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宇津路くん、アソびましょ  作者: 『黒狗』の優樹
罰ゲーム二個目
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罰ゲーム二個目⑨

 毎朝、アタシはしみじみ思う事が三つある。

 一つは、ギンちゃんの調理スキルの高さに対して、凄いなぁ、と思う事。

 ここで、くだらない見栄を張っても仕方ないから、ぶっちゃけるけど、アタシは料理が得意じゃない。

 決して、全く出来ない訳じゃない。

 一応、家庭科の成績は、4だ。まぁ、それは、ギンちゃんが手取り足取り教えてくれているおかげ。

 そこはさておき、アタシは「普通」に料理が出来る。そこは、見栄じゃなく、本当。

 厚焼き玉子も3回に1回しか失敗しないし、カレーも箱のレシピ通りに作れるし、人参や大根も乱切りに出来るし、お味噌汁もインスタントじゃなくて、出汁入りの味噌からちゃんと作れる。

 アタシは、別に、女なんだから料理が出来なきゃいけない、と思っている訳じゃない。

 男だろうと、女だろうと、オカマだろうと、一人暮らしをした時、自分で毎日の食事を作れたら、外食に使うお金を抑えられるし、毎日、自分好みの味の料理を食べられる。大切な人が出来た時、美味しい料理を振る舞えれば、ポイントアップにも繋がる。

 だから、そういう利点があるのに、自分はカップ麺にお湯を入れるくらいしかしないのに、女のくせに料理もまともに出来ないのか、とほざくバカ男の腐れ舌はブチ抜いてやりたい。

 塩の良し悪しも判別わからないのに、お前の飯はマズいだの、ママの作る飯は俺好みだっただの、豚の餌以下のモノを作りやがって、とほざくバカ男の腐れ胃に膝をメリこませたい。

 世の女性は、自分で料理をしないから、その難しさと楽しさを知らないのに、ゴチャゴチャ、文句だけは言ってくる男なんかに我慢せず、全力でぶん殴って、ポイしてやりゃいいのだ。

 そうすれば、毎日、ご飯を作って貰える事が、どれだけ恵まれているか、を痛感するよ。

 イイ女に捨てられたにも関わらず、懲りない、反省しない、自分が悪かった事も気付かないで、家事の全部を押し付けられる女を探そうとするなら、そんなバカに未来はない。好き勝手に食って、飲んで、体を壊して、最期は惨めに孤独死だ。

 ごめん、ちょっと、ムカつく身内の事を思い出して、嫌な気分になったから、話がズレちゃった。

 料理がそれなりに出来るアタシでも、今、ギンちゃんが作ったメニューは同じ時間で用意するのは厳しいって事を言いたかったんだよね、要は。

 それぞれは簡単に出来るものだけど、それは、その一品を作るなら、って話。

 同時進行で作り始めて、同じタイミングで完成させ、一つ一つの美味しさを落とさないってのは、かなり難しい、と思ってる。まぁ、それは、アタシが、それなりにしか料理を出来ないから、そんな風に思っちゃうのかも。

 いや、やっぱり、簡単じゃないよね。

 ギンちゃんが平然とやっていて、「普通だよ」と口では言うけど、並大抵の事じゃない。

 毎日、台所に立っているから慣れているってのも小さくないけど、傍目から見ても、ギンちゃんの動きには無駄がない。

 ギンちゃんの場合は、料理に限らず、勉強や運動、ゲーム、何より、趣味に関しても、一切の無駄が無いんだけどね。

 ギンちゃん曰く、それをやる前に、目標と言うか、自分の求める結果を頭の中に思い浮かべると、それに辿り着ける動作の最適解、その為のルートが図になって、頭の中に浮かぶらしい。

 最短や最速じゃなくて、最適ってところが、ギンちゃんっぽい。

 無駄なく動いているから迅速はやく見えるけど、すべき下拵えには手を抜いていないから、その分、時間は使う。その使った時間に見合った結果が、料理に出る。つまり、美味しくなるんだ。

 そのルートに従って体を動かしているだけだから、そんな凄くない、とギンちゃんは謙遜してたけど、平凡でしかない、人より優れている所と言ったら、可愛い顔、Gカップ、そんで、ギャルらしい明るい性格だけのアタシからしたら、とんでもなく凄い。

 そうアタシが全力で褒めると、ギンちゃんは嬉しそうに笑ってから、俺は凄くないよ、と繰り返した。

 もしかしたら、そのルートから外れた動きをすれば、出したい結果より、もっと良い結果を出せるかも知れないのに、失敗するのが恐くて、ルート通りの動きが出来ないんだから、と自嘲気味に笑うんだ、ギンちゃんは。

 自分に自信が持てない訳じゃない、杓子定規な自分を嫌っている訳でもない。

 ただ、妙に、自己肯定感が低い所、それが、ギンちゃんの唯一の欠点かも。

 まぁ、そこはそこで、何でも上手くやって、なおかつ、周囲から褒め称えられるギンちゃんを毛嫌いしている人たちの神経を、大いに逆撫でしちゃってるんだけどね。

 さすがに、その人たちも、物理的かつ穏やかじゃない類の嫌がらせはしてこない。

 嫉妬から他人を害すのは人として恥って思ってる訳じゃなくて、一度、痛い目を見たから懲り懲りなんだろうね。

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