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宇津路くん、アソびましょ  作者: 『黒狗』の優樹
罰ゲーム五個目
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罰ゲーム五個目⑭

 「油断してたなぁ」


 「いえ、あれは事前に解っていても、お漏らしを回避するのは難しかったと思いますわ」


 「・・・・・・確かに、そうかも」


 「まさかとは言いませんが、宇津路さんが、あのような絵を描くとは思ってもいませんでしたわ」


 「エロじゃなく、グロ方向で、Rー18だね、あの絵は」


 「凄惨、この一単語で表現できてしまうほどのインパクトとグロテスクでしたわ」


 「死屍累々の戦場で、全身血まみれの状態で無双する首無し騎士、だったね」


 「デュラハン、と言う名のモンスターですわね、首無し騎士は」


 「よくRPGに出てくる奴だね」


 「ただでさえ恐ろしいモンスターですが、スイッチの入った宇津路さんが描くと、あれほどまでの恐ろしさを、視た者に感じさせるのですね」


 「見る度に漏らしてたら、着替えをどんだけ用意しても足りないよ」


 「頭のテッペンから爪先まで血を被っているデュラハンが描かれている絵、と解っていても、少なくとも、五回は漏らしますわね」


 「夜、うっかり見ちゃったら、私、心臓が止まるね、絶対」


 「私も止まりますわ、間違いなく」


 「スイッチがオンになったギンちゃんが何を描くか、それが予想できないのは毎回の話だけど、今回は意表を突かれたね」


 「デュラハンを描きたくなる心境だったのでしょうか、宇津路さんは」


 「これまで、モンスターを描く事もあったけど、何故に、デュラハン?」


 「さぁ、それは、宇津路さんに聞かないと」


 「案外、ギンちゃんも、どうして、自分がデュラハンを描いたのか、説明できないかも、だけどね」


 「ありますわね、それは」


 「普通に考えれば、精神的に不安定とか、血に飢えている、みたいな判断をされちゃうんだろうけど、ギンちゃんだからね、絵の素人、ううん、プロにだって、解らないでしょ。

 本人だって、衝動のままに描いてて、描き終わってから、満足しつつも、どうして、これを描いたんだろって首を捻ってるんだから」


 「けれど、あの絵もまた、名作の仲間入りですわ」


 「ギンちゃんの雰囲気からして、かなり手応えを感じてたみたいだしね」


 「あれほどの名画を半日で描いてしまうなんて、本当にビックリですわ」


 「今回は、そんなに大きいキャンバスじゃなかったからねぇ」


 「多分、20号ですわ、あのキャンバスは」


 「まぁ、それでも、脅威的な筆の速さだけどね」


 「下書きくらいならまだしも、色付けまで完了してましたからね」


 「一気に描き上げたからこその圧かな、アレは」


 「血の匂いすら漂ってきそうでしたもの」


 「死が充満してる感じだったね。

 あんな絵を見て、むしろ、おしっこだけで済んだのは幸いだったかな」


 「さすがに、好きな人の前で脱糞してしまったら、私、生きていけませんわ」


 「恥ずかしければ恥ずかしいほど興奮してイッちゃうマリアでも、さすがに、ダメなんだ、ウンコを漏らすのは」


 「小水でも十分に恥ずかしいですが、大便と比べれば、まだ、羞恥心に耐えられる気がしますわ」


 「・・・・・・ギンちゃんの前で、おしっこが出ちゃった時、興奮した?」


 「正直、自分が漏らしている事に一切、気付きませんでしたわ。

 デュラハンに殺されたくない、それしか考えられませんでしたもの」


 「アタシも、そんな感じ。

 頭の片隅じゃ、これは絵、デュラハンは絵から出て来ない、ってアタシがアタシに叫んでいるんだけどさ、心が恐怖で塗り潰されちゃってて、体が全く動かなかった」


 「名画の定義を、見た者の心を一色の感情で塗り潰せるモノ、とするなら、宇津路さんの絵は確実に、それをクリアしてますわね」


 「ぶっちゃけ、あの絵は二度と見たくない」


 「けど、瞼の裏に焼き付いてますわ、ハッキリと」


 「アタシも」


 「今夜、私、寝れる気がしませんわ」


 「アタシは明日の朝、お布団に世界地図を描いてる自信があるよ」


 「同感ですわ」


 「ギンちゃんに、待った、って言われた時、止まらなかったアタシを殴りたいよ。

 マリア、ごめんね」


 「キララさんは悪くありませんわ」


 「サンキュ。

 ギンちゃんには悪いけど、あの絵は倉庫に持って行ってほしいなぁ」


 「確かに、あの絵が、この部屋の一室に保管されていると思うと、落ち着けなくなりますわね」


 「アタシ、あの絵から、デュラハンが出て来ても驚かないよ」


 「ちょっと、キララさん、恐ろしい事を言わないでくださいな」


 「ごめん、ごめん。

 けど、ギンちゃんの絵だよ。

 これまでだって、絵から出てきそうって思うほどリアルって言うか、存在感がビンビンだったじゃん。

 前に、マリアのパパが4000万円で買った、二羽の鷹が描かれてるアレも、鷹がキャンバスから飛び立ちそうな感じだったでしょ」


 「・・・・・・笑わずに聞いてくださいね」


 「え、何?いきなり、真面目な顔になって」


 「実は、お父様、あの絵を壁に飾らず、特注の大きな鳥籠に入れていますの」


 「マジ?」


 「マジもマジですわ。

 さすがに、私もお母様も呆れたのですが、朝、起きて、絵から鷹が消えていたら困る、と真剣に仰るので」


 

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