勝負を挑む事を諦めて、キララにお仕置きされるのも致し方なし、と腹を括らせ、シュークリームを食べさせる為だった。

 キララがキレ散らかして、マリアに度が過ぎたお仕置きをしようとしたら、白銀としては、ちゃんと止めるつもりでいたのだ。

 しかし、ここで珍しくも、白銀は読みを外した。

 正確に言えば、マリアの決めた覚悟が、白銀の予想を上回った。


 「私が負けた場合は、シュークリームを食べる事を諦めるだけでなく、あの罰ゲームのカードを引き、どんな内容のモノであっても従いますわ」


 白銀のケツに顔を埋め、匂いを堪能するようにグリグリと動かした時の事を思い出したのか、興奮と決意で紅潮していたマリアの頬は、異なる意味合いの熱を帯びたようだった。

 しかし、彼女は真っ直ぐに、白銀の両目を見つめて来ていた。

 超次元の才能の保有者、と過度な妬みや憎しみも含んだ賞賛をされるだけあって、白銀の観察力は伊達じゃない。

 他者の心理を的確に読み取る、どこか蛇じみた白銀の眼は、マリアがある程度の意地は張っているが、不退の覚悟を据えている、と洞察した。

 ここまで腹を括っているマリアからの挑戦を受けないほど、白銀は野暮ったくない。


 「二言はないね?」


 「金多家の名に誓って」


 「・・・・・・OK」


 肩を竦めた白銀は、マリアからの挑戦を受諾する。

 ホッとしたマリアだが、白銀が続けた言葉に、ピキッと表情を強張らせてしまった。


 「それで、どんな勝負をするの?」


 「ッッッ」


 「この場の勢いだけで、勝負の内容までは、特に考えてなかったんだね、金多さん」


 「め、面目ありませんわ」


 しょげたマリアに、白銀は苦笑こそすれど、キツい言葉は浴びせず、どうしたものか、と顎に手をやって考える。

 いっそ、じゃんけんで決めてしまった方が、実に手っ取り早い。

 ただ、マリアが、自分とじゃんけんで勝敗を決する、それを嫌がるのは想像に難くなかった。

 実際、白銀はキララたち相手のじゃんけんで、一度も負けた事がない。

 観察力や洞察力だけじゃなく、動体視力、そして、反射神経もズバ抜けている白銀は、じゃんけんで自分の出す手を、相手の仕掛けてくる駆け引きに合わせ、事前で変える事が可能だった。

 なので、キララたちが相手なら、苦せずに勝つ事が可能である。

 じゃんけんに「あっち向いてホイ」の要素を付け加えれば、マリアは余計に拒むだろう。

 分不相応にも、白銀に勝負を挑んだ側の分際で、勝負内容にケチをつけるのは我儘すぎやしないか、と憤慨する方もいるに違いない。

 しかし、彼としても、自分が完勝してしまう勝負をマリアへ吹っ掛けるのも、気が咎めてしまう訳だ。

 はてさて、どうしたものか、と意外に逞しい首を捻る白銀を、マリアはジッと見つめる。

 自分が妙案を思いつかないのは歯痒いが、事実であるから、黙して待つしかない。

 しばらくして、頭上に「!!」を出した白銀。

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