罰ゲーム一個目⑨
アタシは大急ぎ、大慌てで、体と頭を拭き、髪を乾かす。
この部屋では、中学生の時から使っていた、抹茶色のジャージに袖を通している。
だって、ジャージって楽じゃん。みんなも、そう思うでしょ?
けど、ギンちゃんの部屋で過ごすなら、ジャージは可愛くない。
ギャルらしく、でも、下品にはならない、それでいて、アタシの自慢のオッパイを強調できるシャツ、二番目に誇れる太腿をアピールできるスカートをチョイスする。
当然、ブラジャーと下着も、いつ、その時が来てもいいように、アタシはいつだって、「常住戦陣スタイル」だ。
今日は、大人っぽさとセクシーさを前面に押し出した黒。可愛い、と言うより、綺麗系のレースがあしらわれているデザインで、下着はお尻の方がスケスケになっている。
まぁ、ぶっちゃけ、未だに、実戦で、選びに選んでいるブラジャーと下着が活躍していないのも事実で、今日もチャンスはなさそう、って確信が出来るんだけどッッ
ギンちゃんは、全く悪くない。
だって、アタシが、勝手に、気合を入れているだけなんだから。
でもさ、ちょっと思っちゃうよね、見てよって。
そんなボヤきたくなっていたからか、少し、時間を使ってしまった。
ただ、時間は限られているけど、メイクはちゃんとするのだ。
幼馴染であるギンちゃんには、これまで、スッピンを見られてるけど、それはそれ。
ギンちゃんが、メッチャ、大好きだからこそ、なおかつ、アタシはギャルなんだから、いつだって、一番、可愛いアタシを見て欲しいし、見せたかった。
最低限、でも、アタシの信じてる「可愛い」を表現できるメイクをしたアタシは、自分の部屋を玄関のドアを蹴飛ばすような勢いで飛び出す。
でも、玄関のドアを閉めようとしたところで、アタシは忘れ物に気付く。
ギンちゃんに持ってくるように言われていた、今日、出された課題もそうなんだけど、さっき、回収した小包も大事だ。
これで、今日、アタシはギンちゃんに、いつもより激しくアタックするんだから、忘れたらマヌケすぎる。
課題と小包を小脇に抱えたアタシは施錠し、ギンちゃんの部屋のインターホンを押し、中から声がする前に入る。
「ただいま!!」
自分の部屋じゃないんだから、おじゃまします、じゃない、と思った人もいるだろうけど、アタシは平日、学校やアルバイトが終わってからの時間、休みの日は、ほとんど、ギンちゃんの部屋にいるんだから、もう、半分、アタシの部屋と言い切っても良くない。
なら、入る時の言葉は、「おじゃまします」じゃなくて、「ただいま」なの。それに、台所で野菜を切っていたギンちゃんが、アタシに、「おかえり」って言ってくれたんだから、やっぱり、「ただいま」で正解なんだよ。
「お腹空いた~、ギンちゃん」
早速、アタシは、ギンちゃんの背中に、おっぱいを押し付けるようにして、ギュッと抱き着いた。もちろん、ギンちゃんが、包丁を持っていないタイミングを見計らって、だよ。
さすがに、アタシだって、ギンちゃんが包丁を持っている時に抱き着いたら危ないって解っているし、ガチトーンの真顔で、もう怒られたくないもん。
でも、やっぱり、アタシがおっぱいを「むにゅっ」と押し付けても、ギンちゃんの様子は変化らず、「もうちょっと待っててね、キララちゃん」と宥めてくる始末だ。
ちぇっ、と内心で悔しくなりながら、アタシはギンちゃんの背中に、額をグリグリと押し付ける。
「なぁに、キララちゃん、くすぐったいんだけど」
「・・・・・・何でもないよーだ」
ギンちゃんも、もう、シャワーを浴びたみたいで、アタシの好きな体臭は薄れちゃってたけど、ギンちゃんの体からは、アタシが選んであげたボディーソープとシャンプーの匂いがしたから、アタシはちょっとだけ満足できた。
「じゃあ、ギンちゃん、テーブル、拭いとくね」
「うん、お願い、キララちゃん」
少ししてから、ギンちゃんがテーブルに持ってきてくれたオムライスは、卵が、天女様が羽衣に使いたいくらい、とってもフワフワ、トロトロだった。
中のドライカレーも、一粒一粒がパラパラで、しっかりと、カレーの旨味でコーティングされていた。辛さもアタシの好みにピッタンコ。
オムレツの甘味とドライカレーの辛さ、そんで、ギンちゃんお手製のトマトソースの酸味、それらが混ざり合った時の調和性は、最の高!!
もちろん、トマトソースで、アタシは、ギンちゃんにハートマークを描いて貰った。スプーンで崩す時、一瞬、いつも、躊躇しちゃうんだけど、描いて欲しくなっちゃう。
アタシは大満足でオムライスを完食すると、両手をパンッと合わせた。
「ごちそうさまでした!
ギンちゃん、今日も美味しかったよ!!」