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宇津路くん、アソびましょ  作者: 『黒狗』の優樹
罰ゲーム二個目
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罰ゲーム二個目⑦

 でも、そんな悲しみに、ウジウジと浸っている暇は、アタシにない。

 ネガティブオーラを背負うなんて、ギャルっぽくないしね。

 アタシは、ギンちゃんがアタシだけの為に作ってくれたパンケーキが、何故か、あっという間に、半分になってしまったショックを吹っ飛ばす。

 何をする気かって?

 フフフフ、何をすると思う?

 そう、味変アジヘンッッッ

 半分になってしまったのは悲しい。だからこそ、残りは、元から美味しいパンケーキに、違う美味しさをプラスする、とアタシは決定めている。

 

 「まずは、王道!!」


 アタシは、小皿にハチミツをたっぷりと注ぎ入れる。そして、その大量のハチミツへ、ちょっと大きめに切った一口分のパンケーキを、どぷんっ、とダイブさせる。

 絶妙なタイミングで引き上げたパンケーキには、しっかりと、ハチミツが染み込んでいた。

 ただでさえ、美味しそうなパンケーキがハチミツを大量に吸った事で、ますます、美味しそうに見える。

 もちろん、アタシはノー躊躇で、ハチミツが染み込んだパンケーキを、大きく開けた口へ飛び込ませる。

 口を閉じた瞬間に、「じゅわわぁ」と強烈な甘味が勢いよく広がっていき、アタシのGカップは幸せで満たされて、もっと、大きくなってしまいそうになる。

 人によっては、ここまでハチミツを染みこませたパンケーキは甘すぎてキツいかもしれない。

 でも、ギンちゃんがアタシだけの為に作ってくれたパンケーキは、これほどの量のハチミツをたっぷりと吸いこんでも、決して、不味くならない。

 それは、きっと、このハチミツが安物じゃないからだ。

 このハチミツは、近所のスーパーで1kg598円で売っているものじゃなく、一瓶(100g)で100000円くらいする高級品なのだ。

 まず、そもそも、瓶のデザインが、美術館に飾られていても不思議じゃないくらい、とってもオシャレだ。

 だから、一目で高価だ、と解るし、味もその値段に見合って、メチャクチャ美味しい。

 こうやって、パンケーキを浸すのも最高だけど、焼いた食パンに塗っても、これまた、ほっぺたが落ちそうになる。

 アタシよりも遥かに料理が上手いギンちゃんなんかは、このハチミツ入りの特製ソースで、安い肉を使った料理をとんでもない旨味に変えている。

 そんな庶民向けじゃないハチミツを譲ってくれたのが、マリアだった。

 さすがに、ギンちゃんは、貰うのは申し訳ない、と言って、すったもんだの交渉をして、マリアに5000円札を半ば強引に渡していた。

 アタシだったら、相手が無料タダでくれるなら、ありがたく貰っちゃう。相手が、マリアなら、尚更だ。

 

 (悔しいけど、こればっかりは、マリアに感謝だなぁ)


 アタシは、仕方なく、心の中で、マリアに手を合わせ、「ありがとう」と言う。

 そしたら、マリアが偉そうに、「ふふんっ」と、アタシより大きいおっぱいを見せつけるように踏ん反り返ったもんだから、アタシは、ムカッとしてしまう。

 現実のマリアに、そんな事をされたら、容赦なく、Hカップを全力ビンタしているところだね。

 けど、今は、ギンちゃんがアタシだけの為に作ってくれたパンケーキを食べる方が大事だから、アタシはイメージの中のマリアにジャーマンスープレックスをかますと、パンケーキを食べる事に集中する。

 もう一回、ハチミツまみれのパンケーキを一口食べたアタシは、「じゅわわぁ」と口の中に広がる、強烈だけど、くどくはない甘さに、ニコニコしてしまう。

 とは言え、ハチミツばかりでは、ギンちゃんがアタシだけの為に作ってくれた、このパンケーキの美味しさを堪能できない。

 なので、アタシが、次に、ギンちゃんがアタシだけの為に作ってくれたパンケーキへプラスするのは、フルーツのジャム。

 これも、マリアから買った高級ジャムだったら、また、ムカッと来てしまうところだったけど、幸い、これはギンちゃんが作ったお手製品。

 自分で、ジャムまで作れちゃうなんて、ほんと、ギンちゃんは凄いよね。

 もっと、好きになっちゃう。

 キッチンで手際よく調理を進めているギンちゃんに惚れ直しながら、アタシはまず、リンゴのジャムを一口大に切ったパンケーキにちょっと乗せる。

 そして、一口でパクッと食べた。


 「うーん、リンゴの甘酸っぱさが最高」


 パンケーキの素朴な甘さに、リンゴジャムの酸味を帯びた適度な甘さが絡み合って、爽やかな甘味が口に広がっていく。

 その広がりが、アタシを笑顔にさせる。

 

 「朝から美味しいモノが食べられるアタシは、今、世界で一番、幸せだね」


 「残念だけど、それは違うよ、キララちゃん」


 フライパンで何かを焼いているギンちゃんが、こっちを向かないまま発した、まさかの言葉に、アタシはビックリしてしまう。


 「え、違うの?!」

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