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宇津路くん、アソびましょ  作者: 『黒狗』の優樹
罰ゲーム一個目
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罰ゲーム一個目⑪

 「顔に出ちゃうくらい、素直なところが、キララちゃんの長所だ、と俺は思うよ」


 頬をむにゅむにゅと揉んでいるアタシの掌に手を添えたギンちゃんは、ふふっと笑う。

 ギンちゃんに、自分の良い所を褒められ、アタシは嬉しくなるけど、ハッと気付く。


 「ちょっ、それって、これからも、ポーカーフェイスが出来ないと不利なゲームは負けちゃうってことじゃん」


 「ありゃ、バレたか」


 てへっ、と悪戯っぽく、舌をほんのちょっとだけ出したギンちゃんの可愛い顔に、アタシはぽぉーと見惚れそうになってしまう。


 「つ、次は負けないんだからね」


 「うん、楽しみにしてるね、キララちゃんの成長を」


 「・・・・・・ギンちゃん、アタシが、弱点を克服できっこないって、お腹の中で思ってない?」


 「ソンナコトハナイデスヨー」


 わざとらしく棒読みで言ったギンちゃんが可笑しくて、アタシは悔しいのも忘れ、大笑いしてしまう。


 「さて、次が楽しみとは言え、今の勝負の罰ゲームを何にするか、決めなきゃね、勝者としては」


 「!?」


 大笑いしていたアタシは、ギンちゃんのその言葉で我に返り、慌てて、ソファの上に放り出していた小包を取った。

 可能性は低いけど、課題をもう1p進める、と言われてしまったら、非常にマズい。

 負けたのだから、勝者の命令には潔く従う覚悟はあるけど、もう、今日は勉強をしたくなかった。

 

 「ギンちゃん、これ!!」


 「ん、何、これは?」


 ギンちゃんは、アタシに見せられた箱を見て、小首を傾げる。

 ギンちゃんくらいの美男子だと、ただ、首を軽く傾けただけでも、ポッと頬が熱くなるくらい、絵になるなぁ、と心の片隅で考えながら、アタシはそれの説明をする。


 「ギンちゃん、いつも、アタシにする罰ゲームで悩んでるでしょ。

 それに、ギンちゃんの罰ゲームさ、罰ゲームっぽくないじゃん」


 「そうかな?」


 「うん、だから、これをアナゾンで買ったんだ。

 これなら、引いたカードに書かれている命令に従えば良いから、楽じゃん」


 そう、アタシが買ったもの、それは、パーティで使うアイテムだった。多人数で対戦するタイプのテレビゲームなどで使えば、大盛り上がり必至になるもの。

 でも、これは、普通のモノとは違う。

 普通のものに書かれている罰ゲームは、変顔やモノマネ、腕立て伏せとか、笑えたり、体をちょっと酷使するタイプのものばかりだけど、アタシがポチッたものは、それだけじゃなくて、ハグや恋人繋ぎ、30秒間ジッと見つめ合う、耳元で甘く囁く、みたいな指示がカードに書かれている。

 そう、これは、友達以上恋人未満の男女が混合で行う王様ゲームで使う用なのだ。

 そっち系統の命令が書かれているカードを上手く引けるか、そこは微妙だけど、アタシとしては、もう、こういう道具に頼るしかなかった。

 

 (きっと、これを使えば、ギンちゃんだって、アタシを、少しは、女の子として意識してくれるようになるよね)


 甘酸っぱい期待で、自慢のGカップを膨らませながら、アタシは箱を開封し、カードを出すとシャッフルしていく。

 カードは200枚以上だからシャッフルするのは大変で、ギンちゃんに比べたら、たどたどしいけど、何とか、カードをきちんと混ぜられたアタシは、積み重なったカードをテーブルの上に置いた。


 「さぁ、ギンちゃん、一枚、引いて」


 しばらく、何かを考え込んでいたギンちゃんだけど、アタシにカードを引くように促されると、腹を括ったような表情で、一番上のカードを引いた。


 「何て書かれてる?

 あ、キツい内容だからって、変えちゃダメだよ、ギンちゃん。

 アタシは、どんな罰ゲームでも従うからね」


 ギンちゃんが引き直せないように、アタシはさっさと残りのカードを箱に戻してしまう。


 「・・・・・・」


 ギンちゃんは、自分が引いたカードをまじまじと見つめている。

 アタシは、自分で強気な事を言っておいて、急に不安になってしまう。


 (どうしよ、町内一周とかだったら)


 しかし、一度、口にしたのだから、もう引っ込められない。

 アタシは、ずいっと体を前に出し、ギンちゃんに、「ほら、カード見せて」とお願いする。

 ギンちゃんは、一回、天井を仰いでから、アタシにカードの、命令が書かれている面を見せてくれた。


 『目の前の異性に今、履いている下着を見せる(三分間)』


 「え?」


 その命令を読んで、目が丸くなっていたアタシは、その間抜けな「え?」が、アタシ自身が発したものだって、しばらく気がつかなかった。

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