罰ゲーム五個目(21)
「良いんですの? 宇津路さん」
「構わないよ、金多さん」
「ですけど、さすがに、オセロと将棋を同時に指すのは、宇津路さんに不利ですわ、かなり」
「心配してくれるのは嬉しいけど、せめて、『もしかしたら、宇津路さんに初勝利できるかもしれませんわ』って考えてるのが丸判りの笑みは隠すべきじゃない?」
「・・・・・・あら、笑ってしまっていましたか、私」
「口の両端がちょっと吊り上がっちゃってるね」
「申し訳ありません。
ですが、キララさんも仰っていましたけど、私たちは勝ちたいのです、宇津路さん、アナタに。
だから、圧倒的弱者である私たちは、アナタに勝つ為なら、手段など選んでいられないのです」
「追い詰めた俺が言うのもアレだけど、ちょっと余裕を失い過ぎじゃない、二人とも。
あくまで、遊びの一環なんだから、気楽に考えていいのに」
「宇津路さんにとっては、息抜き感覚のつもりでも、私たちにとっては、真剣勝負なんですわ」
(私たちは、宇津路さんをヌいて、イカせたいのですから)
「まぁ、金多さん達が、どうしても勝ちたいって気概で立ち向かって来るなら、戦いに於ける本気に堪えるのが、勝者として通すべき筋だよね」
「・・・・・・多少の手心を加えていただけると、こちらとしてもありがたいですわ」
「それは聞けない頼みだね。
キララちゃんと金多さんは、俺に勝つ為に手段を択ばずに挑んでくる。
なら、俺は真正面から、それを叩き潰すよ」
(くぅ、恐ろしいのに、思わず、胸が甘くときめき、子宮が切ない熱に疼いてしまう、眩しい笑顔ですわ!!)
「キララちゃん、探すの手伝おうか?」
「大丈夫でごわすよ、ギンちゃん。
ほら、オセロと将棋、見つけたでごわす。
やっぱり、普段から、遊んで戻す場所をちゃんと決めておけば、見つけるのが楽でごわす」
「OK。
じゃあ、始めようか。
どっちがどっちを指すのかな?」
「マリア、どっちが良いでごわすか?」
「ブフォッ・・・私は正直、駒の動かし方が辛うじて判っている程度なので、キララさんには将棋をお願いしたいですわ」
「了解でごわす。
ギンちゃん、アタシが将棋で、マリアがオセロを指すでごわす。
それで良いでごわすか?」
「一手を指す制限時間は?」
「・・・2分」
「2分ね。
じゃあ、2分が経過したら、30秒読みして、それでも指せなかったら負けって事でいいのかな?」
「それで大丈夫でごわす。
ギンちゃんの勝利条件は、アタシ達の二人に勝つ、でごわす。
アタシ達の二人は、どっちかが勝てばいいでごわす。
それで問題ないでごわすよね、ギンちゃん」
「キララさん、それは、さすがに、ちょっと、私たちに有利すぎますわよ。
いくら何でも、宇津路さんが了承するはずが・・・」
「別に構わないよ」
「えっ!?」
「ほら、マリア、アタシの予想通り、良いって言ってるでごわす、ギンちゃんは」
(今は余裕綽々だろうけど、いざ始まったら、その顔が歪むのが愉しみだよ。
ギンちゃんは知らないだろうけど、アタシは、この前、『将棋キングダム』で三級になった。
普通にやったら勝つのは難しいけど、オセロと一緒に指しているのなら、勝ち目はあるんだよ!!)
「金多さん、白と黒、どっちが良い?」
「では、五個の石を落として、表になった数が多い方を選択しますわ。
白であれば先攻、黒であるなら後攻。
それでよろしいでしょう、宇津路さん」
「無問題だよ、金多さん。
じゃあ、はい、石」
「ありがとうございます。
では、いざ、えいっ」
「白が4枚だから、マリアが白で先攻でごわすね」
「もののついでだから、将棋の先手も、キララちゃんに譲るよ」
「ありがとでごわす」
「よし、準備も済んだから、早々にゲームを始めようか」
「お願いしますわ」
「お願いしますでごわす」
(このルールなら、絶対に宇津路さんに勝てますわ・・・そうすれば)
(今日こそ、ギンちゃんを負かす・・・そんで)
(宇津路さんに、ちょっとエッチな罰ゲームを受けさせる事が可能になりますわ)
(絶対に、ギンちゃんとエロい事をするんだから)
「よろしくお願いします」
(なんか、キララちゃんと金多さん、妙にギラギラしてるなぁ、目が。
こりゃ、慢心してると、思いがけないピンチを招いちゃいそうだな)
パンッ
「どうしたでごわすか、突然、自分の頬を引っ叩いて。
マリアに感化されちゃたでごわすか?」
「ちょっと、キララさん、私を変態扱いしないでくださいな。
むしろ、今、語尾がとんちきな事になってるキララさんの方が、変人丸出しですわよ」
「しょうがないでごわす、これが罰ゲームなんだから。
それで、どうして、自分の頬を叩いたでごわすか?」
「気合を入れておかないと、今の二人に負けちゃいそうだからね」
(くっ、まさか、こんなに早く油断しなくなるなんて・・・)
(さすがは宇津路さんですわ)
「知ってるとは思うけど、俺はね、結構、負けず嫌いなんだ。
二人にも譲れないモノがあるだろうけど、俺も俺で通したい意地がある。
だから、勝つよ」