罰ゲーム五個目⑬
「ちょっ、キララさん、強すぎますわ」
「はい、取れたよ」
「一応、ありがとうございます、は言っておきますわ」
「どういたしまして」
「さぁ、洗い物をしてしまいましょう」
「そうだね」
「やっぱり、二人で片付けると早いですわね」
「アタシとしては、マリアがお皿を落として割らないか、ちょっと心配だったけどね」
「失礼ですわね。
これでも、お皿を割ってしまうのは三回に一回まで減りましたのよ。
私だって、しっかり成長しているんですの」
「成長しているなら、一回もお皿を割らないようになりなよ、マリア」
「ぐ、ぐぅの音も出ませんわ。
けど、仮に、私が今、キララさんが使っているお皿を割ってしまっても、ちゃんと弁償しましたわよ」
「マリアって言うか、金多家に弁償させたら、絶対、1枚1万円くらいのお皿を持ってくるじゃん」
「え、そんな安物は弁償の品になりませんわ」
「まさかの1万円以上!?
けど、天下御免の金多家なら納得は出来ちゃう」
「ふあぁ」
「何、マリア、眠いの?」
「お腹がいっぱいになったら眠くなるのは、人としての道理だと思いますわ」
「食べてすぐに寝たら、牛になっちゃうよ・・・ってか、マリアの場合、体の一部が、とっくに乳牛サイズだから、問題ないね」
「牛にはなりたくありませんわ」
「案外、牛になったら、ギンちゃんが至れり尽くせりで世話をしてくれるかもよ?
毎日、ブラッシングしてくれて、お乳も優しく搾ってくれるんじゃない」
「・・・・・・案外、牛になるのもありかもしれませんわよ、キララさん」
「いや、私は牛になりたくないから!!
可愛い人間のギャルのままで、ギンちゃんとイチャイチャしたいっての。
って、噂をすれば影だ」
「あら、宇津路さんから連絡が?」
「うん・・・・・・絵、描き終わったってさ」
「これでお部屋に入っても安全ですわね」
「だね」
「一体、どんな力作を描かれたのでしょう」
「この前は虎だったよね」
「あれは怖かったですわね」
「うん、部室で視た瞬間に食い殺されるかと思って、腰が抜けたもん」
「私も失神してしまいましたわ」
「翡翠が逃げるかと思ったら、絵の虎と戦おうとしたのはウケたなぁ」
「漏らしてしまった瑠美衣さんには同情しましたわ」
「いや、あれは漏らすって。
アタシとマリアは、ギンちゃんが資料集めをしているのを見てたから、虎か他の猛獣を描くんだろうなって予想があった上で見たから、あの程度で済んだだけだよ。
何の情報も無い状態だったら、アタシも確実に、おしっこが滝みたいに出てたね」
「それは、Gカップを張って自信満々に言うような事じゃありませんわね。
けど、言わんとしている事は解りますわ、私も」
「でも、ギンちゃんの描いた虎。
見た瞬間は、恐怖い、しかないんだけどさ、ほんの少しだけ慣れてから見ると、王者としての雄々しさも感じるんだよね」
「どこか、悲哀と言うか、強さゆえに他の者と慣れ合えぬ寂寥感も漂ってましたわね」
「何かさ、ギンちゃんが、虎になったら、あんな感じなのかなって思っちゃうんだよね」
「それはありえませんわ」
「いや、人は虎に変身したりしないよ」
「そういう意味ではありませんわ、キララさん」
「?」
「宇津路さんには、私たちがいるのですから、決して、孤独になどなりませんし、しませんわ」
「!! 確かに、そうだね。
ギンちゃんが、寂しさなんか感じる暇もないくらい、アタシたちは喧しいもんね」
「そこは、せめて、賑やかと言いましょうよ」
「よしっ、ギンちゃんも超集中タイムが終わったし、行こうか、マリア」
「練習の成果を、宇津路さんに見ていただく時が来ましたわ」
「ノーブラノーパン作戦で、ギンちゃんを悩殺しちゃおう」
「今日こそ、宇津路さんをドキドキさせてみせますわよ」
「やろう!!」
「やりましょう!!」
「ギンちゃん、おつかれ」
「宇津路さん、お疲れさまでした」
「ごめんね、二人とも部屋から追い出しちゃって」
「お気になさらないでください」
「そうだよ、ギンちゃん。
最高に良い絵を描くには、一人でなきゃダメなんでしょ?」
「俺は、だけどね。
頂を目指す他の人がいる空間でなきゃダメってタイプもいるし、皆でお喋りしながらの方が色のノリが良いって人もいるから」
「ギンちゃんはギンちゃんのスタイルを大事にすればいいんだよ」
「キララさんの仰る通りですわ。
実際、宇津路さんは、そのやり方で、大勢の人の心を虜とする名画を描いているのですから」
「その通り!!」
「俺の作品は、まだまだ、名画って讃えられるほどのモノじゃないけど、二人がそう言ってくれると、自信に繋がるよ。
ありがとう、キララちゃん、金多さん」
「こちらこそですわ」
「じゃ、早速、ギンちゃんの新たな名画を拝見しよう!!」
「え、ちょ、キララちゃん」
「あ、これ?」
「待って、キララちゃん」
「えいっ・・・・・・うわぁぁぁぁ」
「キャアアアアアア」
「う~、まさか、ホントに漏らしちゃうなんて」
「嘘から出た実になってしまいましたわね」