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宇津路くん、アソびましょ  作者: 『黒狗』の優樹
罰ゲーム三個目
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罰ゲーム三個目⑯

 「へ?」


 マリアの口から出たのは、なんとも、マヌケな声だった。

 でも、そんな声が出ちゃっても仕方ない。

 アタシでも、こんな罰ゲームに決まったと解ったら、声が引っ繰り返っちゃう。


 「異性のお尻に顔を埋めて、30秒グリグリ」


 「い、いえ、聞こえなかった訳ではありませんわ、宇津路さん」


 「あ、そうなの?」


 冷静さを取り戻したって言うより、驚きが一周して、気持ちが変な落ち着き方をしちゃったらしいマリア。


 「私が引いたカードを見せてください」


 ギンちゃんが嘘を吐いてると思った訳じゃないだろうけど、万が一があるかもしれないって希望を捨てきれなかったみたいで、マリアはギンちゃんにおずおずと手を出した。

 もちろん、優しいギンちゃんはそれを断らず、マリアの手にカードを乗せる。


 「・・・・・・ほ、本当に書かれてますわ」


 カードに書かれている罰ゲームを読んだマリアは、改めて受けたショックで、ガックリと肩を落とした。


 「え、エッチな罰ゲームじゃありませんけども・・・」


 エッチな罰ゲームは引きたくなかったけど、これはこれで恥ずかしいらしい、マリアからすると。


 「金多さん、引き直す?」


 それは、ギンちゃんからすると、恥ずかしがっているマリアに気遣っての言葉だったんだろうけど、ギンちゃんは「金多マリア」って女への理解度が、まだ、低かったみたい。

 マリアの負けず嫌いで、金多家の一員って言うプライドを何よりも大事にする性質を、よく知っているアタシは思わず、「あちゃぁ」と顔を手で覆ってしまった。

 アタシの予想通り、あんだけ、オロオロしていたマリアがピタッと止まっていた。


 「今、何と仰いましたの、宇津路さん」


 いつになく、マリアの表情は強張っていた。

 声が震えているのも、罰ゲームに怯んでいるからじゃなくて、時には自分の命よりも優先したい誇りを傷付けられたからに他ならない。

 しかも、自分のプライドを傷つけてきたのが、留年しかねなかった自分のピンチを救ってくれた大恩人と表現したって足りないくらいのギンちゃんなんだから、マリアの怒りも一瞬とかからずにマックスになったんだろうな。


 「カードを引き直す? って訊いたんだけど」


 でも、ギンちゃんは、そんなマリアに対して、何の躊躇いもなく、同じ事を言った。

 こう言っちゃ、また、マリアのプライドを害しちゃうかもだけど、マリアがキレても、大して怖くはない。

 それでも、多少は言い淀んでしまいそうなのに、ギンちゃんは遠慮なしで告げた。


 (あれ、もしかして、ギンちゃん、マリアの急所を解かってる上で煽った?)


 どうやら、アタシの方がギンちゃんの事を、まだまだ理解しきれていなかったのかも。

 反省すると同時に、アタシは、アタシが未だに知らない一面を隠しているギンちゃんが好きになった。

 まぁ、アタシがギンちゃんに事ある毎にキュンキュンしちゃうのは、いつもの事。

 今は、マリアが話の主役だ。


 「やってやりますわ!!」


 堂々と言い放ったマリアは、自分の発言にハッとして後悔する、なんて二流のお嬢様みたいな醜態は晒さない。

 ふんすっふんすっ、と鼻息を荒くしているマリアに、アタシは自然と拍手を送っちゃう。


 「さすが、アタシの親友。

 カッコいいよ、マリア」


 アタシの賞賛に、マリアは誇り高い微笑を浮かべる。


 「さぁ、宇津路さん、罰ゲームを始めましょう」


 「ちょっと待った」


 「な、何ですの、キララさんっ」


 「ごめん、マリアのやる気を削ぐつもりはなかったんだけどさ・・・」


 「?」


 「マリア、ギンちゃんのお尻に直で顔を埋めるの?」


 「ッッッ」


 プライドを刺激された事で罰ゲームを受ける覚悟が決まったマリアだったけど、ここで、アタシに指摘された事で我に返ってしまったらしく、頬が真っ赤に染まった。

 こんな状況だけど、アタシは、そんなマリアを可愛くて、ギュッと抱き締めたくなる。

 

 「どうする、ギンちゃん?」


 「このゲームの審判は キララちゃんだから、決めてくれるかな」


 ギンちゃんにそう言われたアタシは、しばらく悩んだ。

 その間、ずっと、マリアは手を組んで祈るような体勢を取ってた。


 「よし、決めた」


 「ど、どうしますの?」


 「ズボンのままだと、罰ゲームとして面白味に欠けちゃう。

 でも、さすがに、アタシの目の前で、マリアにギンちゃんのお尻を直で堪能されたら、アタシの方が嫉妬でキレちゃう。

 だから、ギンちゃん、パンツ一丁になってくれる?」


 「了解」


 ギンちゃんは、アタシの指示に、No躊躇でズボンを脱いで、ボクサーパンツを露わにする。


 「キャッ」


 そんな可愛らしい小さな悲鳴を上げながらも、マリアは顔を覆った手指の隙間から、ギンちゃんのパン一姿を凝視している。

 何だかんだで、マリアも超ムッツリスケベなんだよね。

 類友感を噛み締めつつ、アタシは、パン一ギンちゃんをスマフォで撮影する。

 毎日、ギンちゃんの部屋で隙だらけの姿をバシャバシャ撮ってるけど、これはこれで、稀少スーパーレア感があるから、シャッターチャンスは逃がせないよね。

 

 


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