表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇津路くん、アソびましょ  作者: 『黒狗』の優樹
罰ゲーム三個目
42/110

罰ゲーム三個目⑨

 マリアのとんでもない発言に、アタシの方がパニックになる。


 「ちょっ、マリア、正気?」


 「キ、キララさん、その言い方、失礼ですわよ」


 「そうだよ、キララちゃん。

 そこは、本気?って聞かなきゃ」


 「ちょっとぉっっ、宇津路さんも地味に失礼ですわね!!」


 憤慨するマリアは、アタシたちをキリッと睨む。

 当人は凛々しく睨んでいるつもりなんだろうけど、今イチ、迫力に欠けているのはご愛敬だ。

 そんなマリアの効果がない威圧で、却って冷静になれたアタシは改めて聞き直す。


 「本当に、マリア、ギンちゃんと勝負する気?」


 「私は、宇津路さんの事を尊敬していますし、勉強を教えていただいているので感謝もしています。

 しかし、私の親友に、あのようないかがわしい行為をさせているのであれば、許せませんわッッ」


 「いや、マリア、あれは罰ゲームだって言ってるじゃん」


 「例え、罰ゲームであっても、宇津路さんが、やらなくていいよ、と言えば済む話。

 にも関わらず、キララさんに罰ゲームをやらせたのは、宇津路さんの中に、雄としての下品な欲望があるからです。

 ですから、私が宇津路さんに勝ち、キララさんをその邪心から守りますッッ」


 マリアの、アタシに対する友情がしっかりと伝わってくるだけに、アタシはその勘違いに対して怒り辛くなってしまう。

 ぶっちゃけた話、アタシはアタシで、罰ゲームを楽しんでいる、と言うか、興奮しているだけに、尚更、マリアを止めるタイミングを掴み辛くなってしまう。

 それなりに長い付き合いになっているので、マリアが頭に血を登らせ、勘違いに勘違いを重ねてしまったら、誰が何を言っても簡単には止まらない性格なのは、アタシも把握している。

 チラリと、ギンちゃんを見れば、ギンちゃんも困惑はしているけど、既に、マリアの誤解を、今、解くのを諦める雰囲気を醸し始めていた。

 視線に気付いてくれたのか、こちらを向いてくれたギンちゃんに、アタシはコクンッと首を縦に振った。

 一瞬だけ、ギンちゃんは、ちょっとだけ、目を見開いたけど、アタシがもう一度、さっきよりも強めに首を縦に振ると、「仕方ない」と肩を落とす。


 「勝負を受けるよ、金多さん」


 一度、そうする、と決めたからだろう、ギンちゃんの長身からは強者特有のオーラが揺らめいていた。

 アタシ同様に、マリアもそれを感じ取ったみたいで、一瞬、自分の逸りを後悔するような表情になったけど、すぐに気持ちを立て直した。

 この辺りの精神力は、友人として尊敬できるんだけど、今は、素直に落ち着くべきだったよ、マリア。

 アタシは、マリアに聞こえないよう、心の中だけで溜息を溢す。


 「それで、マリア、ギンちゃんと勝負をするのは良いんだけどさぁ、アンタ、何で勝負する気なの?」


 「!!」


 アタシの質問にハッとしたマリアは、「少し考えさせてくださいませ」と熟考し始めた。


 (何で勝負するかも考えずに、ギンちゃんへ喧嘩を売ったのね)


 マリアの無鉄砲ぶりに、アタシは頭痛が痛くなってきてしまいそうになる。

 ギンちゃんも、顔にこそ出していないけど、呆れているみたい。


 「学問系、絵画系、運動系以外の勝負でお願いしますわ」


 「自分が絶対に勝てない勝負はしない気!?」


 「絶対に勝たなければならない以上、負ける可能性が高すぎるどころか、敗北確定の勝負は避けるのは定石ですもの。

 真の強者とは、負ける戦いはしないものです」


 「アンタ、勉強はてんでダメなのに、こうゆうトコだけ、妙に頭が回るよね」


 「褒めても何も出ませんわよ」


 「いや、褒めてないから」


 今更ながら、マリアを止めた方が良い気もしたけど、このままにした方が面白そうだったので、アタシは制止の言葉を飲み込む。


 「なら、カラオケの点数勝負も無しでいいかな、金多さん」


 「うっ」とマリアが呻いたのは、自分が確実に勝てそうな勝負を封じられてしまったからだろうね。

 けど、今、それらしい理屈を並べてしまった以上、ギンちゃんの言い分を却下できるはずがなかったみたいで、「構いませんわ」と胸を張るマリア。


 (動揺の色が、目に出過ぎでしょ)


 「なら、キララちゃんが何で勝負するか、決めて」


 「いいの?」


 「それが一番、フェアじゃないかな。金多さんも、それでいいよね?」


 ギンちゃんの聞き方は穏やかだったけど、声には有無を言わせぬ圧じみたものが宿っていた。

 だから、マリアはコクコクと肯くしか出来なかったみたい。

 

 「そうだなぁ」


 ギンちゃんの事は大大大大大好きだけど、マリアの事も親友と思っているから、ここで、ギンちゃんに肩入れするのは抵抗がある。

 アタシはしばらく、Gカップの前に腕を組んで、首を傾げ、「うーん」と唸りながら、二人がどう勝負するか、を考える。


 「じゃあ、バリチッチで勝負するのはどうかな?」


 「バリチッチか、それなら、フェアかもね」


 「でしょ。思いついたアタシを褒めていいんだよ、ギンちゃん」


 「ちょっと、お二人だけで納得しないでくださいな。

 バリチッチって何ですの?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ