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宇津路くん、アソびましょ  作者: 『黒狗』の優樹
罰ゲーム三個目
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罰ゲーム三個目⑤

 まぁ、正確に言うと、確かに、アタシは泣いているマリアに救いの手を差し伸べたけど、実際、勉強を教えたのはギンちゃんなんだよね。

 マリアよりはマシとは言ったって、アタシもそこまで余裕がある訳じゃなかったんだもん、仕方ないでしょ。

 それに、アタシは、人に勉強を教えるのも、あんまり得意じゃなかったからね。

 グスグスと鼻を啜りながら泣きじゃくるマリアの手を引いて、アタシは第三美術部の部室に足早に向かった。

 何せ、マリアはただでさえ美人なのに、ボロボロと大粒の涙を流しているから、目立つ。

 しかも、そんなマリアの手を引いて歩くのが、超絶可愛いギャルのアタシだから、もっと目立つ。

 だから、当然、廊下を足早に歩くアタシとマリアは、擦れ違う生徒に妙な目で見られてしまう訳よ。

 何人かの女子は、アタシたちの事を心配してくれたのか、歩み寄って来てくれようとしたけど、アタシはここで止まっちゃうと、くだらない下心を丸出しにした男子が来ちゃうかなって思ったから、「大丈夫」って口パクと、アイコンタクトで伝えた。

 その女子は、アタシのメッセージをちゃんと受け取ってくれたみたいで、心配そうな顔をしたまま、足を止めて、アタシたちを見送ってくれた。

 どうにか、アタシたちは、そんな女子たちと、下品な雰囲気を隠そうともしないバカをスルーして、ギンちゃんが中にいるであろう第三美術部の部室に到着した。


 「ギンちゃん、助けてッッ」


 きっと、スケッチブックに鉛筆を目にも止まらぬ速度で疾走はしらせていたギンちゃんは、そう叫んで、勢いよく、部室の扉を開けたアタシと、アタシに手を引っ張られれる形で部室に入って来たマリアを見て、凄く面喰ったんじゃないかな。

 でも、ギンちゃんは動揺を1mmも顔に出さないで、スケッチブックを閉じて、鉛筆をケースに入れると、すぐに、自分が座っていた椅子に、マリアを座らせるように促してくれた。

 ギンちゃんが、アタシたちの話を聞いてくれるようなので、アタシはホッとする。


 「ほら、金多さん、ここに座って」


 まだ泣き止まないマリアだったけど、アタシが引いていくと、素直に椅子に腰を下ろしてくれた。


 「ギンちゃん」


 「まぁ、ちょっと待って、キララちゃん」


 事情を話そうとしたアタシを、ギンちゃんはゆったりと動かした手で制す。

 本当に、手の動きは緩慢だったけど、妙な圧が宿っていて、自然と、アタシは落ち着いてしまった。

 アタシは、いつのまにか、自分が冷静さを失っていた事に気付き、恥ずかしくなってしまう。


 「ごめんね」


 「いいよ、キララちゃん。

 けど、話を聞く前に、まず、お茶にしよう。

 金多さん、ハーブティーは飲める?」


 マリアは、ギンちゃんが尋ねても、しばらく無言でいたけど、おもむろにコクリと小さく頷く。

 首の動きは小さかったけど、マリアのおっぱいが大きく揺れたので、アタシは一瞬、彼女を心配する気持ちも吹っ飛んで、ムッとしてしまう。


 「・・・・・・はい、飲めますわ」


 「苦手な香りとか、あるかな?」


 「ありません、大丈夫ですわ」


 「じゃあ、ちょっと待っててね」


 ギンちゃんが、この第三美術部の部室に備え付けられている小さいキッチンの方に向かったので、アタシも一緒に行く。


 「ごめんね、ギンちゃん。

 いきなり、金多さんをここに連れてきて。

 でも、泣いてるあの子をほっとけなくて」


 「大丈夫だよ、キララちゃん。

 困っている人がいたら助けたいと思うキララちゃんの優しいトコ、俺は好きだよ」


 「す、好き?」


 「うん、好きで、尊敬する」


 アタシは思わず、ギンちゃんに、当時はFカップだったおっぱいを押し付ける全力ハグをしようと、両腕を大きく、バッと広げた。

 けど、ギンちゃんに対して一歩、強く踏み込んだのと同時に、背後で、また、マリアが咽び泣き始めたものだから、アタシはどうしたって、ブレーキをかけられてしまう。

 ギンちゃんのボディに回そうとしていた腕は、プルプルとしたまま、そのポジションから動かせなくなった。

 アタシは悩んだけど、ギンちゃんがリスペクトしてくれる、アタシの良い所を嘘にしないために、ギンちゃんへ抱き着くのを諦めたの。

 マリアとライバルになった今だったら、絶対に、マリアの事を優先なんかしないけど、この頃は、まだ、友達にもなってなかったからねぇ。

 家に帰ったら、絶対に、ギンちゃんの脱ぎたてパンツで、この悶々を発散させなきゃ、と固い決意をしながら、アタシは冷凍庫から、小さめの氷嚢を取り出す。


 「金多さん、これ、目に当てて」


 「ありがとうございます、鶏田さん」


 ペコリと頭を、マリアが下げると、やっぱり、おっぱいがブルルンッと上下する。

 アタシは衝動的に、氷嚢を、おっぱいに叩きつけたくなったけど、何とか堪えた。

 そんなアタシの苛立ちに気付いていないみたいで、マリアは氷嚢を受け取り、手にしていた有名ブランドのものっぽいハンカチに包んで目に当てると、「はぁぁ」と気持ちよさそうかつ艶っぽい声を漏らした。

 

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