罰ゲーム三個目⑰
芸術関連の書籍が取材に来ても、顰めっ面の写真を一枚しか撮らせないギンちゃん。
それはそれで、ギンちゃんのミステリアスな雰囲気を醸して、人気を高める一因にはなっているみたい。
本人としては、自分の描きたい絵を描きたいだけであって、見ず知らずの人にチヤホヤされたり、描いた絵を高額で購入されたい訳じゃないから、複雑な気分らしい。
でも、ギンちゃんは、私達には何枚も写真を撮らせてくれる。
言い方は悪いかも知れないけど、とっくに諦めきっているってのはあるのかな。
もちろん、アタシ達だって、「自重」と「自制」って単語は知っているから、一回で撮るのは20枚だけって皆で話し合って決め、超過しないようにしている。
今回も、きっちりと20枚だけ撮影したアタシは、いつも通りの物足りなさを覚えながら、スマフォのレンズをギンちゃんに向けるのを止めた。
いつの間にか、手で目を覆うのを止めていたマリアも、ズボンを足首まで下ろし、ボクサーパンツを見せているギンちゃんをしれっとスマフォで撮影していたみたいで、鼻息を荒くし、頬を恥ずかしさとは違う感情で紅潮させていた。
すぐにでも、翡翠と瑠美衣が見られる状態にしてあげたい所だけど、今、優先してやるべきは、罰ゲームの執行に他ならない。
それは、マリアも理解しているみたいで、赤くなっていた頬をパンッパンッと両側から叩いて、気合を入れ直していた。
ここまで、仁王立ちし、アタシとマリアに撮られるがままだったギンちゃんは、おもむろに、マリアへ顔を向けた。
「準備はOK?」
「いつでも構いませんわ」
「じゃあ、キララちゃん、しっかり30秒を計っておいてね」
「任せて」
アタシはギンちゃんに右手の親指と人差し指で作ったOKサインを見せ、スマフォのカウントタイマーをセットする。
「キララ」
アタシが名前を呼ぶと、キララはやや硬い表情で頷いてから、仁王立ちしているギンちゃんの背後にしゃがみ込んだ。
今更だけど、美人のハーフ女子高校生が、イケメン男子高校生のお尻に顔を接近させている絵面は、奇妙、としか表現できないものだった。
「罰ゲーム開始ッッ」
そして、アタシがコールしたのと同時に、マリアはギンちゃんのお尻に、躊躇う事なく埋めた。
マリアは結構な勢いで、ギンちゃんのお尻の割れ目に顔を突っ込ませていた。
仮に、アタシがあの勢いでぶつかられたら、間違いなく、踏ん張り切れなくて、顔を床にメリ込ませる羽目になっていただろうね。
やっぱり、ギンちゃんは男の子だし、普段から、足腰を鍛えるトレーニングを欠かしていないから、死角である背後からタックルされても、その体幹はまるでブレなかった。
凄いなぁ、ギンちゃん、と感心しつつ、アタシは、スマフォのタイマーがちゃんと動いているのを確認する。
マリアは、ギンちゃんのお尻の割れ目に高い鼻がピッタリとハマるような体勢で、数秒ほど動かなかった。
「マリア?」
何せ、ズドンッ、って聞こえるくらいの勢いでぶつかったから、もしかすると、翡翠と違って頑丈じゃないマリアは脳震盪でも起こしちゃったのかもしれない。
勢いに加え、マリアが首を鍛えていないってのもあるし、何より、ギンちゃんの大殿筋は鍛えこまれているから、結構な弾力と強靭さが成立しちゃっている。
だから、マリアが衝撃で気を失っても不思議じゃなかった。
思わず、アタシが心配になって、声を掛けると、マリアはハッと肩を揺らした。
(・・・・・・あれ、この爆乳女、ギンちゃんのお尻の匂いを嗅いで、キマッてた?)
アタシの「ムカッ」を肌で感じ取ったのか、もしくは、罰ゲームの内容を思い出したのか、マリアはギンちゃんのお尻に埋めている顔を左右に揺らし始めた。
当然と言えば当然だけど、その動きは、実にぎこちない。
まぁ、人のお尻に顔を埋めて、しかも、グリグリと動かす、なんて動きを日常的には絶対、しないから、いざ、それをやろうとしたら難しいだろうね。
ギンちゃんと付き合いの長いアタシも、さすがに、ギンちゃんのお尻に顔を埋めて、グリグリする、なんて事はした事が無かった。
ギンちゃんの鍛えられて割れた腹筋や、股間にぶら下がっている一本の棒と一対の玉を枕にした事はあるけど、それはやった事が無かった。
だから、マリアが引いた、この罰ゲームのカードを読んだ時、一発目としてはヘビーすぎるなァ、そう同情すると同時に、「しまった、これはまだ、やってない」と、思いつかなかった自分に、アタシはショックを受けてしまった。
改めて、ギンちゃんのお尻を顔で楽しむ、その「初めて」を、マリアに奪われた悔しさが、お腹の中、ハッキリ言ってしまえば、子宮の中でグツグツと煮え滾る。
(今夜、絶対、ギンちゃんのお尻を楽しまなきゃ)
アタシはパンツ越しじゃなくて、生で顔を埋めよう、と固い決意を固めている間に30秒が経過したらしく、タイマーが鳴った。
時間が来ても、マリアがギンちゃんのお尻に顔を埋めたままでいたら、アタシは容赦なく、引っ剥がすつもりでいたんだけど、ギンちゃんの方からお尻をマリアの顔から離してくれたので、アタシはGカップを撫で下ろす。
予想通り、マリアはギンちゃんのお尻の感触と芳香りで、表情が恍惚になっていた。
「マリア、罰ゲームお疲れ様」
「ふぇぇ・・・」
トリップ状態になっているマリアに、アタシとギンちゃんは肩を竦め合う。
これをキッカケに、マリアも、アタシとギンちゃんの罰ゲームありのゲームに参加する事になったの。